ほぼ日刊日々是映画

[ほぼ日刊日々是映画] vol.2962 ★ 娘・妻・母


カテゴリー: 2015年11月26日
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                         -vol.2962-
  ほぼ日刊 日々是映画         発行:cinema-today
                http://www.cinema-today.net/
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2962号です。

原節子さんが亡くなっていたそうで、もちろんリアルタイムでは
無いですが、たくさんの名作を見てきたので、ああそうか、と
思いました。

原節子さんは特にそうですが、昔の映画を見たことがある人で
ないとピンと来ない名優というのがものすごくたくさんになった
んだなと。日本映画の黄金期がもう50年も前の事になったわけ
ですから当然といえば当然ですが、その頃の作品はいま見ても
面白いものが多いわけなので、知らないのはもったいないなぁと
思いました。

いま、日本映画は(興行的に)好調と言われますが、中には
クソみたいな(失礼)作品もたくさんあるので、ハズレ無しに
いい映画が見たいなら、60年代あたりの作品にあたってみるのが
やはりいいのかなぁと思いました。

そんな中から今日は、個人的には傑作だと思っている、成瀬巳喜男
監督の『娘・妻・母』を。
原節子さんはもちろん、高峰秀子さん、杉村春子さん、
淡路恵子さんなど亡くならててしまった名優がたくさん出てきます。




■ 今日の映画 - 娘・妻・母


<1行コメント>
社会の変化と様々な女性の生き方、キーワードは「お金」


--cinema-revival------------

 娘・妻・母

 1960年,日本,123分

-----------------------

<キャスト&クルー>

監督 成瀬巳喜男
脚本 井出俊郎 松山善三
撮影 安本淳
音楽 斎藤一郎
キャスト 原節子
     高峰秀子
     草笛光子
     森雅之
     宝田明
     三益愛子
     団令子
     淡路恵子
     仲代達矢
     杉村春子
     中北千枝子
     加東大介
     笠智衆
     
<評価>

☆☆☆☆1/2(満点=5)


<レビュー>

東京の坂西家には、母のあき、雄一郎と和子の長男夫婦に
その息子、さらにぶどう酒会社に勤める末娘の春子が住ん
でいる。今はそこに日本橋の旧家に嫁に行った長女の早苗が
やってきていた。坂西家にはさらにカメラマンの次男・
礼二、お嫁に行った保母の薫と5人の子供たちがいた。
そんな坂西家に連絡が入り、早苗の夫が旅行中のバス事故で
亡くなったという…

原節子をはじめとした豪華な女優陣で、女と家族の関係を
描いた力作。それぞれの女性がそれぞれの生き方を見事に
演じ見ごたえのある作品になっている。


『娘・妻・母』というタイトルからもわかるように、成瀬
得意の女性を主人公にした物語であり、女性が娘から妻、
母へと立場を変えることで、どのように変わっていくのか、
そしてその立場というものが時代の変化に伴って、どう
変化していくのかということを描いた物語である。が、
そんな「女」の物語である以前にこの映画は「お金」の
物語である。

この映画は、投資信託というお金の話から始まる。そして、
早苗の夫が亡くなったところでも、香典の金額の話が話題に
上る。そして映画が進むにつれて、遺産分配の話、借金の
話などとにかくお金の話が中心になるのだ。これはすごく
珍しいのではないかと思う。とくに成瀬は他の作品で
「お金」に焦点を当てるということはあまりなかったように
思うからだ。

しかし、この映画が描こうとしていることの一つは時代の
変化であり、お金はこの時代の変化というものに大きく
かかわってくる。この映画が作られたのは1960年、高度
経済成長が本番になるのはまだだが、とりあえずお金が
ものをいう時代になって言ったことは確かだろう。この
映画の底流に流れるのは、お金さえあれば女性も男性と
る程度は対等に渡り合っていけるという思想ではないか
と思う。

だから、女性に焦点を当て続けてきた成瀬がお金に焦点を
当てたのではないか。お金がそれぞれの女性にどのように
作用するかを描くことで、この時代の女性像を浮き彫りに
しようとしたのではないかと思う。

原節子演じる長女・早苗は基本的にお金に無頓着である。
末娘の団玲子演じる春子に対して時代の違いをとつとつと
語るところからも感じられるように、自分は旧時代の女で
あると考えていて、家族のために自己を犠牲にすることも
いとわないし、お金を手にして男性と渡り合おうなどとも
考えていない。

草笛光子演じる次女・薫は現代的である。姑に文句を
言われながらも仕事を続け、すべてをすっきりと割り切っ
ているような気がする。お金に関しても自分のお金は
自分のお金、がめついわけではないのだが、自分の権利を
しっかりと主張するという感じである。おそらくこの薫が
時代を象徴する新しい女性として描かれているのでは
ないだろうか。末娘の春子こそがそうなのかとも思うが、
子は遊撃手としてそれぞれのキャラクターを浮き立た
せる存在であるように思える。 

この作品が面白いのは、時代を映す鏡がそんな三姉妹
だけでとどまらないことである。2人の嫁、そして老齢に
差し掛かる母、薫の姑とさらに4人の女性にそれぞれ
異なるキャラクターを当てている。高峰秀子演じる長女の
嫁・和子は早苗と同様に旧時代の女性として登場するが、
特徴的なのは夫と子供の三人でひとつの完全に閉じた
関係を作り上げているということだ。この映画は坂西家
という1つの小宇宙を描いた映画だということができるの
だが、その中でこの3人だけは別の小宇宙を作っている。
和子は嫁として坂西家に入ってきたわけだが、その家族
関係を切り崩し、別の形に変えた。和子は行動によって
その家の中での自分の重要性を築き上げ、しかし表面上は
控えめに振舞う。お金の面でも夫と協調し、夫を動かし
ながら、実は財布の紐を握っているのかもしれない。
問題はそう単純なものではないのだが、とにかく、この
和子のありようは作品において非常に重要なものだ。
なかなかわかりにくい存在なのだが、それによって映画に
深みが生まれるというか、いろいろと捉えようが出てきて
面白い。

さらに淡路恵子演じる次男の嫁・美枝は薫とは別の形で
新しい時代を象徴しているようにも思える。坂西家の
母・あきと、薫の姑・加代は親子関係の変化を示唆する。
核家族化の中での嫁・姑の問題もそうだし、老人ホームも
出てくる。 

『娘・妻・母』というタイトルがピタリと来るさまざまな
女性の生き方に、さらにお金の問題を絡め、さらに
ここには書ききれなかったさまざまのエピソードを
からめて、重層的に日常を描いた味わい深い作品である。
何度も繰り返し観たい作品だと思う。


原節子が出演した成瀬巳喜男作品は他に『めし』と
『山の音』がある。


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