キャリアデザインマガジン

日本キャリアデザイン学会 キャリアデザインマガジン第15号


カテゴリー: 2005年04月17日
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□    キャリアデザインマガジン 第15号 平成17年4月18日発行
     日本キャリアデザイン学会 http://www.cdi-j.jp/

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 「キャリアデザインマガジン」は、キャリアに関心のある人が楽しく読める
情報誌をめざして、日本キャリアデザイン学会がお送りするオフィシャル・
メールマガジンです。会員以外の方にもご購読いただけます。
 ※等幅フォントでごらんください。文中敬称略。

□ 目 次 □-----------------------------------------------------------

1 私のキャリア観 東京大学社会科学研究所教授 佐藤博樹(3)
2 キャリア辞典「倫理憲章」
3 キャリアイベント情報

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【学会からのおしらせ】

◆日本キャリアデザイン学会中間大会(於:千葉県野田市)の参加受付中です。

 日 時:2005年6月4日(土)・5日(日)
 場 所:千葉県野田市鶴奉7-1 野田市役所
 テーマ:「まちづくりとキャリアデザイン」
 内 容:1日め(4日)
    ・市内見学会(会員向け)、公開講演会(市民向け)
     2日め(5日)
    ・シンポジウム「地場産業と地域のキャリア形成」
    ・シンポジウム「地方自治体とキャリアデザインの課題」
    ・懇親会 17:00〜 於 野田東武ホテル
 詳細は、http://www.cdi-j.jp/events/event-20050604.htmlをご覧下さい。
 定 員:100人
 参加費:一般行事参加費 会員2,500円、非会員4,000円
     懇親会参加費 会員・非会員とも5,000円
 申込先:会員番号(会員の方のみ)、氏名、連絡先(住所・電話番号等、会
     員の方は不要)、市内見学会(1日め)、講演会(1日め)、シン
     ポジウム(2日め)、懇親会(2日め)の参加の有無を明記のうえ、
     中間大会申込専用アドレス cdi-appli@hosei.orgまでお申し込みく
     ださい。
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1.私のキャリア観
  〜「キャリア」をめぐる有識者インタビューです〜

「就労多様化とキャリアデザイン(3)」(5回連載)
                 東京大学社会科学研究所教授 佐藤博樹

【第3回】独立開業とキャリアデザイン

−−−−−若年雇用対策としては、独立開業を支援するという施策もとられて
います。

佐藤 ただ、若い人がいきなり独立開業といってもそれほど簡単ではないです
ね。開業がうまくいくパターンとしては、だいたい40歳前後に、同業・同職種
で開業というパターンが多いんです。若い人にとっては、むしろ中小企業で働
いてから独立開業、というキャリアが少なくなっていることをどうみるかです
ね。これまでは、中小企業で働く人にとっては独立がひとつの目標になってい
て、小池和男先生の研究によれば、それが大企業と中小企業の賃金格差を生涯
で見て埋め合わせているという実態があったわけです。独立しようという人は、
その会社で管理職になり幹部になろうという人の次くらいにモチベーションも
高いし、能力開発意欲も高いんです。そういう人が開業できなくなっていると
いうことは、社会全体としてはたいへんマイナスだと思います。それがなぜ生
じているのかと、ということを、キャリアという観点からも考えていく必要が
あると思います。

−−−−−資金とか、政策的にはいろいろ支援策が講じられていますが、それ
でも開業できなくなっている。

佐藤 さっきもいいましたが、40歳前後に同業・同職種で開業するキャリアが
主となると、産業構造の変化が開業の可能性にすごく影響する。たとえば、十
何年か自動車整備工場で働いて、資金をためて自分で開業する、なんて可能性
があったわけね。15年前、20年前ならやれたかもしれない。でも、いまはマー
ケットが縮小しているわけです。まず勤めてそれから開業というパターンは、
その産業が伸びているときでないと難しい。しかも、これからは技術革新や産
業構造の変化が速くなって、これなら伸びると思って働きはじめても十何年か
勤めているうちに縮小しはじめてしまうかもしれない。だから、独立指向のあ
る人にとって、その経験を生かして別の業種や別の職種で開業するというキャ
リアがありうるのか、そのためにどういう支援が必要か、というのが研究課題
ですね。

−−−−−役立たなくなった経験や技能は忘れることが大事だ、という意見も
ありますが。

佐藤 忘れなければいけないこともあるでしょうが、異業種での開業支援ビジ
ネスも出てきてはいるんですよ。フランチャイズ・システムで会社員が居酒屋
の店長になるなんてことも可能になってきたわけで、異業種であっても経験や
技能を違った形で生かしながら開業を支援することができれば、開業という
キャリアのチャンスが増えるでしょう。独立したい、自分でやりたい、という
のは就労に対する大事なモチベーションになってきたわけですから、それをど
う維持するのか、というのはキャリア研究で重要な課題としてやったほうがい
いと思います。

−−−−−独立したいというマインドを持っている人は多いと思うのですが、
やはりリスクが大きすぎるのではないでしょうか。独立支援制度を持っている
企業は多いですが、正直言って社員に独立を勧めることが本当にいいことなの
かどうか、疑問を持っている人事担当者も多いと思います。実際、独立しても
うまくいかないことも多いですから。

佐藤 実際、開業支援というのは難しい施策です。だいたい、開業して4〜5
年で半分はつぶれるというか、なくなっちゃうんです。開業はすごくリスクが
高い。開業する人が増えるということは失敗する人が増えるということです。
だから、開業支援と同時に、いかにうまく廃業するか、次の事業を始められる
ような形で廃業するかを支援しなければいけない。事業を始めること以上にや
める方が難しいんですよ。どうしても最後までチャンスに賭けて、最後は、社
員の退職金も払えずにつぶれちゃう。本当は、人にあまり迷惑かけないうちに
事業をたためればいいんだけど、それがいちばん難しい。だから、事業から退
出しやすくすることが参入しやすくすることにもなります。

−−−−−それはコーポレート・ベンチャーでも同じことかもしれません。や
るのはいいけれど、やめられない。

佐藤 企業の独立支援制度なら、ダメだったら戻ってこられるようにすればい
いんじゃないですか。そうすれば、ある程度ダメだな、と思ったところでやめ
て戻ってこられるじゃない。

−−−−−そうすると、ハングリー精神がないから甘くなるとか、背水の陣で
ないから成功しないとかいわれます。

佐藤 それは、出て行ってほしいから独立を支援します、ということだからで
すね。

−−−−−独立開業とちょっと似ていますが、比較的目新しい形態として、個
人請負、インディペンデント・コントラクターというものも出てきています。
昔でいえば請負、一人親方の範囲に入るのでしょうが、IT技術者などで、フ
リーランスでシステム導入の現場などを渡り歩く形態です。

佐藤 それは派遣に近い感じで、男性の派遣技術者というのは常用型が多いん
だけど、そうでない登録型の技術者には、そういう人が多いですね。パターン
が二つあって、ひとつは契約上、個人に直接仕事を出せないから、派遣会社を
通じて使っているケースです。

−−−−−ああ、なるほど。

佐藤 これがかなりいる。もう一つは、人的なネットワークで、以前あそこに
いたから、とか、あるいは派遣で来たけれど、君にいてほしいから、というこ
とで派遣を離れて請負になる。いずれにしても、相当スキルがある人であるこ
とは間違いない。

−−−−−そういう人脈や引きにうまく乗った人はいいでしょうね。

佐藤 そうそう。この人はそういうスキルがあるってわかってるから安心して
使える、ってことなので、結局は能力に関するインフォーマルな情報の流通が
不可欠です。そのネットワークの中で、「こういう人いない?」っていうと、
ああそれなら彼がいるから空いてれば連れてくよ、みたいな形でね。ネット
ワークとスキルに関する情報が決め手になるわけで、そういう人のキャリアっ
てのはすごくネットワークに依存するんです。それもなるべく広がったネット
ワークで、それこそ玄田有史さんが良く使うウィーク・タイズですね。

−−−−−変化が速いからでしょうか、あまり調べられてこなかった部分のよ
うな気がします。

佐藤 うん、よくわからないです。本当かどうかわからないけれど、先日労働
政策研究・研修機構でやった調査だと、日本全体で見ると派遣社員の3分の1
くらいの人数の個人請負がいる、というデータがあります。ただ、本当の個人
請負と、社会保険料とかの負担を逃れるために請負契約にしているものの二種
類ありますね。

−−−−−「偽装された雇用関係」ですね。

佐藤 営業マンなんかも雇用契約で固定給であったのを、雇用関係でも出来高
にして、さらにいつのまにか業務委託にした、っていうのに近いものがある。
昔からたくさんあったけど、それが実際上どれくらいか、というのはわからな
いね。 (つづく)
                 (聞き手・文責:編集委員 荻野勝彦)

 佐藤 博樹(さとう ひろき)
 東京大学社会科学研究所教授。産業社会学専攻。専門は人的資源管理、労使
 関係、社会調査。著書に「ユニオン・アイデンティティ大作戦」(1991、共
 著、総合労働研究所)、「人事管理入門」(2002、共著、日本経済新聞社)、
 「男性の育児休業」(2004、共著、中公新書)ほか多数。


2.キャリア辞典
  〜「キャリア」に関する用語をめぐるコラムです〜

「倫理憲章」

 最近、企業経営の世界では「倫理」が重要なキーワードのひとつになってい
るようだが、キャリアデザインの分野で「倫理憲章」といえば、経団連(2001
年までは日経連)が毎年発表している「新規学卒者の採用選考に関する企業の
倫理憲章」だろう。これは企業の新卒採用における基本理念を示すという位置
づけだが、その最大の関心事はなんといっても「選考日程」だ。
 それでは、昨年10月に発表された2005年度の「倫理憲章」が、選考日程をど
う定めているか見てみよう。まず、「学生が本分である学業に専念する十分な
時間を確保するため、採用選考活動の早期開始は自粛する。まして卒業学年に
達しない学生に対して、面接など実質的な選考活動を行うことは厳に慎む。」
となっている。ただし、「学生の就職機会の均等を期し、落ち着いて就職準備
に臨めるよう、企業情報ならびに採用情報(説明会日程、採用予定数、選考ス
ケジュール等)については、可能な限り速やかに、適切な方法により詳細に公
開する。」ともいう。そして、「正式な内定日は、10月1日以降とする。」と
されている。
 ということは、採用ホームページの開設や会社説明会の実施、さらにはOB
訪問の受け入れなどは、いずれ「企業情報の公開」には違いないわけだから、
3年生のうちからどんどんやりましょう、ということだろう。エントリーの受
付だって、「面接など実質的な選考活動」ではないといえるわけで、3年生の
うちから実施できることになる。いわゆる「リクルーター」活動は、現実には
かなりの程度選考の要素はあるだろうが、それでも形式上は面接ではないから、
これも3年生のうちから可能という解釈もできる(もっとも、最近では「リク
ルーター」活動を展開する企業も多くはないようだが)。さらに、「正式な」
内定日は10月1日以降だ、というのだから、当然ながら「非正式な」事実上の
内定はもっと早くてもいいということだろう。これでは、就職・採用活動が早
期化しないほうが不思議だ。そして、10月1日にはすでに「非正式に」内定し
た学生たちが企業に集まり、「内定通知書」の交付といった「正式な内定」の
セレモニーが行われる、というのが大手企業の通例ではなかろうか。まあ、あ
る意味では実態をふまえた「正直な」憲章だといえなくもない。
 実際、就職・採用活動の早期化は決して望ましいことではないにもかかわら
ず、現実に進行している。日本経済新聞は、就職活動シーズンを前に例年「新
卒就職特集」(就職ガイド特集、新卒就職ガイド特集とされている年もある)
を掲載しているが、1981年以降の掲載日をみると、1985年までは9月だったの
が86年から8月になり、91年は7月、92年からは6月、97年からは5月、2001
年からは4月に掲載された。そして今年(2005年)はとうとう「卒業学年に達
しない」3月17日の掲載となった。もちろん、早期にスタートすれば活動期間
は長くなる。長くやればたくさん就職が決まるのであれば、早期化も悪いばか
りではないかもしれない。しかし、実際には内定する学生は早々に内定し、内
定しない学生は長期間活動しても内定しないというのが現実だという話もある。
早期化で準備期間が不足のまま就職活動に突入し、不調が続くうちに就職活動
の中断、就労意欲の喪失といった事態を招くという指摘もある。もちろん、学
業、学事への影響も大きい。
 もちろん、採用活動も就職活動も自由に行われるべきだろうが、多くの企業
が少数厳選採用を進めるなか、まったくの自由競争では早期化の弊害も避けが
たい。経団連は「倫理憲章」の実効性を高めるべく、一昨年からは賛同企業を
募って「共同宣言」を出すという取り組みをはじめた。節度ある採用活動のた
めに、経済界には一層の努力が求められよう。
                        (編集委員 荻野勝彦)


3 キャリアイベント情報
  〜キャリアデザインに関係するイベントの開催予定などをご紹介します〜

◆読売・早大 女性アカデミア21「女性は国際社会でなにができるか」
 5月14日(土)13:00〜16:00
 於 早稲田大学 井深大記念ホール(東京都新宿区)
 http://info.yomiuri.co.jp/event/04001/200504136955-1.htm

◆独立行政法人労働政策研究・研修機構 労働政策フォーラム 
 「NPOは雇用の場になり得るか?」
 5月25日(水)14:00〜17:00
 於 「女性と仕事の未来館」ホール(東京都港区)
 http://www.jil.go.jp/event/ro_forum/info/20050525form.htm


[編集後記]

 日本キャリアデザイン学会が発足して半年が経ち、会員数も500人を突破し
ました。4月8日現在の会員547人(審査中をふくむ)の内訳をみると、研究
者、学校のキャリア関係者、企業の人事担当者、人材ビジネス関係者がそれぞ
れ2割くらいずつで、行政関係者が1割、あとの1割が学生、労組関係者、個
人などという構成になっています。日本キャリアデザイン学会は幅広い分野の
多様な人々が集まる学会であり、研究者だけのものではありません。新年度を
迎え、新たにキャリアの仕事や勉強に取り組みはじめた人も多いと思います。
キャリアに本気で関わろうと考える方のご入会を心からお待ちしております。
入会案内はこちら http://www.cdi-j.jp/nyukai.html (O)


【日本キャリアデザイン学会とは】

・キャリアを設計・再設計し続ける人々の育成を考える非営利組織です。
・キャリアに関わる実務家や市民と研究者との出会い・相互啓発の場です。
・多様な学問の交流からキャリアデザイン学の構築を目指す求心の場です。
・キャリアデザインとその支援の理論と実践の連携の場です。
・誤謬、偏見を排除し、健全な標準を確立する誠実な知的営為の場です。 
・キャリアデザインに関わる資格、知識、技法、専門の標準化の努力の場です。
・人々のキャリアの現実に関わり、変えようとする運動の場です。

 学会の詳細、活動状況はホームページに随時掲載しております。
 ◆日本キャリアデザイン学会ホームページ◆
   http://www.cdi-j.jp/

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  日本キャリアデザイン学会(CDI-Japan)発行
  オフィシャル・メールマガジン【キャリアデザインマガジン】
  
  このメールマガジンは『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ を利用して発
行しています。
 配信中止はこちら http://www.mag2.com/m/0000140735.htm
  無断転用はお断りいたします。

 編集委員:荻野勝彦(トヨタ自動車株式会社人事部企画室担当部長)
      児美川孝一郎(法政大学キャリアデザイン学部助教授)

   日本キャリアデザイン学会事務局連絡先
    e-mail cdgakkai@hosei.org
   〒102-8160 東京都千代田区富士見2-17-1

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