キャリアデザインマガジン

日本キャリアデザイン学会 キャリアデザインマガジン第24号


カテゴリー: 2005年09月12日
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□    キャリアデザインマガジン 第24号 平成17年9月12日発行
     日本キャリアデザイン学会 http://www.cdi-j.jp/

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 「キャリアデザインマガジン」は、キャリアに関心のある人が楽しく読める
情報誌をめざして、日本キャリアデザイン学会がお送りするオフィシャル・
メールマガジンです。会員以外の方にもご購読いただけます。
 ※等幅フォントでごらんください。文中敬称略。

□ 目 次 □-----------------------------------------------------------

1 キャリア辞典 「エンプロイアビリティ」(2)
2 私が読んだキャリアの一冊 大竹文雄「日本の不平等」
3 キャリアイベント情報

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【学会からのおしらせ】

◆日本キャリアデザイン学会大会を以下のとおり開催いたします。
 日 時:10月1日(土)・2日(日)…前日(9/30)に特別行事を開催
 場 所:お茶の水女子大学(東京都文京区大塚2)
  ※内容の詳細、申込方法などは学会ホームページをごらんください。
   http://www.cdi-j.jp/events/event-20051001.html
  ※なお、特別行事(企業見学)の定員に若干のあきがあるため、非会員に
   も参加を呼びかけております。(参加費無料)
    9月30日 13:10 川崎駅発21番乗り場集合
        14:00 花王(株)川崎工場見学会 会社概要説明、工場見学     
 花王(株)のキャリア支援について(15分程度のミニレクチャー&質疑)
   40名定員ですので、事前にkikuchi@yokohama-cu.ac.jp まで、会員・
   会員の別、会員番号(会員のみ)、名前、所属、当日の連絡先の電話番
   号などを記入し申し込んでください(定員に達ししだい締め切ります)。

◆今後の研究会の予定は以下のとおりです。
 (関東地区)
 日 時:11月5日(土)午後
 講 師:松下電工株式会社ライフデザインセンター所長 村田充範
     法政大学キャリアセンター教授 川喜多喬
 場 所:未定(東京都心予定)
 (関西地区)
 日 時:12月10日(土)17:30〜19:30
 講 師:大阪大学経済学研究所教授 大竹文雄
 場 所:未定(梅田周辺予定)
  ※詳細は、追って学会ホームページでお知らせいたします。
   http://www.cdi-j.jp/event.html
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1.キャリア辞典
  〜「キャリア」に関する用語をめぐるコラムです〜

「エンプロイアビリティ」(2)

 エンプロイアビリティ(1)の内容に関して、「employabilityという語自
体は古くから使われており、80年代に出現したわけではない」というご指摘を
いただいた。たしかにそうらしい。もっとも、80年代の米国における経営合理
化の中で目立って使われるようになった、ということもいえるようだ。
 さて、日本でこのことばが定着しなかった理由としては、エンプロイアビリ
ティ(1)で書いたように、これが経営合理化とセットになっていたからだと
いうことに加えて、労働市場や人事管理のあり方が米国とかなり異なるわが国
では、米国の概念がそのままあてはまりにくかったのではないか、という想像
は容易につく。
 実際、経済界はエンプロイアビリティを日本の実情にあった概念として再構
築することを試みている。日経連(当時、現日本経団連)が1999年に発表した
『エンプロイヤビリティの確立をめざして〜従業員自律・企業支援型の人材育
成を〜』という報告書では、エンプロイアビリティをもっぱら「転職しうる能
力」とする米国型のものとしてではなく、「当該企業の中で発揮され、継続的
に雇用されることを可能にする能力」を加えた広い概念でとらえている。同年
8月に開催された「日経連人材育成フォーラム」では、奥田碩日経連会長(当
時)はこれを「日本型エンプロイヤビリティ」と呼び、「いつ解雇したり、さ
れたりするかわからないから、労使双方の自衛のために必要である、といった
アメリカのエンプロイヤビリティの概念とは、明確に一線を画するもの」と述
べた。ちなみに報告書の副題のほう、「従業員自律・企業支援型の人材育成」
についても、能力開発に従業員の主体性を求めるという考え方は当時としては
それなりに目新しかったが、具体的な内容は、OJTを中心とした企業での人
材育成と、自己啓発(一部企業の支援をともなうことがある)を組み合わせ、
キャリア・ステージの初期にはOJTなどに重点があるが、進むにつれて自己
啓発などに重点が移っていくという、やはり日本企業の実態を大いに考慮した
(そして大いにもっともな)ものとなっている。長期化する経済不振の中でも、
経済界が長期雇用のもとでの人材育成を重視していたことがみてとれる。
 いっぽう、行政の姿勢はといえば、厚生労働省が2000年に発表した「エンプ
ロイアビリティの判断基準等に関する調査研究報告書」のほうでは、エンプロ
イアビリティを「労働市場価値を含んだ就業能力」と、米国型の狭義のものと
している。続けて「即ち、労働市場における能力評価、能力開発目標の基準と
なる実践的な就業能力と捉えることができる」と書いているように、能力評価
制度を作ろうという研究会だから、それも当然だろう。実際、この研究会の委
員をみると、10人中4人までを人材ビジネス業者と関係者が占めている。「今
後、企業・業界などの垣根を超えて流動化する労働市場において、各労働者が
適切な処遇を得るなど、円滑な再就職を図るために」エンプロイアビリティを
測定することが必要だ、長期雇用・内部人材育成重視の人事管理への顧慮はほ
とんどみられない。
 ここまで経済界と行政の考え方がすれ違っていては、議論が深まらないのも
致し方のないところだっただろう。常識的に考えて「日本型エンプロイヤビリ
ティ」の「当該企業の中で発揮され、継続的に雇用されることを可能にする能
力」の部分については、「市場における能力評価、能力開発目標の基準」はな
かなか作りにくいだろうし、業種・業態によって実情はさまざまだろうが、そ
れがかなりの部分を占めているだろう。やりたいことが全く違うのだから、議
論がかみあうわけもない。
 こうした混乱も、「エンプロイアビリティ」ということばが普及しなかった
理由になったのではなかろうか。
                        (編集委員 荻野勝彦)


2.私が読んだキャリアの一冊
  〜キャリアに関する本のご紹介です〜

 大竹文雄著「日本の不平等」 日本経済新聞社、2005

 数年前から声高に言われはじめた「日本の所得格差は拡大している」との主
張を、ていねいな実証分析で検証した本。格差が拡大しているように見えるの
は、高齢化によって比較的格差の小さい若年層の比率が低下し、格差の大きい
高齢層の比率が上昇したことによる見かけ上の効果が大きいことなどを指摘し
ている。
 内容豊富な本だが、キャリアデザインという観点からも興味深い論点を指摘
している。たとえば、本書の第1章ではアメリカとイタリアの賃金格差をする
と一時点での賃金格差はアメリカのほうがはるかに大きいが、生涯賃金での格
差はほぼ同じという調査結果が紹介される。これはアメリカでは失業のリスク
も高いが高賃金の仕事を得るチャンスも大きいのに対し、イタリアでは雇用は
安定しているが有利な職に移るチャンスが乏しいという社会的な相違によるも
のであるという。キャリアデザインを考えるにあたって、こうした社会のあり
方は重要な要素だろう。
 逆に、キャリアデザインの観点からどのような社会が望ましいかという議論
も必要だろう。本書の第8章では新卒就職のいわゆる「世代効果」が検証され、
わが国の労働市場では好況期に新卒就職した世代の生涯賃金が不況期に新卒就
職した世代のそれを上回ることが示されている。キャリアデザインという観点
からみればこうした格差は小さいことが望ましいだろうが、格差を縮小するこ
とで社会全体としての所得水準が低下する可能性も考慮に入れる必要があろう。
 このほかにも、わが国においてITの使用が賃金に与える影響(いわゆるデ
ジタル・デバイドの一種であろう)を検証したり、成果主義的賃金と労働意欲
の関係を検証するなど、キャリアデザインを考える上においても示唆に富む内
容が多い。分析の質の高さについても多くの識者が高い評価を与えており、研
究書ではあるが広くおすすめできる本だと思う。
                        (編集委員 荻野勝彦)
 ※「私が読んだキャリアの一冊」は、執筆者による図書の紹介です。
  日本キャリアデザイン学会として当該図書を推薦するものではありません。


3 キャリアイベント情報
  〜キャリアデザインに関係するイベントの開催予定などをご紹介します〜

◆東京大学・教育研究創発機構人文社会プロジェクト「日本の教育システム―
 教育の失敗」公開シンポジウム「ニート−何が問題なのか」
 平成17年10月1日(土)13:00〜17:00
 於 東京大学赤門総合研究棟200番教室(東京都文京区)
 http://www.p.u-tokyo.ac.jp/kikou//20051001%20poster1.pdf

◆東京都男女雇用平等セミナー「女性の人材育成と両立支援」
 平成17年10月4日(火)、10月7日(金)各18:00〜21:15
 於 中央区役所8階大会議室(東京都中央区)
 http://www.hataraku.metro.tokyo.jp/ibento/kyoiku/seminar/iidabashi/fukyu/cen
ter_f23.html

◆大阪大学行動経済学国際コンファレンス
 平成17年10月10日(月)10:30〜17:15
 於 大阪大学コンベンションセンター(大阪府茨木市)
 http://www.iser.osaka-u.ac.jp/rcbe/coeconference/index.html


[編集後記]
 エンプロイ「ア」ビリティなのかエンプロイ「ヤ」ビリティなのか?という
のが実は大問題だったりします(本当か?)。日経連の報告書は「ヤ」、厚生
労働省の報告書は「ア」と、内容だけでなくここでも喰い違っているのです。
「キャリア辞典」ではベースは「ア」を使い、文献の引用などでは原典にした
がって「ヤ」も使用しました。ベースを「ア」にしたのはなにもお役所にした
がったというわけではなく、googleで検索してみるとヒット数は「ア」のほう
が「ヤ」の10倍くらい多かったからなのですが、「ア」のほうが多いのはお役
所にしたがったのか、それとも「エンプロイ」+「アビリティ」ということば
の成り立ちがわかりやすいからなのか・・・英語での発音は「ヤ」のほうが近
いのではないかと思うのですが。(O)


【日本キャリアデザイン学会とは】

・キャリアを設計・再設計し続ける人々の育成を考える非営利組織です。
・キャリアに関わる実務家や市民と研究者との出会い・相互啓発の場です。
・多様な学問の交流からキャリアデザイン学の構築を目指す求心の場です。
・キャリアデザインとその支援の理論と実践の連携の場です。
・誤謬、偏見を排除し、健全な標準を確立する誠実な知的営為の場です。 
・キャリアデザインに関わる資格、知識、技法、専門の標準化の努力の場です。
・人々のキャリアの現実に関わり、変えようとする運動の場です。

 学会の詳細、活動状況はホームページに随時掲載しております。
 ◆日本キャリアデザイン学会ホームページ◆
   http://www.cdi-j.jp/

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  日本キャリアデザイン学会(CDI-Japan)発行
  オフィシャル・メールマガジン【キャリアデザインマガジン】
  
  このメールマガジンは『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ を利用して発
行しています。
 配信中止はこちら http://www.mag2.com/m/0000140735.htm
  無断転用はお断りいたします。

 編集委員:荻野勝彦(トヨタ自動車株式会社人事部企画室担当部長)
      児美川孝一郎(法政大学キャリアデザイン学部助教授)

   日本キャリアデザイン学会事務局連絡先
    e-mail cdgakkai@hosei.org
   〒102-8160 東京都千代田区富士見2-17-1

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