キャリアデザインマガジン

日本キャリアデザイン学会 キャリアデザインマガジン第32号


カテゴリー: 2006年01月16日
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□    キャリアデザインマガジン 第32号 平成17年1月16日発行
     日本キャリアデザイン学会 http://www.cdi-j.jp/

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 「キャリアデザインマガジン」は、キャリアに関心のある人が楽しく読める
情報誌をめざして、日本キャリアデザイン学会がお送りするオフィシャル・
メールマガジンです。会員以外の方にもご購読いただけます。
 ※等幅フォントでごらんください。文中敬称略。

□ 目 次 □-----------------------------------------------------------

1 キャリア辞典「終身雇用」(3)
2 私が読んだキャリアの1冊
3 キャリアイベント情報

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【学会からのおしらせ】

◆日本キャリアデザイン学会は、以下のとおり勉強会を開催いたします。
 テーマ:「大学改革とキャリア教育−カリキュラムの視点から−」
 日 時:1月27日(金)18:30〜20:30
 場 所:成蹊大学 大学3号館 101教室
     http://www.seikeiac.jp/gakuen/access.html
 講 師:北川浩 成蹊大学経済学部教授
 コメンテーター:宇佐見義尚 亜細亜大学経済学部助教授
 定 員:100人 *定員になり次第受付終了します。
 参加費:会員は無料、非会員は3,000円

 ※応募多数により、定員を拡大いたしました。申し込みは以下のアドレスか
  らお願いいたします。
  https://www.hosei.org/event/detail/20060127.htm

◆今後の勉強会の予定は次のとおりです。
 テーマ:「インターシップ活性化のための課題:大学、学生、企業、受け入
      れ担当者の4者への調査から」
 日時等:3月17日(金)18:30〜20:30 於 東京大学社会科学研究所
 講 師:堀有喜衣 労働政策研究・研修機構研究員
     堀田聰子 東京大学社会科学研究所助手
 コメンテーター:松岡猛 NECラーニング(株)、大学関係者(未定)
  ※参加申し込み等の詳細は、学会ホームページでお知らせいたします。
  http://www.cdi-j.jp/event.html

◆来年度の日本キャリアデザイン学会大会の日程が決まりました。
 開催日:平成18年10月28・29日(土・日)
 開催校:立命館大学衣笠キャンパス(京都市北区)
  ※テーマ、自由論題募集などの詳細は決まり次第学会ホームページなどで
   お知らせいたします。 http://www.cdi-j.jp/

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1 キャリア辞典
  〜「キャリア」に関する用語をめぐるコラムです〜

「終身雇用」(3)

 「終身雇用」(長期雇用)は日本に特徴的な慣行だといわれるが、本当にそ
うなのだろうか。
 労働政策研究・研修機構が出している『データブック国際労働比較2005』
(非常に便利なハンドブックである)に、主要国の勤続年数のデータが掲載さ
れている。1995年とすこし古く、製造業のみではあるが、それによると日本の
平均勤続年数は男性が12.9年、女性が7.9年となっている。米国は7.9年、イギ
リスは8.9年で、ドイツ、フランスなどの大陸ヨーロッパ諸国は概ね10〜11年
程度(すべて男性)だから、たしかに日本の勤続年数は長い。年齢階級別にみ
ても、米、英、独、仏と比較して、54歳まではどの階級でも男性は日本が最も
長くなっているが、60代前半は一転して日本が最も短くなっている。これは明
らかに定年制の影響と思われ、「定年までは他社への転籍もふくめて雇用を確
保する」という日本の長期雇用の特徴がよく現れているといえよう。
 いっぽう、女性に関しては日本は平均では諸外国で、年齢階層別にみると、
40代なかばくらいまでは諸外国より長いが、それ以降は諸外国より短いという
傾向にある。これはわが国の女性の就労構造の特徴とされる「M字カーブ」、
結婚・出産前の女性の転職は比較的少なく、それを機にいったん退職し、その
後再就労することが多いという実態を反映したものなのだろう。
 意識面でも、2004年の内閣府「第7回世界青年意識調査」の結果をみると、
18歳から24歳の青少年の転職についての考え方は、「一生一つの職場で働き続
けるべき」は日本が10.3%と米国の2.5%、ドイツの2.1%を大きく上回ってい
る。日本でいちばん多いのは「転職することもやむを得ない」で53.0%だが、
アメリカとドイツでは「不満があれば転職する方がよい」が最多で、それぞれ
56.2%、49.2%となっている。日本では、若者の意識にも長期雇用が反映され
ているのだろう。
 もちろん、解雇と転職が日常茶飯事のように起こっているというイメージが
持たれがちな米国においても、現実には相当割合の人が長期雇用、内部昇進で
働いているということは、小池和男氏などが指摘しているところだし、米国に
も米国企業も長期雇用のメリットを生かすべきだと主張する経営学者がいる。
労働経済学者の八代尚宏氏は、日本と米欧の雇用慣行の違いは質的な違いより
量的な違いであるという趣旨の指摘をしている。つまり、そうした働き方をす
る人の比率が高い、そうした人事管理を行う企業の比率が高いという意味にお
いて、長期雇用は「日本的な」慣行であるということなのだろう。
 なぜ日本で長期雇用が慣行として定着したのかについては諸説あるようだ。
思いつくままにあげてみても、「労使の利害を一致させて労使関係の安定させ
るため」とか、「経済成長と人手不足が続いて従業員の定着をはかる必要性が
高かったから」とか、「私生活ぐるみで企業組織に取り込むことで高い忠誠心
を求めた」とか、いろいろある。もっとも有力なのは、おそらく「企業が必要
とする能力を、効率的に育成・確保できる」ことではないかと思うが、現実に
はこれらさまざまな要因が複合的に働いたのだろうし、時期によっても事情は
異なっていただろう。いずれにしても、90年代以降の長期にわたる業績不振の
中でも、正社員比率は約8割から7割に低下するにとどまっていることをみて
も、長期雇用のメリットを競争力に生かすことは、日本企業の経営戦略にかな
り深く定着しているように思われる。
                         (編集委員 荻野勝彦)


2 私が読んだキャリアの1冊

『実行力不全−なぜ知識を行動に活かせないのか』
           ジェフリー・フェファー、ロバート・I・サットン著
    長谷川喜一郎監訳、菅田絢子訳 2005.12.13 ランダムハウス講談社

 キャリアデザインは依然としてブームらしい。あるいは、日本社会に定着し
たのかもしれない。いずれにしても、ためしにGoogleで「キャリアデザインセ
ミナー」を検索してみると、実に1万件以上引っ掛かってくる。その内容をみ
ると、アビリティガーデンがやっているたいへん立派なものもあるが、転職成
功者の自慢話を聞かせるだけのようなものも多いように見受けられる。
 もちろん、転職に成功するのはご同慶だし、転職で「キャリアアップ」をめ
ざすことも結構だろう。しかし、転職には少なからずリスクがともなう。高い
能力や強い意志を持つ「優秀な」人であればともかく、そうでない「普通の」
人たちにとって、転職のリスクはかなり大きい。
 そこでこの本だが、この本は経営書であって、企業経営の成功事例と失敗事
例の分析を扱う。それによると、成功と失敗を分けるものは「知識」ではなく
「行動」であるという。知識は成功した企業にも失敗した企業にもある。知識
はビジネス・スクールで学べるし、おカネがあれば、コンサルタントにカスタ
ム・メイドさせることもできる。失敗した企業にないのは「行動」である。
 なぜ行動できないのか。この本は、知識を持つ人はたくさんいるが、行動か
らしか得られない本当の知識を持つ人は少ないという。優れた企業では平凡な
人たちがすばらしい成果を上げている。これは、彼らが行動を通じて本当の知
識を体得しているからだ。それに対して、優秀な社員をたくさん雇いながら、
成果の上がらない企業もある。それは、優秀な社員たちは知識をたくさん持っ
ているが、行動から得た本当の知識は持っていないからなのだ。
 それでは、社員を行動に向かわせるためにはどうすればいいのか。ここで語
られるのは、現場主義であり、失敗を許し恐怖感を与えない組織であり、社内
での競争よりライバル会社との競争に目を向けさせることであり、結果でなく
プロセスを評価することである。そして、長期的な経営ビジョンであり、情報
共有であり、OJTであり、チームワークと人間尊重である。短期的な業績や
株価の向上を求める投資家たちは、行動を促すことの阻害要因とされる。
 キャリアデザインとの関係でおおいに注目されるのは、現実に行動する社員
の行動に着目し、彼らが行動しやすくするような環境を整えるリーダーシップ
を強調していることだ。成功をもたらすのは企画部門ではなく現場で働く平凡
な多数の人たちであり、彼らに前向きに行動し、知恵を出させるような動機づ
けを行うというのは、まさに日本企業が営々と行ってきた、長期雇用と内部昇
進を軸とした人材開発、社内キャリア形成にきわめて近いものではないのか。
それによって、「普通の」人たちが活躍し、充実した職業生活を送ることがで
きるということだろう。もちろん、いかに社内キャリア施策が充実した企業で
働くとしても、人により成否は分かれるだろうが、「普通の」人にとって有力
なキャリアデザインの選択肢ではないだろうか。
 この本は原著が1999年に米国で出版され、翌年には邦訳も出た。おそらくは
売れなかったのだろう、いつのまにか入手困難となった。しかし、米国ではロ
ングセラーとなり(米amazonのサイトには多数の書評−ほとんどは好意的な−
が寄せられているから、事実売れているのだろう)、昨年末にあらためて邦訳
も(訳題も出版社もかわったが)再刊された。これが地に足のついた、地道な
キャリアデザインが見直されていることの反映であるとしたら喜ばしいことだ。
                         (編集委員 荻野勝彦)
 ※「私が読んだキャリアの一冊」は、執筆者による図書の紹介です。
  日本キャリアデザイン学会として当該図書を推薦するものではありません。


3 キャリアイベント情報
  〜キャリアデザインに関係するイベントの開催予定などをご紹介します〜

◆女性労働協会 未来館フェスタ2006カウンセラーズ・フォーラム
 「女性のキャリア開発とアサーティブネス」
 平成18年1月27日(金)13:30〜16:45
 於 女性と仕事の未来館4Fホール(東京都港区)
 http://www.miraikan.go.jp/topix_index/index0210.html

◆労働政策研究・研修機構 労働政策フォーラム 
 「副業はこれから拡大するか?−企業と働く人にとっての意味−」
 平成18年1月31日(火) 14:00〜17:00
 於 女性と仕事の未来館ホール(東京都港区)
 http://www.jil.go.jp/event/ro_forum/info/20060131.htm


[編集後記]

 今回の「私が読んだキャリアの一冊」の本ですが、訳書が最初に出たときの
邦題は『変われる会社、変われない会社−知識と行動が矛盾する経営』という
ものでした。今回の邦題は紹介のとおり『実行力不全−なぜ知識を行動に活か
せないのか』で、ちょっとみて同じ本とは思えませんが、この本の原題は"The
Knowing-Doing Gap: How Smart Companies Turn Knowledge into Action"とい
うもの。なるほど、原題の意図と雰囲気を取り込みつつ、いかに日本語で目を
引く訳題とするかの苦心のあとがうかがえます。しかし、原題が"How Smart 
Companies…"とポジティブな表現になっているのに対し、邦題はいずれも「矛
盾する経営」「実行力不全…活かせないのか」とネガティブな表現になってい
るのは、本の内容から考えるとちょっと残念な感じがします。まあ、目を引く
ためには致し方ないのでしょうが。
 なお、次号より、「私のキャリア観」で諏訪康雄法政大教授のインタビュー
「法とキャリアデザイン」の連載を開始する予定です。お楽しみに。(O)


【日本キャリアデザイン学会とは】

・キャリアを設計・再設計し続ける人々の育成を考える非営利組織です。
・キャリアに関わる実務家や市民と研究者との出会い・相互啓発の場です。
・多様な学問の交流からキャリアデザイン学の構築を目指す求心の場です。
・キャリアデザインとその支援の理論と実践の連携の場です。
・誤謬、偏見を排除し、健全な標準を確立する誠実な知的営為の場です。 
・キャリアデザインに関わる資格、知識、技法、専門の標準化の努力の場です。
・人々のキャリアの現実に関わり、変えようとする運動の場です。

 学会の詳細、活動状況はホームページに随時掲載しております。
 ◆日本キャリアデザイン学会ホームページ◆
   http://www.cdi-j.jp/

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◆働く若者ネット相談事業 ご利用のお勧め
 厚生労働省委託事業・日本キャリア開発協会受託・キャリア協議会協力
 webサイトを利用していつでもどこでもネットで相談できる仕組みです。
 また対面カウンセリングや電話カウンセリング、TVカウンセリングも行っ
 ています。詳しくはhttp://net.j-cda.org/まで。     (厚生労働省)

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  日本キャリアデザイン学会(CDI-Japan)発行
  オフィシャル・メールマガジン【キャリアデザインマガジン】
  
  このメールマガジンは『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ を利用して発
行しています。
 配信中止はこちら http://www.mag2.com/m/0000140735.htm
  無断転用はお断りいたします。

 編集委員:荻野勝彦(トヨタ自動車株式会社人事部企画室担当部長)
      児美川孝一郎(法政大学キャリアデザイン学部助教授)

   日本キャリアデザイン学会事務局連絡先
    e-mail cdgakkai@hosei.org
   〒102-8160 東京都千代田区富士見2-17-1

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