山崎拓の時々刻々

【山崎拓 207】 加藤紘一先生の弔辞ついて


加藤紘一先生が9月9日午後0時45分に逝去されました。
9月15日正午から青山葬儀所で「自由民主党・加藤家 合同葬」が行われ、弔辞を述べました。
以下は、全文です。

弔辞
終生の畏友加藤紘一君の御霊前に額づき心からなる追悼の言葉を申し上げます。

去る九月十日夕刻君の訃報に接し、正直覚悟はしていたものの遂にその日が来たかと深い哀しみに襲われました。一昨年六月ミャンマーの旅から帰国後病床にあると聞いて何度か御見舞いに行こうと試みましたが、面会謝絶とのことで果たせず、焦燥の思いでした。
とりわけ僕はこの二年程前から講談社からの奨めで『YKK秘録』の出版を思い立っておりましたので、その記述の内容について主役である君の諒解を得る必要があり、その機会がなかなか得られず困却しておりました。結局もう一人の主役である小泉純一郎君をはじめ拙著の登場人物のどなたにも了解を得る礼を欠いたままの出版となってしまいました。この機会に改めてお許しを乞います。

僕はこの本の中で僭越ながらYKK時代と勝手に称しましたが“YKK”というネーミング自体が君の発案であり、今の政界には見られないような躍動感のあるYKK時代というものがあったとすれば、それは全て君の書いた脚本を君自身が演出したものであります。僕など脇役の一人として只管(ひたすら)追随しただけであります。
若手政治家約九十名を結集させたグループ新世紀の結成や小選挙区制度の導入反対等YKKの連帯による政治行動は時の政治にダイナミズムを与え、強が上にも(いやがうえにも)国民の政治に対する興味と関心を惹起したことは間違いありません。正に君の政治的レガシーの一つであると思います。

君と僕は一九七二年十二月十日投票の第三十三回総選挙で初当選した三十六名の同期の桜です。君とは年齢が近いこともあってすぐに仲良くなりました。君は東大法学部卒業・外交官試験に合格した類い稀なる秀才です。一方の僕は早稲田大学で柔道三昧の学生生活を送った文字通りの体育会系出身でした。我々二人の結びつきは材質の異なった合板のようで却って強靭な友情が生まれたのかも知れません。

僕が三歳年長でしたが、僕は君に兄事しました。君は常に僕よりも先行しました。内閣官房副長官、防衛庁長官、自民党政調会長、自民党幹事長、全て先輩として手ほどきをしてくれました。
僕が中曽根内閣の官房副長官を拝命した時です。君は僕に対し総理大臣随行の外遊の際には主要国首脳会談後の同行記者団に対するブリーフィングの役割は決して外務官僚に委せてはいけない。党人派の副長官は得えてして面倒くさがって自分でやろうとしないが、君は自分でやらないといけない。少しやばいと思うかも知れないが大事なことが国民に伝わらない恐れがあるし、君の政治家としての訓練にならないよとアドバイスされました。
僕は君のように語学が達者でないので自信がありませんでしたが、当時まだ四十八歳なのに補聴器まで買ってその役割を全う出来るように努めましたよ。君の語学力は抜群で英語力のみならず中国で北京大学の学生に、一時間にわたり北京語で講演したと聞きました。その事実も含めて君が日中友好増進に努めた功績は誠に大きいと確信しています。

二年前君がミャンマーに旅立つ直前に赤坂で天ぷらそばを食べましたね。その時僕はずっと懐疑的に思っていたことを思い切って聞きました。それは「君は本当に憲法九条改正に反対か」という問いでした。君は「うん」と答えました。「一言一句もか」と又聞きました。「そうだよ。九条が日本の平和を守っているんだよ」と断言しました。振り返ってみるとこれが君の僕に対する遺言でした。正に日本政界最強最高のリベラルがこの世を去ったという思いです。

最後に、いわゆる加藤の乱については「あれは一度も止めなかった僕が悪かった。すまん」という他(ほか)ありません。

少し長くなりましたが、しかし少しも言い尽くせていません。わが国に健全保守勢力を築く君の後進が育つことを祈りつつ、かつ愛娘(まなむすめ)加藤鮎子代議士が大成されることを期待して、お別れの言葉と致します。

親愛なる紘ちゃん、何れ近い将来僕も君のいるところに行くことになります。又酒を汲み交わし、君が得意な歌を存分に聞かせて下さい。
さようなら。
平成二十八年九月十五日
(元自民党副総裁)山崎 拓


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