日本の情報・戦略を考えるアメリカ通信

【日本の情報・戦略を考える アメリカ通信】リベラリズムの罠


カテゴリー: 2012年02月24日
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 ┃日本の情報・戦略を考えるアメリカ通信  ┃ http://www.realist.jp
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 ├ 2012年02月24日■ リベラリズムの罠 ■
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-▼今日のChoke Point▼-
1:リベラリズムの根底に流れる2つの認識
2:実は破綻している欧州の「多文化主義」
3:「私はファシストですが、何か?」
-▲         ▲-

#チョークポイント - Wikipedia ( http://goo.gl/z1J9z )

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前回に引き続いて、さらに「リベラリズム」の危険性についての考察を深めてみたい。

まず「リベラリズム」という思想・概念には様々な定義があり、
ここで「リベラリズム」を私流に解釈して、

「別々の価値観を持つ人間が政府や他人の干渉から自由であると同時に、
少数派や弱者も自由に生きていけるために救って行こうとする思想」

とやや広めの定義付けをした上で議論を進めたいと思う。

※ちなみに、欧米の戦略コミュニティにおいては、議論を始めるに当たって
まず最初に「定義付け」を行うことは重要且つ不可欠である。
なぜならここが崩れると議論が全く噛み合なくなってきてしまうからだ。
日本の教育は、伝統的にこの部分が弱い。

私は「リベラリズム」思想には基本的に二つの流れがあると考えている。

一つが、政府や権威からの干渉を排除し、経済の力に任せておけば、
世の中の問題はすべて解決するという、いわゆる「マーケット系」だ。
これは経済の自由な活動という方向に行きやすく、
規制緩和や自由貿易の拡大を基調とした(ネオ)リベラリズム
のような経済重視の思想の源泉だ。

もう一つは倫理や宗教、それに人権面を重視するものであり、
これは基本的に「弱者救済」や「痛みの軽減」という思想がバックになった、
価値の多様性(多文化主義)や寛容性をどんどんと推し進めて行こうという、
いわば「倫理・宗教・人権派」とでも呼べるアプローチだ。

              -*- -*- -*-

私が今回問題にしたいのは、「倫理・宗教・人権派」のアプローチである。

なぜなら、現実の政策立案に当たってリベラリズムを採用しようとすると、
すでに述べたように、リベラリズムが内包する
「価値観の多様性」「寛容性」などの特質により、
たとえば、イスラムの過激主義の価値観も受け入れざるを得なくなるからだ。

その一例として挙げたいのが、
最近話題になったヨーロッパの多文化主義の失敗についてである。

日本でも一部でとりあげられて話題になったが、
実はヨーロッパのリベラリズムは、
多元主義/多文化主義をベースとした移民政策の失敗によって、
すでに大きく頓挫してしてしまっているのだ。

▼Multiculturalism 'clearly' a failure: Sarkozy (national post)
 :サルコジ仏大統領が、多元主義/多文化主義を「明らかに失敗」と明言
 http://goo.gl/4ZJDP

リベラリズムが推進する多文化主義なのだが、
これは冷酷な視点でリアリスト的に適用しないと、
それに引きずられて政策を大きく誤ってしまうことになる。

その一例が、私のブログでもとりあげた、
ある記事の分析である。以下にそれを引用してみたい。

====
▼地政学を英国で学んだ :
ノルウェーのテロ事件から「多文化主義の失敗」を再録
 http://geopoli.exblog.jp/15998951/
====

(引用はじめ)

スウェーデンやオランダでも反移民政策を訴える政党が議席を伸ばしている。

英首相のキャメロンや独首相のメルケルが、
この政策の失敗についてスピーチで言及したことは記憶に新しい。

しかしこの問題の本質は「多文化主義」ではなく、
「移民」(とくにイスラム教徒)にある。
オランダとスウェーデンの極右党の議席拡大はこれが原因だとされている。

この問題の難しさは、あまり公共の場で議論されない二つの点にある。

一つは、「多文化主義」というのが
大量の移民によって構成された「社会」のことを示していることであり、

もう一つがこのような多様性を管理する政府の「政策」のことを示しているからだ。

この二つの意味を区別できないと、政府の政策の失敗そのものを、
マイノリティーたちの責任に押し付けてしまうことになってしまう。

実際のところ、大量の移民は西ヨーロッパ諸国にとってはありがたいものであり、
これによって経済は恩恵を受け、
ダイナミックかつコスモポリタンな社会の形成に役立ってきた。

ところがこれを管理する政策は大失敗だった。
この失敗をよくあらわしているのが、イギリスとドイツの例である・・・
イギリスの例もドイツの例も、両方とも分裂的な社会を生み、
ポピュリスト的かつイスラム主義的なレトリックの台頭につながったのである。

もちろん「多文化主義」そのものが、イスラム過激派をつくりだしたわけではない。
しかしその両国の例でもわかるように、「多文化主義」は
イスラムの過激派が入り込むスペースを両国の社会の中につくったのだ。

よって現代社会の課題は、政策としての「多文化主義」を拒否しながらも、
同時に移民たちが持ち込んできた文化の多様性を受け入れることができるかどうか、
という点なのだ。

しかもこれに成功した国は一国もない。

(引用おわり)

この分析では、多文化主義の「社会」と「政策」を分けて考えているが、
根っこには同じリベラルの「寛容性」という「思想」がある、
ということを指摘していないし、あえて無視しているようにも見える。

また、この記事の著者は「移民は経済的恩恵を与えてくれた」と指摘しながら、
同時に「イスラムの過激派が入り込むスペースを両国の社会の中につくった」
と指摘している。これなどはまさに上述の、リベラリズムという思想の中に
「マーケット系」と「倫理・人権派」の衝突があることを暗に指摘している。

しかしここであえて強調したいのは、
多文化主義とその根底の思想にあるリベラリズムは、
寛容性という意味で大きな矛盾を抱えてしまっている点だ。
われわれはここを直視しなければならない。

              -*- -*- -*-

この矛盾についてだが、私の身近なところにも例がある。
これは私の友人が実際に体験したことだ。

イギリスの大学に通っていたこの友人(アメリカ人)は、
ヨーロッパの多文化主義についてのクラスで、
「少数派の意見にオープンでいることが最も重要です!」と説く先生がおり、
彼はこれに非常に矛盾を感じたらしく、

「先生、私はファシズムが良いと思うんですが、
こんな超少数派の意見についても受け入れてくれるんですか?」と質問。

するとこの先生は、絶句して何も答えられなかったという。

この例で私が何を言いたいかというと、前回のエントリーでも言及したように、
「寛容であること」や「人にやさしく」というかけ声は、
たしかに耳に心地いいものであり、重要なのかもしれないが、
逆にそこには危険が潜んでおり、そこに大きな矛盾をはらんでいることもある、
ということなのである。

我々を取り巻く世界の状況は、実際問題として、
今後、ますます厳しくなることは明白である。そして、そんな状況だからこそ、
我が日本国においても「寛容たれ」という耳障りの良い、
心地良い言葉が流布することも容易に想定出来る。
だが、その「甘い誘惑」が、実のところ、
現実世界の問題をさらに悪化させることになる恐れが強いのである。

このような認識を、我々日本人一人ひとりが持つ必要があり、
この点について、われわれはより自覚的にならなければならない。

「地獄への道には、善意が敷き詰められている」のである。

(おくやま)

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■■奥山真司プロフィール■■

横浜生まれ。日本の高校を卒業後、
カナダのブリティッシュ・コロンビア大学に入学。
地理学科および哲学科を卒業。
英国レディング大学大学院戦略学科で修士号及び博士号を取得。
コリン・グレイに師事した。戦略研究学会会員。
米国地政学研究家。戦略学博士

・筆者ブログ「地政学を英国で学んだ」
http://geopoli.exblog.jp/

・奥山真司Twitter
http://twitter.com/#!/masatheman

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私は「戦略」というものを個人的に研究している
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(編集後記)

さて、今回のメルマガは如何でしたでしょうか。

おそらく、ごく普通の一般的な日本人は、
「リベラル」という政治的なポジションに対して、
幻想的な想いを抱いているのではないかと思います。
今回のようなトピックを知るにつけ、
「リアリズム」的な冷酷な視点を持つことは大事だな…と痛感します。

直接「リアリズム」を扱っているわけではないのですが、
最近、管理人が読んだ本で、これはもう「リアリズム」以外ではあり得ない!
と思った、とても興味深く面白い本がありましたので、ご紹介致します。

▼『10年後に食える仕事、食えない仕事』:
 渡邉 正裕 http://goo.gl/1Mx9H

著者の渡邉さんは、「MyNewsJapan( http://www.mynewsjapan.com/ )」
という人気サイトを主宰されているので、ご存知の方もいらっしゃるかと思います。

この著書で展開されているのは、今後の日本の労働環境・労働市場が
どう展開していくのか?というリアルな分析なのですが、
その議論の捌き方というのが、もう「リアリズム」そのもの。
シビアで冷酷な"身も蓋もない"もないお話のオンパレードで(笑)
正直、管理人は背筋がすこし寒くなりました・・・。

ただ、渡邉さんの論は、「欧米流グローバルスタンダード万歳!」や
「日本株式会社こそが素晴らしいのだ!」といったステレオタイプな議論ではなく、
とても、"地に足のついた"真っ当なお話であるとも感じました。
最後には、政策提言的な主張もされており、一見情緒的なタイトルとは異なり、
非常にロジカルな筋の通った内容でした。

蛇足ですが、この本のあとがきで、渡邉さんが取材で訪れたスペインと
日本の比較を行なっているところは非常に興味深かったです。
奇しくも、かの大前研一氏は、日本の「ポルトガル化」を嘆いておりますが、
「トルデシリャス条約」で世界分割を目論んだ
かつての覇権国、スペインとポルトガル。それが、いまとなっては・・・。
そして、我々のこの国は…。
背筋を凍らせている場合ではないですね。

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サラリーマン時代に始めた株式投資から株で勝つための独自ルールを作り上げる。2009年10月、130万円だった株式資産は2017年に7000万円を突破。定期預金などを合わせた資産は1億2000万円に。 平成24年より投資助言・代理業を取得。現在、著者自身が実践してきた株で成功するための投資ノウハウや有望株情報を会員向けに提供しているかたわら、ブログやコラム等の執筆活動も行う。 2014年まぐまぐマネー大賞を受賞。読者数2万人。雑誌等のメディア掲載歴多数。 主な著書に『10万円から始める高配当株投資術』(あさ出版)『「小売お宝株」だけで1億円儲ける法』(日本実業出版社)
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