ルビュ言語文化教育

[RLCE080229]ルビュ言語文化教育 第240号


カテゴリー: 2008年02月29日
[2008-02-29] Revue Langue, Culture et Education, n.240.
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[ 週刊 ] ル ビ ュ 言 語 文 化 教 育(RLCE)  ─240号─

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■ 240号 もくじ ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
◇研究所より:自伝と内省―母語と第2言語の統合         細川英雄
◇この新著・新刊がおもしろい!:「自律を目指すことばの学習」  松下達彦
◇おしらせ :リテラシーズ投稿募集,パリ・ワークショップ案内,学会,ほか
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■ 研究所より ■□■□■□■□■□■□□■□■□■□■□□■□■□■□
自伝と内省―母語と第2言語の統合               細川 英雄
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先週の土曜日2月23日,パリINALCOの名誉会議室で行われた研究会は,
L'Association Francaise des Enseignants de Francais(AFEFフランス語教
員フランス協会)と L'equipe de recherche Pluralite des Langues et des 
Identites en Didactique: Acquisition, Mediations(PLIDAM:習得と調
整―教育における言語とアイデンティティの複数性の研究グループ)の合併で行
われたもので,教育における複言語主義とアイデンティティのダイナミズムをめ
ぐって,15名ほどの参加者が円テーブルを囲み,朝9時すぎから3時間に及ぶ議
論が行われた。

発題者は,マリ・マドレーヌ・ベルテュシ(セルジ・ポントワーズ大学・フラン
ス),ダニエル・レヴィ(マスラッタ大学・イタリア),ジュニビエヴ・ザラト
(INALCO・フランス)で,ザラトさんによるヨーロッパ参照枠におけるポー
トフォリオの説明から始まって,ベルテュシさんの自伝と内省にためのインタ
ビュー記録の紹介,レヴィさんのイタリア移民の自己形成と自伝の関係の話があっ
た。

興味深かったのは,AFEFがフランス人のためのフランス語教育(日本でいえ
ば,国語教育)の集まりであるのに対して,PLIDAMは第2言語としての教
育を軸とした教育研究活動が中心である点だった。この二つをあえて合流させ,
教育における複言語主義とアイデンティティのダイナミズムをめぐる議論として
成り立たせようとしているところに,ザラトさんの強烈な意志が働いていること
は明らかだ。
議論そのものは,自伝という方法がそれぞれの分野でどのように機能するのかと
いうところにとどまり,それほど深い討論が行われたわけではなかった。ただ,
自己を開示し記述するという問題が,母語においても第二言語においてもきわめ
て重要な課題であるという認識はほとんど参加者全員に共有されている点はすば
らしいと思った。
最後に,こうした問題にはどのような歴史と議論があるのかという質問をすると,
ベルテュシさんから,まさにこのことをきちんと議論してこなかったことが問題
なのだという発言が出た。帰りがけに,数人の人と話したとき,それでもやっぱ
り成人相手と子ども相手では違うからね,という,よくある意見も飛び交ってい
た。母語と第2言語の統合という観点の議論は,フランスにおいても,ほとんど
日本と変わらない状況にあることを確認しつつ,それでも,この3時間の議論の
熱さは何なのだろうかとサンジェルマン通りを歩きながら考えた。   (ほ)

■ ご意見・投稿お待ちしています ■━━━━━━━━━━━━━━━━━━
このメルマガの読者の方々から広くご意見を募集しています。言語教育・文化教
育にかかわることなら何でもお寄せください。この欄への魅力ある提言をお待ち
しています。
ご意見・ご感想等,投稿いただけるかたは,その旨を明記して,
         info@gbki.org 言語文化教育研究所
までメールでお送りください。
1292名の読者があなたの意見をお待ちしています。
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━【この新著・新刊がおもしろい!】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
自律を目指すことばの学習                   松下 達彦
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この本は桜美林大学の日本語スタッフ有志12名で作りました。桜美林大学の日本
語プログラムには「チュートリアル」と呼ばれる授業形態があります。そこでは
学習の内容や方法の決定権が学習者自身にあります。教師は学生一人ひとりと話
し合いながら学習をサポートしていきます。
この本の前書きには次のように書かれています。

> 日々,日本語を教えながら・・・(中略)・・・常に問題やさらに改善したい
> 点が存在します。このような問題を解決するとき,教師だけががんばって授業
> を変えればいいのでしょうか。学習者はいつも受け身でいいのでしょうか。私
> たちは「そんなことはない」と考えました。

チュートリアルを数年続けてきて,学生たちのやりたいこと(ニーズ)や持って
いるもの,置かれている状況(背景・レディネス)が如何に多様で,それまで彼
ら一人ひとりの言いたいことを私たちが如何に聞きとっていなかったのかを思い
知らされることになりました。そして私たちスタッフは,自分たちのしている仕
事が誰のため,何のためなのかを,改めて問い直すことになったのです。

そこからスタッフ同士の議論がワイワイと,時には激しく展開されていきました。
それはしんどくもあり,楽しいことでもありました。そしてその結果は,チュー
トリアルにとどまらず,プログラムが提供するさまざまな科目やサービスのあら
ゆる側面に及んでいきました。

この本では,そうして考えたことのエッセンスとして,チュートリアルの実践方
法,リソースについて,学習者・教師・リソースの変化,実践の壁をどう乗り越
えたか,部分的にチュートリアルを応用する方法,チーム・プログラムとして
チュートリアルを実践する場合に重要なこと,などについて,具体的に紹介して
います。また,学習に必要なマップ,チャート,プロファイルなどの各種のシー
トも掲載しています。この本を作るときに立てた目標は,この本を手にとった方
に「自分たちもやってみよう」と思ってもらえるような本を作ることでした。マ
ニュアル本ではありませんが,実践のエッセンスが詰まった内容を心がけました。

また,最後の8章と9章では,チュートリアルを支える学習者の自律について,
理論的な背景と文献のガイド等を掲載し,実践について理論的に振り返る手がか
りを提供しています。

この本は一応,分担執筆をしましたが,その原稿は何度も全員で読み直し,何度
も書き直し,文言の一つ一つまで全員がこだわり続け,数え切れない回数のミー
ティングを経て完成したものです。(私は7章の担当でしたが,何度も「ダメ出
し」されて,ブツブツ言いながら何度も書き直しました。・・・)それだけにス
タッフの思いが詰まった本になっています。

チュートリアルの世界の向こうに広がっている世界の奥の深さを,読者の方に感
じていただけたら,そしてそれをそれぞれの現場で活かしていただければ幸いで
す。

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『自律を目指すことばの学習―さくら先生のチュートリアル』
●桜美林大学日本語プログラム「グループさくら」著
●凡人社より2007年刊
●定価1,995円(税込)
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━【この新著・新刊がおもしろい! 投稿募集】━━━━━━━━━━━━━━
編集部に寄せられた情報の中から,話題の新刊を著者の自己紹介の形で紹介する
コーナーです。
単行本,論文,報告を問いません。また,自薦も他薦を問いません。
1000〜1200字程度で紹介をお願いすることにしました。
自薦の場合,ご著書も合わせてお送りいただけるとうれしいです。
なお,編集部でコメント等をつけることもあります。投稿いただけるかたは,
info@gbki.org 言語文化教育研究所までメールでお送りください。
1280名の読者が刺激に満ちた新刊自己紹介や興味深い書評をお待ちしています。
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■ おしらせ ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
━【予告 いよいよ来週です!!】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
フランス日本語教師会 特別ワークショップ
「日本語教育最前線――教育現場における「実践研究」とは何か」
http://aejf.asso.fr/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●とき :2008年3月7日(金) 14:00〜17:00
●ところ:パリ日本文化会館(101bis, quai Branly 75740 Paris)
●モデレータ:小林ミナ (早稲田大学大学院日本語教育研究科)
     池上摩希子(早稲田大学大学院日本語教育研究科)
     細川英雄 (早稲田大学大学院日本語教育研究科・パリ第4大学CELTA)
今回は,〈日本語教育最前線―教育現場における「実践研究」とは何か〉という
タイトルで,早稲田大学の事例を紹介しつつ問題提起を提起し,それぞれの課題
をめぐってグループディスカッションを行い,議論の共有を図りたいと思います。
日本語教育の中で「実践研究」ということばは,まだそれほど定着しているわけ
ではありませんが,これからの教育現場における重要なコンセプトとなると思い
ます。今回のワークショップを機に,それぞれの教育現場における「実践研究」
の課題と求められる教師の資質や技量,そして,それらを支える「日本語を教え
る」ことの意味について考えてみたいと思います。

参加希望の方は,必ず下記ホームページをご参照ください。
http://aejf.asso.fr/


━【投稿募集】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
4月末締切,『WEB版リテラシーズ』5(1)(くろしお出版)
http://literacies.9640.jp/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「ことば・文化・社会の日本語教育へ」むけ,リテラシーズ育成教育の最先端を
掲載するUp To Dateな論文誌,『WEB版リテラシーズ』では,「ことば・文化・
社会」教育の,捉え方・思想・教育実践などについて,みなさまの新しい提言,
報告,発想,ご意見等,幅広く募集しております。

● 投稿締め切り: 4月30日正午(必着)
● 採否通知: 5月下旬
● 公開: 6月末
● 投稿先アドレス:literacies@9640.jp

投稿原稿は,リテラシーズ編集委員会にて厳正な審査のうえ採否を決定し,投稿
者全員に査読結果を査読コメントとあわせてお送りします。なお採用論文は,後
日『リテラシーズ 4&5 ―― ことば・文化・社会の日本語教育へ』(くろしお出
版)に掲載されます。

詳しくはリテラシーズのWEBサイトをご覧ください。
http://literacies.9640.jp/

「ことば・文化・社会の日本語教育へ」のコンセプトに基づく,意欲的な提案を
お待ちしています。


━【新刊予告】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
細川英雄『論文作成デザイン――テーマの発見から研究の構築へ』
東京図書より3月末発売予定(150ページ,予価:1800円)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「なぜ私は論文を書くのか」。
書くことの意味を考えれば,そのプロセスも見えてきます。
対話によって「私」に切りこみ,
対話のうちに「私」をひらく。
ここから,あなた自身の研究活動が始まります。


━【予告】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
早稲田大学日本語教育学会 2008年春季大会
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
日時  :2008年3月29日(土)9時30分〜
場所  :早稲田大学西早稲田キャンパス22号館 201教室,202教室,203教室
講演会 :館岡洋子氏(早稲田大学日本語教育研究科教授)
     『協働的な学びにおける互恵性』
参加費 :会員500円 非会員600円(事前申し込み不要)
詳細は下記HPにて2月に発表いたします。
http://www.waseda.jp/gsjal/taikai08sp.htm


━【パワーポイント資料公開中】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
複言語・複文化状況における日本語教育―ことばの教室で私たちがめざすもの
細川英雄(早稲田大学大学院日本語教育研究科)
http://www.gbki.org/#news14
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2008年1月15日ベルリン自由大学で開催されました,講演「複言語・複文
化状況における日本語教育―ことばの教室で私たちがめざすもの」には,40名
を越す方々の参加をいただきました。ドイツの日本学の中での日本語教育への関
心を見せていただいた気がします。ありがとうございました。
使用したスライドショーが,当NPO法人「言語文化教育研究所」のホームページ
内「めるまがで最近紹介した一冊」(http://www.gbki.org/#news14)からダウ
ンロードできますので,ぜひご覧下さい。


■ 関連のブログから ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
NPOの活動に関連する記事を,ホームページやブログから適宜抜き出してお知
らせします。リンク集ではありませんが,そのような働きも兼ねることになると
思います。ブログ等をお持ちの方,お知らせください。
掲載希望の方,研究所まで情報をお寄せください。
         info@gbki.org 言語文化教育研究所
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
誌 名:ルビュ「言語文化教育」240号
発行日:2008年2月29日
発行所:NPO法人「言語文化教育研究所」
    〒112−0014 新宿区早稲田鶴巻町548今井ビル3F
    http://www.gbki.org/
編集,発行責任者:細川英雄
    http://www.gsjal.jp/hosokawa/
配信システム:まぐまぐ
    http://www.mag2.com/
────────────────────────────────────
登録,解除の手続きは,               http://www.gbki.org/ 

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