キャリアデザインマガジン

日本キャリアデザイン学会 キャリアデザインマガジン第33号


カテゴリー: 2006年01月30日
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□    キャリアデザインマガジン 第33号 平成18年1月30日発行
     日本キャリアデザイン学会 http://www.cdi-j.jp/

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 「キャリアデザインマガジン」は、キャリアに関心のある人が楽しく読める
情報誌をめざして、日本キャリアデザイン学会がお送りするオフィシャル・
メールマガジンです。会員以外の方にもご購読いただけます。
 ※等幅フォントでごらんください。文中敬称略。

□ 目 次 □-----------------------------------------------------------

1 私のキャリア観 法政大学教授 諏訪康雄(1)
2 キャリア辞典「終身雇用」(4)
3 キャリアイベント情報

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【学会からのおしらせ】

◆日本キャリアデザイン学会は、以下のとおり勉強会を開催いたします。
 テーマ:「インターシップ活性化のための課題:大学、学生、企業、受け入
      れ担当者の4者への調査から」
 日時等:3月17日(金)18:30〜20:30 於 東京大学社会科学研究所
 講 師:堀有喜衣 労働政策研究・研修機構研究員
     堀田聰子 東京大学社会科学研究所助手
 コメンテーター:松岡猛 NECラーニング(株)、大学関係者(未定)
  ※参加申し込み等の詳細は、学会ホームページでお知らせいたします。
  http://www.cdi-j.jp/event.html

◆来年度の日本キャリアデザイン学会大会の日程が決まりました。
 開催日:平成18年10月28・29日(土・日)
 開催校:立命館大学衣笠キャンパス(京都市北区)
  ※テーマ、自由論題募集などの詳細は決まり次第学会ホームページなどで
   お知らせいたします。 http://www.cdi-j.jp/

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1 私のキャリア観

「法とキャリアデザイン(1)」(7回連載)
              法政大学大学院政策科学研究科教授 諏訪康雄

【第1回】「キャリア権」構想の誕生

−−−−−諏訪先生は、労働法の研究者として「キャリア権」という考え方を
提唱されています。日本キャリアデザイン学会にも深くかかわるものだと思い
ますが、まず、これを構想された背景からお聞きできればと思います。

諏訪 これは私個人の経験が半分、社会的な趨勢が半分というところでしょう
か。私自身のことから申し上げますと、私はもともと労働協約を中心に研究し
てきて、就職したときも労使関係法の講師で採用されたのです。ところが、80
年代に入ると世間の労使関係法への関心は急速に低下しました。大学の講義で
も、初年度は700人も聴講生がいたのに、どんどん減って最後は十数人になっ
てしまった。研究の世界でも、私より若い労働協約の研究者は今やほとんどい
ない状況で、いわば衰退産業に身をおいた悲しさを痛感しました。

−−−−−学生や研究者の関心がシフトしてきたわけですね。これは社会の関
心の動向を反映しているのでしょうか。集団的労使関係の重要性は変わらない
と思うのですが、労使関係が安定して、労働争議なども少なくなって、世間の
目に見えなくなってきたからなのでしょうか。

諏訪 学生はどうしても世の中の目が集まる方向に関心が向かいますからね。
労使関係法の最後の十数人も、半数は留学生で、日本人学生からは従来あった
関心が失われていました。

−−−−−なるほど、労使関係がまだ不安定な国の留学生なら、労使関係法に
関心があるわけですね。

諏訪 それでついに労使関係法の講義は廃止になってしまいました。今風にい
えばリストラされたわけです。その後はいろいろな科目を受け持たされること
になり、2000年にようやく「職業キャリア論」という講義をつくってもらって、
放浪生活が一段落しました。

−−−−−法学に限らず、労働経済学でも集団的労使関係をやる人はとても少
なくなっているという話も聞きます。

諏訪 研究者は、基本的に自分の知的好奇心から研究するのですが、やはり研
究を通じて社会に貢献したい気持ちもありますから、そうなると時代が要請す
る課題に興味が引かれます。私自身も80年代前半から、雇用をめぐる法政策に
研究テーマが移っていきました。

−−−−−その経験がキャリア権の構想に生きているわけですね。

諏訪 自分の経験を、雇用の現場で働く人たち全般に起きていたことに重ね合
わせたときに、いろいろ考えるところがありました。当時、オイルショックに
ともなう産業構造の変化があり、たとえばアルミ精錬なんかはあっという間に
国内からなくなってしまいました。そうなると、一生懸命アルミ精錬の仕事を
勉強し、能力を身につけてきた人も、その仕事を続けることは客観的には難し
くなる。市場経済では、外部環境が変わることで職業能力が市場価値を失って
しまうことが、頻繁に起こります。産業構造が転換するとき、職業構造も転換
する。職業構造が転換するとき、個人のキャリアも転換する。こうした問題を、
自分自身の体験として痛感したわけです。

−−−−−市場経済で、経済が発展していくためには避けられないことですね。
統制経済で計画的に産業構造をコントロールしようとした国はのきなみ失敗し
ました。

諏訪 そうです。市場経済の中で労働法とはいかなるものか、ということが大
切です。そういう意味からは、私は雇用政策にテーマを転換した当初は、パー
トタイマーなどの非典型雇用、その賃金格差などについて勉強していたのです
が、そのときに、こうした働き方の最大の問題はキャリアが形成しにくいこと
だと気付きました。長く働いても能力が伸びないと、キャリア展開は進まず、
賃金も上がらず、その結果格差が拡大します。能力を伸ばすにはその機会とそ
れが適切に評価され、処遇につながるしくみが必要でしょう。そういったこと
を勉強しながら、徐々に考え始めたのは、労働法というのはこうした労働市場
における取引関係をめぐって、これを適切に運用していくための枠組みと、そ
の運営基準を策定していこうとする領域なのではないだろうか、ということで
した。労使には労働市場において交渉力格差があるから、それを埋めていく、
あるいはそれが著しい不公正を生まないように配慮する、それが労働法の基本
的考え方なのではないだろうか。

−−−−−現行のわが国の労働法では、労組をつくり、団体交渉を行うことで
交渉力格差を縮小しようとしています。

諏訪 集団的労使関係は、19世紀から20世紀前半には諸外国でもかなりうまく
働きましたが、日本では近年、組織率が20%を切って、そうでもなくなってき
ました。ではどうするか、ということで、個人が持つキャリアの質を高めるこ
とによって、個人が交渉力を高めることが必要であり、能力開発、職業訓練が
基本になるのではないかと考えるようになりました。基本は市場経済の中で労
働者がいかに交渉力を高めるか、ということにあります。キャリアは労働者の
いわば資産であり、これが優良資産になれば交渉力が高まり、不良資産になれ
ば交渉力も低下する関係にあります。であれば、労働法は、個人のキャリアが
優良資産となるように支援することも重要な役割ではないかと考えたわけです。

−−−−−キャリアを労働者の財産と考えるわけですね。

諏訪 まさにそういうことです。法律論というものは権利義務関係でものごと
を考えますから、ではキャリアをめぐる権利義務とはなにか、ということから
出てきたのが「キャリア権」なのです。たしか1996年からだったと思いますが、
キャリアを中心に考えると労働法の発想は従来のものからどう変わるか、とい
うことを学会などで報告しはじめました。96年、98年、2000年と続けて、
Right to Careerという概念を用いた報告を国際学会で発表し、キャリア権の
構想が固まってきたのです。こうした概念や発想法は海外にもまだなかったよ
うで、おそらく私が世界で初めて提唱したのではないかと思っています。
                  (聞き手・文責:編集委員 荻野勝彦)

 諏訪 康雄(すわ やすお)
 法政大学大学院政策科学研究科教授。労働法専攻。主な著書に『雇用と法』
(1999、放送大学教育振興会)、『判例で学ぶ雇用関係の法理』(1994、産業
労働研究所、共著)など。


2 キャリア辞典
  〜「キャリア」に関する用語をめぐるコラムです〜

「終身雇用」(4)

 一時ほどではないかもしれないが、「終身雇用」(長期雇用)は崩壊した、
あるいはいずれ崩壊する、という主張がまだまだみられるようだ。
 もっとも実際には、そのかなりの部分は「崩壊すべきだ」あるいは「崩壊し
てほしい」から「崩壊するだろう」という願望に近いものに思われる。代表的
なのは「労働力の流動化」をビジネスチャンスにしようという人材ビジネス業
者などだろうが、最近では長期雇用の正社員と、有期雇用が多い非正社員との
賃金格差に義憤を感じる人にもこうした主張がみられるようだ(かつては、こ
れに加えて「経営責任を問われずに人員整理したい」と考える一部の経営者た
ちにも同様の願望があったようだが)。
 現実をみると、業界や職種による温度差が大きいようだ。たとえば「金融経
済の専門家」、証券ディーラーやアナリストといった職種では、どの企業で働
こうがしょせん相手にするのは同じマーケットなのだから、仕事の内容にそう
大きな違いがあるわけでもなく、したがって転職も容易であり、長期勤続しな
い人のほうが多いようで(業界人のなかには十数回転職した経験を自慢にして
いて、本まで書いた人もいるらしい)、長期雇用が慣行になっているとは言い
にくいように思われる。同じように、勤務先が変わっても仕事の中身があまり
変わらない職種・業種、たとえば医療関係や研究職などには長期雇用慣行があ
るとは考えにくい。
 逆にいえば、同じ職種・業種であっても企業によって仕事の中身がおおいに
異なる場合には、長期雇用慣行が強固なものとなる傾向があるのではないか。
各企業に独特のノウハウ、技術があり、それが属人的であると同時に組織的に
蓄積されていて(一人だけが他社に移ってもその技術やノウハウが生かしにく
い)、それが企業の競争力に直結しているような場合だ。これは日本企業に一
般的にみられる特徴(欧米では日本ほど一般的ではないが、まったく特殊とい
うわけでもないというところか)だろうが、このような技術やノウハウの修得
にはかなりの長期勤続を要することが多く、それをもとにクリエイティヴで新
しい技術やノウハウを作り出すとなると、かなりの経験を要することになる。
典型的には製造業における熟練工ということになるだろうが、小売業やサービ
ス業、あるいはホワイトカラー職種においてもこれに該当する範囲はかなり広
いのではないか。
 これに対しては、技術の進歩のスピードが速くなり、技術やノウハウの陳腐
化が進みやすいから、長期をかけた熟練形成は成立しにくくなったとの反論が
ある。しかし、これはかなり皮相な議論だろう。こういう議論をする人の多く
は、熟練に対して伝統工芸の職人技のようなイメージを持っているようだが、
産業界における熟練はこれとおおいに異なるものだからだ。
 もちろん、産業界においても、たとえばプロ野球選手のグラブやバットを作
る技能工のように、伝統工芸的な熟練工も存在する。しかし、産業界の熟練工
の大勢、黄綬褒章を受けたり「現代の名工」に選ばれる人の多くはそうではな
い。そうした人たちのキャリアをみてみると、会社に入った当時はほとんどの
仕事が手作業で行われていたが、やがて自動機が導入され、ME機器、FAが
導入され、いまでは数値制御の汎用ロボットが並ぶ現場の監督者として活躍し
ている、というケースが多く見られる。こうした技術進歩に一つずつ対応して
いく中で、問題発見や問題解決、さらには人材育成や人事管理の高度なノウハ
ウを蓄積した人たちが、現場で尊敬を集める熟練工なのであり、部長や工場長
といった地位にのぼった人も珍しくない。こうした人材を育てるには、長期勤
続と内部昇進によることが有利であることは言うまでもない。つまり、長期雇
用慣行の最大の利点は効率的に高度な人材を育成できることなのであって、企
業に対する忠誠心などといったものは派生的なものにすぎないのだろう。見方
をかえれば、これは未熟練の若者にも経営幹部への道がひらかれるしくみでも
ある(もちろん本当にそうなるのは限られた一部であって、全員がそうなれる
というわけではないが)。
 これはもちろん、エンジニアや管理部門にもそれなりにあてはまるものであ
ろう。ある程度技術やノウハウが向上してくれば、当然ながら企業業績に対す
るコミットも強まってくる。企業がその技術やノウハウを企業の競争力につな
がげようという人材戦略をとっている以上は当然のことだろう。そう考えると、
長期雇用で企業業績にコミットする働き方、いわゆる「正社員」的な働き方は、
企業の人材戦略が変わらないかぎり(そしてそれはそう簡単に変わるものでは
ないだろう)、なくなるとは思えないし、長期雇用慣行も容易には崩壊しない
のではないだろうか。
                         (編集委員 荻野勝彦)


3 キャリアイベント情報
  〜キャリアデザインに関係するイベントの開催予定などをご紹介します〜

◆厚生労働省「企業経営とポジティブ・アクションを考えるシンポジウム」
 平成18年2月22日(水)13:00〜15:00
 於 女性と仕事の未来館ホール(東京都港区)
 http://www.mhlw.go.jp/topics/2006/01/tp0123-1.html

◆生涯職業能力開発促進センター アビリティガーデン講演会
 「元気な中小企業になろう!」
 平成18年2月27日(月)14:30〜17:00
 於 アビリティガーデン(東京都墨田区)
   ※他に衛星通信システムを利用して全国120カ所以上の雇用・能力開発
    機構の施設で参加可能です。
 (講師)橋本久義 政策研究大学院大学教授
     中村裕樹 Jリーグキャリアサポートセンター カウンセラー 
 http://www.ab-garden.ehdo.go.jp/exchange/index.shtml#forum


[編集後記]
 今号から、法政大学の諏訪康雄教授のインタビューを7回連載でお送りしま
す。諏訪教授はキャリアを労働者の財産と考える「キャリア権」構想を提唱し
ておられ、キャリアデザインに関心を持つ方には見逃せないものと思います。
難解になりがちな法理論の話題も比較的わかりやすくお話しいただきました。
内容豊富で7回という長期連載になりますが、ぜひお楽しみください。(O)


【日本キャリアデザイン学会とは】

・キャリアを設計・再設計し続ける人々の育成を考える非営利組織です。
・キャリアに関わる実務家や市民と研究者との出会い・相互啓発の場です。
・多様な学問の交流からキャリアデザイン学の構築を目指す求心の場です。
・キャリアデザインとその支援の理論と実践の連携の場です。
・誤謬、偏見を排除し、健全な標準を確立する誠実な知的営為の場です。 
・キャリアデザインに関わる資格、知識、技法、専門の標準化の努力の場です。
・人々のキャリアの現実に関わり、変えようとする運動の場です。

 学会の詳細、活動状況はホームページに随時掲載しております。
 ◆日本キャリアデザイン学会ホームページ◆
   http://www.cdi-j.jp/

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◆働く若者ネット相談事業 ご利用のお勧め
 厚生労働省委託事業・日本キャリア開発協会受託・キャリア協議会協力
 webサイトを利用していつでもどこでもネットで相談できる仕組みです。
 また対面カウンセリングや電話カウンセリング、TVカウンセリングも行っ
 ています。詳しくはhttp://net.j-cda.org/まで。     (厚生労働省)

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  日本キャリアデザイン学会(CDI-Japan)発行
  オフィシャル・メールマガジン【キャリアデザインマガジン】
  
  このメールマガジンは『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ を利用して発
行しています。
 配信中止はこちら http://www.mag2.com/m/0000140735.htm
  無断転用はお断りいたします。

 編集委員:荻野勝彦(トヨタ自動車株式会社人事部企画室担当部長)
      児美川孝一郎(法政大学キャリアデザイン学部助教授)

   日本キャリアデザイン学会事務局連絡先
    e-mail cdgakkai@hosei.org
   〒102-8160 東京都千代田区富士見2-17-1

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