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[GEN 926] 戦後日本の化学兵器(第6回 沖縄毒ガス漏洩事件)


カテゴリー: 2017年05月08日
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■世界の環境ホットニュース[GEN] 926号
■17年5月8日
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■ 戦後日本の化学兵器(第6回 沖縄毒ガス漏洩事件)
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戦後日本の化学兵器(第6回 沖縄毒ガス漏洩事件)       原田 和明

沖縄がまだ米国の施政権下にあった1969年7月、沖縄・嘉手納基地の知花弾薬庫に米軍が密かに持ち込んでいた化学兵器の一部が漏洩し、米兵ら約25人が緊急入院するという事故があったと米国誌がスクープしました。

日本の新聞各紙も翌日トップニュースで 「米、沖縄に毒ガス配備」と報道。「知らない間に毒ガスと隣り合わせの暮らしを強いられる沖縄の危険性」 を伝えました。

米国防総省は事故を隠していましたが、米国誌ウォール・ストリート・ジャーナルがスクープ。漏れた化学兵器はこの2月にマレーシアで起きた北朝鮮のキム・ジョンナム暗殺事件に使われたといわれている「VXガス」と報道されました。

朝日新聞(1969年7月19日付)より

(以下引用) 
沖縄にガス兵器配備 米紙報道
18日付のウォール・ストリート・ジャーナル紙が報じたところによると、米国は既に致死性化学兵器を実戦兵器として海外に配備している。これは先週沖縄基地でVXガスが事故で漏れたことから結論付けられると同紙は報じている。

致死性最高度のVX神経ガス 米基地で漏出事故
【ワシントン=共同】 18日付のウォール・ストリート・ジャーナル紙が報じたところによると、先週沖縄の米軍基地でVX神経ガスの容器からガス漏れ事故が発生。これを吸った約25人が病院に運ばれた。この事故の犠牲者について、米国防総省当局者は詳細を明らかにすることを避けているが、死者はなかったようである。日本政府は公式にも、非公式にも沖縄に神経ガスが配置されていることを通告されていなかったようである。

<注>VXという記号の神経ガスは、昨年(1968年)3月14日、米国ユタ州のスカル峡谷で、ヒツジ約5千頭を狂死させた犯人と考えられている。

初め、ヒツジの死因がわからなかったが、その前日、現場近くの米軍ダグウェイ演習場でこの毒ガスの散布実験が行われたことが分かり、大騒ぎになった。この峡谷から毒性が除去されるまで約3ヶ月かかった。軍当局は毒ガスとの関係にノーコメントを続けていたが、昨年末 牧場主に賠償金を支払った。また、今年5月22日には、米コロラド州で、古くなった毒ガス2万7千トンを貨車で運んで処分しようとしたところ、「1億人分の致死量に相当する」 と住民が反対運動を起こし、安全性確認まで処分は一時中止となった。

【ワシントン=功刀特派員】 米国防総省は18日朝、「7月8日、沖縄で通常の保管作業中、不注意の結果、米軍人23人と米人労務者1人が医学的検査を受けたが、6時間後には完全に正常な勤務に戻った」 と発表した。同省の発表はその原因が何であったか、という点については触れておらず、また、同省筋はこれ以外のことについては一切の論評を避けている。

【那覇=井川記者】 沖縄の米軍基地で致死性の神経ガスによる事故が起こったとの米紙の報道について現地米軍当局は18日夜 「この問題に関する発言の権限はワシントンにある」 としていっさいの発言を避けた。屋良主席は同日夕 「このニュースが本物なら沖縄は世界最悪の基地だ。」 と語り、できれば19日にも米民政官事実の究明と毒ガス類の撤去を申し入れる考えを明らかにした。

住民の多くはウォール・ストリート・ジャーナルの報道にあまり疑問を示していない。沖縄に化学部隊が常駐し、厳重に警戒された秘密の特殊兵器の貯蔵庫のあることは、地元ではすでに常識化しているからだ。

ガス兵器 事前協議の盲点
日米安保条約上の事前協議制度によって、米軍の 「装備における重要な変更」 には日米間の協議が必要だが、この 「装備の変更」 は 「核弾頭および中長距離ミサイルの持ち込み並びにそれらの基地の建設」 であることが日米間で合意されているだけだ。つまり、生物・化学兵器の持ち込みについては、条約上の実質的な取り決めはなく、いわば事前協議の『盲点』になっている。

現状では、日米安保条約のその関連取り決めが沖縄に適用されても、神経ガスなどの生物・化学兵器の米軍による持ち込みは、条約上は規制できない。(中略)そこで、沖縄の米軍の生物・化学兵器の撤去は 『本土並み』 返還と同時に、自動的に実現するわけではなく、米軍基地の整理、縮小問題と同様に、日米間で折衝しなければならない問題だ。

防衛庁は今度の沖縄の事故については、全然知らなかったと言っている。また、沖縄や本土に米軍がいわゆる生物・化学兵器を保有しているかどうかも 「承知していない」 と言っている。

本島中部に貯蔵庫?
1965年には北部の宜野座村で米軍の演習に使われたガスが校庭に流れ、中学生多数が中毒症状を起こした。また、去年(1968年)7月には本島東岸の臨海学校で小学生百余人が原因不明の皮膚炎にかかった事件があり、これも米軍の化学兵器によるものではないかと疑われている。

米軍筋によると、陸軍第二兵站部隊(那覇近郊に本部)の弾薬部門には3つの特殊弾薬中隊があり、そのうち第267化学中隊と第137武器中隊は極東でも最も優秀な特殊兵器部隊として知られている。本島中部の知花、北部の辺野古などには、これら中隊の管理する毒ガス類や核の貯蔵庫があるといわれる。これらの貯蔵地帯は、住民地域から2-5キロしか離れておらず、しかも、その内部は完全な秘密に包まれている。
(引用終わり)

米軍が沖縄に化学兵器を配備していたことに対し、日本政府はどのように対応しようとしたのでしょうか?  衆院・沖縄及び北方問題に関する特別委員会(1969.7.22)で自民党の宇野宗佑(後に外務大臣、総理大臣)は外務省の姿勢を 「軟弱外交」 と非難しています。

(以下引用)
「外務省の一部には、今日(米国に)施政権がある以上は撤去を求めることはむずかしかろう、したがって、善処を要望するとか配慮を要望するというような、われわれから考えると何か非常に軟弱外交的な考え方があるように承っておりまするが、私はあくまで撤去というものを要求すべきであると考えております。」 これについて、いま大臣は善処すると言われましたが、撤去をお考えになっておるか、どのような方法によってそれを強く申し入れられるか、この点をはっきり御回答賜わりたいと思います。」
(引用終わり)

しかし、朝日新聞の記事が教えるところは、「日米安保条約では、日本政府は米国が生物・化学兵器を米国施政権下だった沖縄だけでなく、日本本土へ持ち込んでも拒否できないし、そもそも米国は持ち込みを通告する義務さえない」 ということです。したがって、もし米軍が化学兵器を日本国内に持ち込んでも日本政府は 「米国の善処、配慮にすがる」 しかないという状況は今も続いているということです。

愛知揆一外務大臣は宇野の質疑に対し、「二十日の日曜日にも接触をしているわけでございます。その最初にアメリカ側から回答のありましたときに、日本本土については、さようなものは絶対に貯蔵してもいないし、将来もそういう意図は全くないということを日本政府に対して保証するというような回答があったわけでございます。」 と回答していますが、それはまもなく 「口約束」 の 「空証文」 だったことが次第に明らかになっていきます。

なお、このトップニュースの下に、米海軍岩国基地(山口県)所属の爆撃機が空対空ミサイルを岐阜県美濃加茂市郊外の山林に発射していた(記事では「誤って落とした」と表現)という、こちらも気になるニュースが報じられています。

事故原因としては、電気系統の故障に基因して発生したものと考えられるとのこと。米軍も警察も発射されたミサイルを探しましたが見つかりませんでした(衆院内閣委員会1969.7.22)防衛施設庁によれば、米軍機からの 「ミサイル」 の落下は初めてだが、「模擬爆弾など」 を落とした事故はこの6年間に212件もあったとのことです。


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