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[GEN 670] 毒餃子事件報道を検証する【第9回】


カテゴリー: 2008年03月13日
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     世界の環境ホットニュース[GEN] 670号 08年03月13日
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           毒餃子事件報道を検証する【第9回】         

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 毒餃子事件報道を検証する                                 原田 和明

第9回 兵庫県警の不作為

兵庫県警は、いつどこで誰からの情報によって千葉県内で起きた2つの事件との
関連に気付いたのでしょうか?

高砂市で事件が起きたのが1月5日で、兵庫県警が「有機リン中毒の疑い」との
情報を得たのは翌日のことでした。しかし、このとき兵庫県警は被害家族に対す
る怨恨が毒物混入の動機と考えていたようです。(2.9 朝日新聞)理由は次の二
つです。

(1)年末に次男が同じ袋のギョーザを食べたときは、異常はなかった。
(2)他に食中毒発生の情報がなかった。

この時点では兵庫県警は製造段階混入説どころか、店頭での毒物混入も想定して
いません。被害者宅の冷蔵庫で毒物が仕込まれたと推定していたことになります。
事件の第一報は高砂市民病院から加古川健康福祉事務所への通報です。以下、兵
庫県のホームページから引用。

 平成20年1月5日(土)に高砂市内の医療機関から食中毒を疑う患者を診察し
 た旨、加古川健康福祉事務所に連絡があった。加古川健康福祉事務所が調査し
 たところ、患者3名は、同一家族で、1月5日の夕食直後に、嘔吐、下痢、め
 まい、縮瞳等の症状を呈して入院していた。さらに、医療機関での検査(血中
 コリンエステラーゼの低下)等の状況から有機リン中毒の可能性もあり、事件
 性もあるとの判断から警察と連携して調査を進めてきた。

 その後、1月29日(火)に兵庫県警から「科学捜査研究所で実施していた毒物
 検査の結果、有機リン系農薬成分であるメタミドホスが、患者宅に残っていた
 冷凍餃子の袋から検出された」旨の報告があった。(引用終わり)

この中で疑問点が2つあります。兵庫県警に「有機リン系の食中毒発生」との知
らせが入ったのが1月6日ですから、遅くとも7日(月)には被害者宅から証拠
物件を任意提出してもらっているはずです。ところが兵庫県警が「メタミドホス
検出」と兵庫県に伝えたのが1月29日というのです。その間22日。長すぎません
か? 千葉県警は市川市の事件(1月22日)からメタミドホス検出(1月29日)ま
で1週間です。兵庫県警は何をやっていたのでしょうか? 同じ日に検出された
というのも単なる偶然でしょうか?

2つ目の疑問は、兵庫県警が分析したサンプルが「患者宅に残っていた冷凍餃子
の袋」だったという点です。被害者は 市民病院で胃洗浄を受けています。(2.4
読売新聞)県警は当然、それも入手していたはずです。3週間もあれば胃洗浄液
からメタミドホスを検出する余裕は十分にあります。千葉県警は市川市の事件で、
被害者の吐しゃ物から1週間でメタミドホスを検出しているのですから。被害者
には血液検査では有機リン中毒の症状がでているのです。胃洗浄液を分析すれば
メタミドホスが検出できないはずがありません。従って、「袋から検出された」
ということは、兵庫県警では胃洗浄液を分析しなかったということを意味します。
なぜ兵庫県警は袋時間的余裕が十分にあったにも関わらず、胃洗浄液を分析しな
かったのでしょうか?

もし、兵庫県警がさっさと分析してメタミドホスを検出していれば、日本では入
手困難なことがわかったはずですから、怨恨説は早々と消えたはずです。怨恨説
を信じて疑わなかったから分析も後回しにしたのでしょう。しかし、被害者家族
の近所、職場にそうしたトラブルは見当たらなかった。(1.31 朝日新聞)そうし
て時間を浪費していたと考えられます。

1月22日に市川市で起きた事件が有機リン中毒だと知らされたとしても、商品名
も製造日も違う商品ですから、怨恨説に固執していた兵庫県警は、その関連性に
気付くはずがありません。

おそらく、1月27〜28日のあたりで、誰かが市川市と高砂市の商品が同じ製造会
社のものであるとの情報を兵庫県警に伝えたのだと思われます。同時に、「千葉
県では1月30日に発表する予定だから、兵庫県警もそれまでに毒物を特定できて
いないとマスコミから叩かれるよ」とでもアドバイスされたのではないでしょう
か?

市川市と高砂市の両事件の接点は「兵庫と千葉の事件のギョーザなどから同じ農
薬成分メタミドホスが検出されたのは1月29日。千葉、兵庫県警からそれぞれ農
薬成分について問い合わせを受けた薬品工場が、奇妙な符合に気づいて県警に伝
えた。」(2.9 朝日新聞)ということになっています。たまたま 分析結果が出た
時期が一致しただけなのでしょうか? そうではありません。「たまたま一致し
た」では、兵庫県警が胃洗浄液から検出できていない(分析していない)説明が
つきません。2つの事件の関連と千葉県の発表の予定までを直前に聞かされたか
らこそ、それまで放置していた有機リンの特定作業を突然急がなければならなく
なったのです。だから兵庫県警は分析に時間のかかる胃洗浄液の分析を後回しに
して、簡単に分析できる袋を優先したと考えられるのです。

兵庫県警が大慌てで、29日に間に合わせた形跡は他にもあります。

1月30日に兵庫県が高砂市の食中毒事件を公表する直前、兵庫県警科学捜査研究
所による鑑定で、家族の胃の洗浄液からチオグリコール酸が検出されたことが県
警から兵庫県に伝えられました。しかし、今回の中毒症状とは症状が違うため公
表されませんでした。(2.1 神戸新聞)

ということは胃の洗浄液の分析が遅れていたのです。つまり、たまたま1月29日
に結果が出たのではなく、30日の千葉県の 公表に 合わせるために、兵庫県警は
29日にどうしても毒物を特定しなければならなかったのです。そのために、前処
理がほとんど不要な袋だけを分析したのです。そして平行して、被害者の胃の洗
浄液を分析するための前処理を行なっていた。それは大急ぎの作業だったことで
しょう。県の公表が始まる直前にやっと分析結果が出たというのですから、袋が
なかったら兵庫県は千葉県に合わせて公表できず、大きな批判に晒されていたこ
とでしょう。兵庫県警はアドバイスのおかげでピンチを脱することができました。
その感謝の気持ちの表れか、それとも 強い圧力があったか それまでの怨恨説を
すっかり捨て去り、製造段階混入説にあっさり乗り換えたのです。大した根拠が
ないという点では2つの説に違いはないのです。それは理詰めの追跡でも、科学
捜査でもありません。

では、一体誰が兵庫県警にそのようなアドバイスをしたのでしょうか? 兵庫県
警はそれまで怨恨説(自宅冷蔵庫混入説)に凝り固まっていました。それが一夜
にして「製造段階混入説」に大転換するには、上部組織からの指示以外には考え
られません。対等な立場である千葉県警のアドバイスだったなら、こんなにも素
直に聞き入れるとは考えられません。

もっとも千葉県警は29日の生協の聞き込みで、年末に千葉市でも同一の商品で同
様の事件が起きていたことを知り、そちらの関連の調査でてんてこ舞いだったで
しょう。商品が違う高砂市の事件との関連に気付いていたとも思えません。兵庫
県警にアドバイスできる状況でもなかったはずです。

「翌30日、両県警から捜査の報告を聞いた警察庁が公表を指示し、事件がようや
く明らかになった」(22.9 朝日新聞)ということですから、警察庁が 公表の可
否、公表のタイミングを指揮していたことになります。1月30日は公表した日で、
兵庫県警が袋からメタミドホスを検出したのは29日です。従って、警察庁の関与
は遅くとも28日前後と考えられます。そして、「製造段階混入説」は警察庁の発
案か、または千葉県警が持ち出して、警察庁が承認したということになります。

すると、「千葉、兵庫県警からそれぞれ農薬成分について問い合わせを受けた薬
品工場が、奇妙な符合に気づいて県警に伝えた。」(2.9 朝日新聞)というのは
逆ということになります。共通の事件だと聞かされた両県警が相次いで薬品工場
に問い合わせた、というのが実情でしょう。問題は警察庁がいつ、なぜ市川市と
高砂市の事件が一連の事件だと気付いたのかということです。

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