ほぼ日刊日々是映画

[ほぼ日刊日々是映画] vol.1222 ★ 柔らかい肌


カテゴリー: 2004年06月04日
=====================================================2004/6/4==
                          -vol.1222--
  ほぼ日刊 日々是映画           発行:cinema-today
                  http://www.cinema-today.net/
             http://cinema-today.hp.infoseek.co.jp/
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1222号です。

東京はここ数日とてもよい天気です。
日陰なんかにいれば涼しいくらいで、まさにいい気候という感じですね。
こんなときに、行きたいところといえばべたべたながらオープンカフェ。
パリの、公園かセーヌ川を見渡せるカフェのイメージで、
ゆるりとビェール(ビールじゃなくてね)なんぞをのみたいですね…

パリのカフェといえば、朝日新聞にパリで哲学カフェが流行っている
なんていう記事が載っていました。フランス人といえば議論好き、2人
集まれば哲学的な議論が… なんてのはロメールの映画なんかにも頻出
するわけですし、フランス革命もカフェでの議論から始まったといいま
すから、もしかしたら新たな革命の予兆? そんなわけはないか。
とりあえずロメールが見たくなってきました。いまコレクションDVD-BOX
というのが発売されていて、全4巻の2まで出たんです。ほしい…
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さて、ロメールを見たくなってしまったのですが、なんとなくトリュフォー
でもと思ったので、ちょっとトリュフォーを見ます。今日(ちょうど今)
『大人は判ってくれない』をBSでやっているはずだし。トリュフォーも
特集していこうかなぁ。
という「柔らかい肌」です。


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--cinema1215------------------------------------------
柔らかい肌
Le Peau Douce          1963年,フランス,118分
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<キャスト&クルー>

監督 フランソワ・トリュフォー
脚本 フランソワ・トリュフォー
   ジャン=ルイ・リシャール
撮影 ラウール・クタール
音楽 ジョルジュ・ドルリュー

キャスト ジャン・ドザイー
     フランソワーズ・ドルレアック
     ナリー・ベネデッティ
     サビーヌ・オードパン


<評価>

☆☆☆1/2(満点=5)


<プレヴュー>

 文芸評論家のラシュネーは講演のためリスボンに行く。友人の車でぎりぎ
りに空港に着いた彼は何とか飛行機に乗せてもらい席につく。そこで見かけ
たスチュワーデスの二コールをホテルで見かけたラシュネーは彼女を食事に
誘い、帰国を延ばしてまでも彼女との時間を過ごす。そして、帰りに飛行機
で彼女の電話番号をもらい、その逢瀬はパリでも続く…
 トリュフォーの4作目の長編作品は、不倫を題材にして、恋とサスペンス
というトリュフォーらしい題材を扱って地味ではあるが観客をひきつける仕
上がりになった。



<レビュー>

 トリュフォーは言葉に頼ることなく、心理を描写していくのが絶妙にうま
い。とこの映画を見て思った。ランスの町でうるさく付きまとう友人に大し
て感じるラシュネーの苛立ち、妻に電話したいというラシュネーの気持ちを
察してしまうニコールの戸惑い、そのような気持ちが画面からあふれ出るよ
うに見えてくる。
 それは、表情や体の所作のタイミング、間の取り方によって実現されてい
るわけだが、とくに正面からじっと見据えるように捉えられたラシュネーの
表情が印象的だ。人間の心理とは(映画的には)言葉に頼らずとも表現でき
るものだ。そんなことを感じた。
 だから、非常に静かで動きが少なくとも、映画に引き込まれてしまう。物
語だってたいした物語ではないのだが、映画の表面には表れない(あるいは
染み出すように表れてくる)心理の行き来を見ていると、どんどんと映画に
引き込まれていってしまう。それはもしかしたら、トリュフォーが敬愛して
やまないヒッチコックの影響なのかもしれない。ヒッチコックはサスペンス
というジャンルではあるけれど、人の心理をスクリーンの上に刻み、それで
サスペンスを盛り上げた作家であったのだとトリュフォーを見ながら気づく。
トリュフォーはヒッチコックの心理描写の見事さに敬服し、それを学び、自
分なりの方法でそれを実現しようとしていた。この作品を見ると、そんなト
リュフォーの映画に対する真摯な姿勢が見えてくるようである。

 そのように、トリュフォーらしいまじめさが見えてくる作品だが、物語の
ほうはたいした話ではない。ただ3人の男女の三角関係を描いただけであり、
よくある不倫の話である。
 しかし、その当事者の3人それぞれが簡単には割り切れない心の持ちよう
でいるところが面白い。おのおのが自分自身の心情を処理しきれず、相手に
それを預けてしまう。自分の処理しきれない気持ちを相手に委ねてしまって
相手に依存する。ラシュネーが特にそのような傾向を持っている。そのこと
によって生じる軋みが彼らをすれ違わせ、物語をある種の悲劇へと導く。
 結末を見れば悲劇的ではあるが、しかしこれは悲劇なのであろうか。この
物語は悲劇と呼ぶにはあまりに日常的過ぎる。決して互いを理解し得ない人
間は常にこのような悲劇と隣りあわせで生きている。極端にしてしまえばこ
の物語のようになってしまうわけだが、このようなすれ違いは日常にあふれ
ているのだ。
 そのような日常の軋みによって生まれた、当たり前の生活の間隙からひょっ
こりと狂気や暴力が飛び出してくる。そのことによって事件が起こってはじ
めてそれは悲劇と呼ばれる。悲劇があるから事件が起こるのではない。事件
が起こったからそれは悲劇なのだ。
 それはあらゆる悲劇に当てはまる真理なのかもしれないと思う。『エレファ
ント』に取り上げられたコロンバイン高校の銃乱射事件もそのような暴力の
極端な発露なのではないだろうか。



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