歌舞伎素人講釈

メルマガ「歌舞伎素人講釈」第462号


カテゴリー: 2017年11月19日
*******************平成29年11月19日発行****
      ◎ 
                          ◎  
    メルマガ「歌舞伎素人講釈」  第462号
            連動ホームページ: http://www5b.biglobe.ne.jp/~kabusk/ 
             ◎  
       ◎ 
***********************************

こんにちは、吉之助です。

いつのまにやら秋になってしまいました。遅まきながら先日、新橋演舞場に
行って「ワンピース」を初めて見たので、本号は、その観劇随想です。
「ワンピース」は歌舞伎なのか?なんて、そんなことは吉之助に聞かない
でください。「歌舞伎」なんて云う、一様な演劇様式はないのです。それ
は荒事とか和事とか義太夫狂言とか、いろんな演劇様式を包含した集合体
としてあるものです。これから歌舞伎がどんな形に変容していくかは、そ
れは誰にも分かりません。だから「ワンピース」も歌舞伎なのかも知れま
せん。その可能性が全然ないと思ったのならば、吉之助は見に行きはしな
かったと思います。

ーーー<広告>ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

○お知らせ:吉之助3冊目の書籍本が出ました。。

お手にとってご覧いただき、是非お買い求めください。

「武智鉄二・山本吉之助編 歌舞伎素人講釈」

すべて「武智全集」未収録の論考です。吉之助が解説を付しました。
伝統とは何か、古典とは何かを考えるのに、最適な入門書です。

アルファベータブックスより全国有名書店にて発売中
価格:2,916円(税込み)

アマゾンへは下記から購入できます。
https://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4865980377/hnzk-22


ーーー<今回の話題>ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

○コスプレの帝国~「ワンピース」

平成29年11月:スーパー歌舞伎2・「ワンピース」
尾上右近(ルフィ・ハンコック2役)他
*市川猿之助負傷休演の為代役

--------------------------------------------------------------------

〇コスプレの帝国・その1

先日吉之助はテレビで初めて知りましたが、世界コスプレ・サミットという
催しがあるそうです。初回が2003年だそうだから、もうかなりの歴史が
あるわけです。その触れ書きに拠れば、

『国内だけでなく、世界中の若者を虜にする日本の「マンガ」「アニメ」
「ゲーム」。そのブームでは、作品を「読む」「見る」「遊ぶ」だけでなく、
作中のキャラクターに「なりきる」楽しみ=「コスプレ」を生み出しました。
そのようなブームのなか、コスプレをして楽しむひとたち(コスプレイヤー)
を通して新しい国際交流を創造するため、2003年日本・名古屋で誕生した
のが「世界コスプレサミット(通称:コスサミ、WCS)」です。』

世界コスプレ・サミット公式サイト
http://www.worldcosplaysummit.jp/2017/

コスプレ・サミットは今年は世界30ヶ国からの参加チームがあって、大い
に盛り上がったそうです。門外漢の吉之助は、コスプレというのはオタクさ
んの密かな淫靡なお楽しみというような先入観がありましたが、どうもそう
いうものではなさそうです。コスプレ・サミットに参加するには、衣裳・化
粧をそれらしく凝らすだけでなく、決められた時間内でアニメ・ゲームなど
原作の世界観をどう表現するかとか、ストーリー性・構成力・演技力が問わ
れます。そのような細部にまで徹底的にこだわるのがオタクのオタクなる所
以なのだそうで、みんな結構アッケラカンと楽しそうにやってました。

吉之助なんぞはすぐ、こういうのは「現実から逃避して、まったく違う自分
になりたい」という深層願望の表れかなどと考えたくなりますが、まあそう
いうところは確かにあると思いますが、コスプレ・サミットに参加した外国
人の方はそういうことはあまり深く考えてなさそうです。コスプレやってガ
ーッと一気にストレス発散してしまえば、明日からはいつもの生活をして頑
張る元気が出て来ると云う、つまりとても健康的なお楽しみとして彼らのコ
スプレがあるのだということが、吉之助にも何となく理解が出来るようにな
りました。いろんな考察ができるでしょうが、まずはコスプレの「なりきる」
ことのポジティヴな側面を頭に入れておきたいと思います。

この数年日本で異様な盛り上がりを見せている10月末のハロウィン・パー
ティーの仮装も、多分そういうものなのでしょう。それにしても日本のハロ
ウィンは、 ハロウィンの本家らしいアメリカ人が「故国でもここまではやら
ないなあ・・」と吃驚するほどのはしゃぎようであるのは、本来は古代ケル
ト人の収穫祭で行われていたささやかな宗教的行事だったはずのものが、日
本では無礼講の仮装大会に化してしまうと云う、実に日本的な受容のさまで
あって、まことに興味深い社会現象ではあります。こうやって日本人はクリ
スマスもバレンタインデーも自分たちの風俗にしてきたのです。

コスプレに関する社会学の文献などを見ると、日本では江戸時代からお祭り
などで仮装を伴ったものがあり、歴史上の人物や物語の主人公に扮して練り
歩き、ポーズを取って見せたりするということがあったようで、日本にはコ
スプレの伝統みたいなものがあるみたいです。仮装については欧米のカーニ
ヴァルの行列にもあることで、とりわけ日本独特の現象であるとも思われま
せん。しかし、日本の伝統には昔から見立とか本歌取りという楽しみ方があ
って、民衆にそういうものに面白さを見出す文化的素地が元々あったという
ことは云えそうです。現代の「マンガ」「アニメ」「ゲーム」もそういう伝
統に乗ったもので、その延長線上にコスプレ・ブームがあるということは云
えそうです。


〇コスプレの帝国・その2

江戸期の庶民に見立や本歌取りのような知的遊戯が流行ったということは、
当時の日本人が、もちろん生活は決して楽なものでなかったにせよ(当時の
地球は寒冷期にあって 自然災害も多かったので、食糧事情が良くありません
でした)、庶民もそのような知的遊戯を楽しむくらいの気持ちの余裕をちょ
っとだけでも持てていたということなのです。或いは日常にそういう小さな
楽しみを見つけることで庶民はどうにか健気に生きて来れたということかも
知れませんが、しかし、今日生きるのに精一杯という状況下においてはその
ような遊戯を楽しむ余裕さえ持てないのです。恐らく日本というところは、
他地域と比べて地理的にいくらか恵まれてもおり、封建主義・身分制度の時
代とは云え、その格差も他地域と比べればそう極端なものでもなかったので
す。いろんな面で日本はいくらか恵まれていたということなのだろうと思い
ます。

まあコスプレの文化論的考察は深入りするとキリがないので、この位にして
おきますが、コスプレで違う自分に「なりきる」というお楽しみは、この世
の有り様は三千世界の仮初めの姿であるという浮き世の思想にも 重なります。
ここで引き出される重要な考察は、コスプレする前の現実の自分と、コスプ
レして「なりきった」仮初めの自分との関係がフラットであるということで
す。変身がとても軽やかに行われて、「私は・・であり、・・でもある」と
なっているのです。どちらの姿も本当の自分なのです。ですからコスプレと
いうのは、確かに現状逃避みたいな要素もあるかも知れませんが、決して現
状否定ではないわけなのです。だからコスプレのポジティヴな側面というの
は、「なりきる」ことの軽やかさにあると吉之助は思っています。コスプレ
を楽しみ人たちにとって「なりきる」ことは、キラキラ・ワクワクなのです。

吉之助は、このようにコスプレを「なりきる」ことの軽やかさにおいて捉え
ることは、或る意味においてとても現代的な感性であるなあと感じます。
(別稿「伝統芸能の動的な見方について」をご参照ください。)つまりこれ
が 外国人から見たコスプレの感じ方、つまりグローバルな観点であるとも云
えると思います。コスプレ・サミットのサイトでは、「あなたにとって日本
とは?」という質問に対する海外からの参加チームのコメントが載っていま
す。(WCS公式サイトの出場チーム紹介欄をご覧ください)一様に彼らが語っ
ていることは、現代の「マンガ」「アニメ」「ゲーム」のニッポンも大好き
ですが、 ニッポンの伝統的な文化も大好きだということで、最新のものと古
いものが境目なく入り混じってフラットに見えることが、彼らにはとてもミ
ステリアスかつワンダフルなのです。彼らの日本に対するイメージもキラキ
ラ・ワクワクなのが興味深いというか、面映ゆいと云うか。外国の方にはこ
んな風に日本が見えているのですねえ。

世界コスプレ・サミット公式サイト
http://www.worldcosplaysummit.jp/2017/


〇コスプレの帝国・その3

米国の映画評論家ドナルド・リチーがこんなことを書いています。リチーが
云うことは、普通、スタイルというものは、何らかの思考を背景に持つもの
である、ところがこの国ではスタイルの「思考なきイメージ」だけが先行し
ている、それもつい先頃のことではなくて、この国ではずっと昔からそうな
のだということです。これをリチーはイメージ・ファクトリーと呼んでいま
す。リチーの指摘はなかなか面白いところを突いています。

『日本を訪れる者(外国人のこと)の不満は、常に最新のものに取り巻かれ
てしまうということである。(中略)事実、今日では古い日本を目にするこ
とは極めて困難になっている。そんなものはほとんど現存していない。そし
て新しい日本ばかりが目の前に現れ続けることになる。それが今の日本の偽
らざる姿なのだ。五重塔を見に行っても、ポケモンを買って帰る羽目になる
のである。』(ドナルド・リチ―:「イメージ・ファクトリー」、200
5年)

吉之助は先日、新橋演舞場で「スーパー歌舞伎2・ワン・ピース」再演を見
て来ました。吉之助の領域でないということで初演(平成27年10月新橋
演舞場)は見ませんでしたが、大評判で連日の盛況だということを聞いたの
で、話のタネにやっぱり見ておいた方が良かろうと思い直したのです。「ワ
ン・ピース」にとって吉之助が場違いな観客であることは、よく承知してい
ます。頭の古い吉之助には、その前に世界コスプレ・サミットの番組をテレ
ビで見ていたことが、随分と役に立ちました。これは或る意味、究極のコス
プレ歌舞伎ですねえ。席が前売りで売れて当日券がないのか、劇場に外国人
観客の姿がとても少ないのが残念でしたが、コスプレ・サミットの海外参加
チームの面々にこの舞台を見せたら、どんなに感激するだろうと思いました。
コスプレの論理は「私は・・であり、・・でもある」であり、どちらの姿も
本当の自分なのです。これと同じように外国人の目にはニッポンのカブキの、
伝統的な古いところと、最新のところが、境目なく入り混じってフラットに
見えることでしょう。これも今のカブキの一面なのだということ、これは認
めても良いことだと思います。

猿之助が負傷休演であったのは残念でしたが、代役の右近はよくやっていた
と思います。二代目猿翁(三代目猿之助)の歌舞伎は、「同じ舞台にスター
は二人要らない」という考え方で したから、美味しいところは全部猿翁が取
ってしまって舞台に出ずっぱりという感じでした。しかし、「ワン・ピース」
では主役が出っ張らず、多くの役者に各自の見せ場を用意して、どの役者も
それなりに遣り甲斐があるという脚本作りをしており、その辺に猿之助の配
慮がよく表れています。これならば猿之助を慕う若手が多く出て来るのは、
当然のことだと思います。みんな生き生きやっていますね。古典歌舞伎をや
る時に、その生き生きを少しでも持って来てください。

吉之助は猿翁の「スーパー歌舞伎・ヤマトタケル」は初演(昭和61年2月
新橋演舞場)は見ましたが、それ以後はお付き合いしませんでした。しかし、
「ヤマトタケル」は現在も上演され続けています。これについては吉之助は
自らの不明を恥ねばならぬかも知れません。「ワン・ピース」についても、
今後、吉之助はお付き合いせぬと思いますが、「ワン・ピース」も30年後
もやっているかも知れません。吉之助が思うには、「ワン・ピース」を今後
上演を続けるであれば、タカラヅカが「ヴェルサイユのばら」でオスカル編
とかアンドレ編とか色々ヴァージョンを変えて今も上演していると思います
が、「ワン・ピース」も原作のエピソードを様々にアレンジしていろんなヴ
ァージョンを作れるであろうから、シリーズ物にした方が良かろうと思いま
す。それにしても演舞場へカブキを見に行ったはずが、タンバリンを買って
帰る羽目になるというのもカブキ体験の一興ということで、これも宜しいこ
とかなと思います。


--------------------------------------------------------------------- 
○メルマガ「歌舞伎素人講釈」 不定期発行 
○発行人:吉之助 http://www5b.biglobe.ne.jp/~kabusk/ 
このメールマガジンは、下記のシステムを利用して発行しています。登録の
解除・変更は下記にてお願いします。 
 「まぐまぐ」 
http://www.mag2.com/ (マガジンID: 0000057141) 
○ご感想・ご要望などは、下記にお寄せください。 
kabuskm@mail.goo.ne.jp 
--------------------------------------------------------------

歌舞伎素人講釈

RSSを登録する
発行周期 不定期
最新号 2017/11/19
部数 648部

このメルマガを購読する

ついでに読みたい

歌舞伎素人講釈

RSSを登録する
発行周期 不定期
最新号 2017/11/19
部数 648部

このメルマガを購読する

今週のおすすめ!メルマガ3選

川島和正の日刊インターネットビジネスニュース
■読者数32万部超、日本一の個人メルマガ(まぐまぐ総合ランキング調べ) ■9年連続で年収1億円以上になり、70か国以上を旅行して、 190平方メートルの豪邸に住んで、スーパーカーに乗れるようになり、 さらに、著書は、日本を代表する超有名人2人に帯を書いてもらい、 累計50万部のベストセラーとなった、現在香港在住の川島和正が、 最新のビジネスノウハウ、自己啓発ノウハウ、健康ノウハウ、恋愛ノウハウ さらに「今チェックしておくべき情報リスト」などを配信中!
  • メールアドレスを入力

  • 規約に同意して

右肩下がりの時代だからこそ、人の裏行く考えを【平成進化論】
【読者数12万人超・日刊配信5,000日継続の超・定番&まぐまぐ殿堂入りメルマガ】 ベストセラー「仕事は、かけ算。」をはじめとするビジネス書の著者であり、複数の高収益企業を経営、ベンチャー企業23社への投資家としての顔も持つ鮒谷周史の、気楽に読めて、すぐに役立つビジネスエッセイ。 創刊以来14年間、一日も欠かさず日刊配信。大勢の読者さんから支持されてきた定番メルマガ。 経験に裏打ちされた、ビジネスで即、結果を出すためのコミュニケーション、営業、マーケティング、投資、起業、経営、キャリア論など、盛り沢山のコンテンツ。
  • メールアドレスを入力

  • 規約に同意して

【六単塾】1日数分で英単語・英文をあきれるほど覚える方法
「英語をやり直したいけど面倒なことはしたくない」「英会話したいけど時間がない」「TOEICスコアが急に必要になった」そんなあなたに。1日10分、たった6単語で英語が話せるようになるためのメルマガを1日1通お送りします。登録は2秒で終了。今すぐ登録してくださいね。
  • メールアドレスを入力

  • 規約に同意して

今週のおすすめ!メルマガ3選

井出ひろゆき 最速不動産オーナーへの道
日本で唯一の不動産満室コンサルタント。 普通の人を不動産オーナーにする スペシャリスト&不動産オーナーに満室コーチング行い、 口コミで無料面談は、常にキャンセル待ち状態。 30代OL、   90日で家賃年収756万円。 40代会社社員 150日で家賃年収1586万8000円。 過去最短でコンサル開始後144日で 20代高利回り2棟家賃年収1456万8千円を記録!!
  • メールアドレスを入力

  • 規約に同意して

首都圏不動産インサイドニュース
不動産業者がゼッタイ言わない最新の業界ウラ事情をリアルタイムで暴露します!!不動産投資で儲けよう!と意気込んでいるあなた。家族を守り夢を叶える手堅い不動産投資ですが数億円の借金を負う100%自己責任の事業。海千山千の業者相手に知識武装は万全ですか?「まかせっぱなし」は命取りです。かく言う私も業者ですが、不動産に携わる者として不幸な投資家さんをゼロにしたい。本気です。業界経験13年のプロとして真実だけをお伝えします。業者と対等な立場で戦ってください。決して損はさせません。村上しゅんすけ
  • メールアドレスを入力

  • 規約に同意して

ダメおやじの全財産をかけた崖っぷちFX通信
【1日に数万人が熟読する人気FXブログのメルマガ版】 相場歴30年以上のダメおやじがFXノウハウを大公開! 毎朝配信!毎日の経済指標情報や攻略法を無料で解説しています。 ●損切りがうまくできない、利食いが浅い ●ポジポジ病(ポジションを不要に持ってしまう) ●コツコツドカーン(小さく勝っても大きく負ける) ●エントリータイミングわからない ●メンタル面が弱い このようなお悩みがあれば購読してみてください。 FX初心者から経験者まで、FXの悩みをこのメルマガで解消します。 期間限定でメルマガ内で数万円相当分のFX情報商材をプレゼント中!
  • メールアドレスを入力

  • 規約に同意して

アーカイブ

他のメルマガを読む

ウィークリーランキング