安心!?食べ物情報

安心!?食べ物情報 Food Review 967


カテゴリー: 2018年06月03日
安心!?食べ物情報967号
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--安心!?食べ物情報--Food-Review-----------------------------
-------------------------------------967号--2018.06.03------
--〔今週の内容〕--------------------------------------------

「ニュースから」「マイコプラズマ・ボビス」

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--〔話題〕--------------------------------------------------

 まずは食中毒ニュースから。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

■長浜の特養で52人食中毒 給食業者、営業停止

 滋賀県は28日、長浜市の特別養護老人ホーム2施設で、入所者
と職員の計52人がウエルシュ菌による食中毒を発症したと発表し
た。長浜保健所は、施設で22日に提供された給食が原因と断定。
調理をした「ミールサービスたにぐち」(長浜市)の2施設の担当
店を29日から3日間、営業停止とした。

 県によると、発症したのは75~100歳の男女50人と、いず
れも36歳の男性職員2人。全員が快方に向かっている。22日は
昼食にカレーなど、夕食にオムレツなどが提供されていた。

 ウエルシュ菌は酸素のない所でも増殖する。大鍋で調理し放置す
ると、鍋底近くで増殖することがある。給食施設で発生しやすいこ
とから「給食病」の異名もあるという。

http://www.chunichi.co.jp/s/article/2018052890202015.html
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 この場合はカレーが原因食なんでしょうね。ウエルシュ菌に関し
ては、大鍋で煮込んだ料理がかえって危ない……というのは意外と
知らない人も多いです。

 次は前回に続いて「生食用鶏肉」という概念について。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

■減らないカンピロ食中毒 その鶏肉、本当に「生食用」ですか?

(略)

 原因は何か。飲食店が仕入れる鶏肉は、生食を前提としたものが
わずかに流通する南九州の一部地域を除いて、ほぼすべてが加熱用
だ。それを、刺し身やたたきなど生や半生で供する飲食店が後を絶
たないのだ。

 そこで厚労省は29年、食鳥処理業者や卸売業者に対して、飲食
店に卸す鶏肉に「加熱用」と表示するよう要請。鶏肉を生で供する
飲食店に、十分な加熱の必要性があることを認識してもらうのが狙
いだ。

https://www.sankei.com/premium/news/180531/prm1805310004-n1.html
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 記事の前半では鶏肉の生食が危険である、という普通の論調なの
ですが最後の方で「生食を前提とした」鶏肉という話が突然出てき
ます。

 不思議に思って調べてみると、本当にあるのですね。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

鹿児島郷土料理
鶏刺しは鹿児島の伝統的な郷土料理です。

 生食用と肉質にこだわり30年ー。清らかな水と自然豊かな環境で
自家飼育しています。

 今では稀少で手間のかかる「外はぎ手法」で処理していますので、
衛生的で安心してお召し上がりいただけます。

http://hayamizukeinikuten.com/index.php
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 しかし、この鶏肉店の「生食用」は勝手に名乗っているだけのよ
うです。

 そもそも「鶏肉は加熱して食べる」のが原則だと衛生管理当局が
言っている以上、「生食用」の基準も認証もあり得ません。

 サイトにはこんなエキスキューズも掲載されています。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

■生食の自己責任について

 最近お客様から生食に関する安全性の保証を求められるお問い合
わせが多くあります。早水鶏肉店では郷土料理である生食用に拘っ
てきましたので、食中毒の原因となる「細菌」や「ウイルス」を排
除するため、手間のかかる『外はぎ』処理に加え、使用する俎板や
包丁をはじめとするすべての機材は使用前後に熱湯消毒を徹底して
おり、創業以来30年間、店頭販売による食中毒は出していません。

 昨今、中間業者を流通する食材の取り扱い問題では、食肉を取り
扱う方の意識や衛生環境が原因となった食中毒が発生し報道されて
おりますように早水鶏肉店の手元を離れた時からの取り扱いが解ら
ない状態で最終的な保証までを当店で負うことは出来ない状況もあ
り、お問い合わせ頂いた際のご回答は『自己責任』と言わざるを得
ない事をご理解いただきますようお願いいたします。

 早水鶏肉店の系列店であります大阪の飲食店『ちゃこ』では、鳥
刺し専用の俎板や包丁を複数用意して使い分け、毎日開店前と閉店
後に熱湯を使った洗浄や天日干しなどを併用し、徹底した除菌作業
をしていることを確認していますが、お買い求めいただくお客様で
の御取り扱いや衛生状態までは解りませんので、保証が難しいのが
実情としてございます。

 各お客様に於かれましても、当店の鶏肉を処理されます際には清
潔な俎板や包丁などをお使い下さいますようお願いいたします。鶏
刺しに限らず、肉を生で食す事は少なからず食中毒の危険を伴いま
すので、気になるお客様や免疫の弱いご高齢やお子様がいらっしゃ
るお客様につきましては、表面をバナーなどで炙る、軽く熱湯にく
ぐらせたあと素早く氷水で冷やすなどの処置をしてからご賞味くだ
さい。

http://hayamizukeinikuten.com/Page16JS.php
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 したがって、この業者の「生食用」は何ら根拠がなく、一部に生
食用の鶏肉があるように書くのは間違いである、ということです。

 新聞記者たるもの、パッケージに書いてあれば「生食用」だと理
解してしまうとは情けない。それが本当かどうか調べてはいかが?

 さて、外国人労働者に関して、こんなニュースがありました。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

■外国人の「単純労働者」を受け入れへ
人手不足に直面し、政府が政策を「大転換」、

●建設、農業、宿泊、介護、造船が対象

 深刻な人手不足に対応して、政府が外国人受け入れ政策を「大転
換」することが明らかになった。これまで「単純労働」とされる分
野での外国人就労は原則禁止されてきたが、新たな在留資格を創設
して、そうした分野でも「労働者」として正式に受け入れる。6月
中にも閣議決定する「経済財政運営の基本方針(骨太の方針)」に
盛り込む。

 新制度は、日本人の就労希望者が少なく、慢性的な人手不足に陥
っている「建設」「農業」「宿泊」「介護」「造船」の5分野を対
象に、新設する「特定技能評価試験」(仮称)に合格すれば就労資
格を得られるようにする。こうした分野ではこれまで便法として
「技能実習制度」を使った事実上の就労が広がっていたが、真正面
から「労働者」として受け入れる。今年秋の臨時国会で法律を改正
し、2019年4月から実施したい考えだという。

 就労資格を得られるのは最長5年とするが、技能実習生として最
長5年滞在した後、新たな就労資格を得れば、10年にわたって滞在
できるようになる。企業からすれば長期雇用が実質的に可能になり、
技術やノウハウの教育に力を入れられる。大学を卒業した「高度人
材」の日本での就職も後押ししていく方針で、日本の職場に本格的
に外国人が流入してくることになる。

 法務省がまとめた2017年末の在留外国人数は256万1848人。1年前
に比べ7.5%、約18万人も増加した。5年連続で増え続けており、25
6万人は過去最多だ。厚生労働省に事業所が届け出た外国人労働者
は約128万人で、これも過去最多を更新している。

 新制度によって政府は2025年までに5分野で「50万人超」の受け
入れを目指すとしている。日本経済新聞の報道によると、「建設で
は2025年に78万~93万人程度の労働者が不足する見通しで、計30万
人の確保を目標にする」という。農業では新資格で2万6000人~8万
3000人程度を受け入れるとしている。すでに介護分野では外国人人
材の受け入れ拡大を始めており、ここでも外国人労働者が増えるこ
とになりそうだ。

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/021900010/053100068/
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 このごろよく「人手不足」と言いますが、正確には「安くて使い
捨てできる」人手が足りないということです。

 今までは「技能実習生」と「留学生の違法労働」でしのいできた
企業が、いよいよ本格的な「安くて使い捨てできる外国人労働者」
を求めているようです。

 私は外国人労働者そのものには反対ではありませんが、その待遇
は「日本人労働者と同等かそれ以上」であるべきと考えます。

 この条件があれば、奴隷労働の獲得を夢見る悪徳業者は一斉に退
散するでしょう。

 最後は既に何度も書いている件の「恥の上塗り」です。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

■北海道と鹿児島、実質ゼロ=来期の小型クロマグロ枠-水産庁

 水産庁は31日、水産政策審議会(農林水産相の諮問機関)の分
科会を開き、7月に始まる来期の小型クロマグロ(30キロ未満)
漁の都道府県別の漁獲枠について、北海道と鹿児島県は実質ゼロに
する方針を明らかにした。今期(昨年7月~今年6月)の水揚げ量
が既に配分枠を大きく上回っているためだ。

 クロマグロは資源量回復に向け、育成する必要がある小型に漁獲
枠を設けている。今期の定置網漁などを含めた小型の漁獲枠は、北
海道が約112トン、鹿児島が約8トン。これに対し、実際の漁獲
量は北海道が配分枠の7倍、鹿児島が3倍に膨らんでいる。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2018053101196&g=eco
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 そもそも漁業規制そのものが機能していないのに、何を寝ぼけた
ことを言っているのでしょう。

--〔Q&A〕------------------------------------------------

 「安心!?食べ物情報」では、みなさんからの質問を常時受け付け
ています。質問の宛先は

why@kenji.ne.jp

です。いつでもどうぞ。

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今週は休みます。

-〔食べ物情報〕---------------------------------------------
「マイコプラズマ・ボビス」
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 ニュージーランドで大規模な牛の殺処分というニュースがありま
した。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

■細菌感染牛12万頭殺処分 NZ、農家への影響懸念 
2018/5/29

 ニュージーランド政府は29日までに、細菌「マイコプラズマ・ボ
ビス」に感染した牛を殺処分すると発表した。対象は少なくとも12
万8千頭に上る見通し。今後10年間で8億8600万ニュージーランド
ドル(約670億円)を投じて感染の根絶を目指す。畜産は同国の基
幹産業で、農家への影響が懸念される。

 同国では昨年7月にマイコプラズマ・ボビスに感染した牛が南島
の農場で見つかって以降、感染が拡大。AP通信によると、現在全
土の38農場で確認され、既に約2万4千頭が殺処分された。感染す
ると乳腺炎や肺炎などの病気を引き起こすが、牛から人に感染する
ことはないとされる。

 同国には人口の2倍以上に当たる約1千万頭の牛がおり、そのう
ちの約3分の2が乳牛で残りが肉牛。乳製品は同国最大の輸出品と
なっている。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO31082830Z20C18A5EAF000/
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 この件は昨年の夏に初めて報道されています。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

■NZ初、牛の感染病を確認
 2017年07月25日

 第一次産業省(MPI)は7月25日、南カンタベリーの酪農場で、14
頭の乳牛がマイコプラズマ・ボビスに感染したと発表した。

 マイコプラズマ・ボビスは、牛に肺炎や関節炎を引き起こす病原
菌で、ニュージーランドでの感染例は初。人間には感染しないほか、
ミルクやミルク製品の安全性にも影響はないという。

 感染ルートは不明で、調査中。同酪農場にいる他の乳牛150頭に
も感染する可能性があるとして、MPIは現在、乳牛の治療や支援協
力にあたっている。

http://www.gekkannz.net/archives/22745
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 それから今年の三月末の時点では「二万頭」とありますが、それ
から二カ月で六倍になってしまいました。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

■マイコプラズマ・ボビス感染農場の飼養牛2万頭余りを殺処分へ
(NZ)2018-03-30  

 ニュージーランド第一次産業省(MPI)は3月26日、マイコプラズ
マ・ボビス(Mycoplasma Bovis)の感染が確認された28の農場のう
ち、殺処分を行っていない22農場の飼養牛約2万2000頭について、
殺処分を行うと発表した。

 MPIは、殺処分について、2017年10月の段階で感染が確認されて
いた農場の感染牛4000頭余りは、12月までに完了したが、それ以降
は、感染経路が特定されるまで一時的に停止していた。MPIは、201
8年2月以降に全農場で実施した生乳検査の結果、発見されたマイコ
プラズマ・ボビスは全て同じ遺伝子型であったことから、一連の感
染拡大と、感染畜の移動は、密接に関係している可能性が高いとし
て(初発牛への感染経路については、まだ解明されていない)、感
染農場における全頭の殺処分が、牛肉・酪農産業の将来的な信頼回
復のための最善策であるとしている。

 例年、生乳生産年度の終了する5月末に、シェアミルカーの契約
更改に伴う大規模な家畜移動が発生することから、それまでにマイ
コプラズマ・ボビスの根絶を図りたいという意向もあるとみられる。

 MPIが発表した試算によると、殺処分の費用は3500万NZドル(28
億円:1NZドル=79円)、農家への補償額は6000万NZドル(47億円)
に上り、財源はMPIと業界団体が拠出する。現地報道によると、農
家にとっては、単に飼養牛を失うだけではなく、何年もかけて築き
上げた遺伝資源をも失うことにもなるため、経営の再建には時間を
要するとしている。

 NZ全体で搾乳牛はおよそ500万頭、肉用牛はおよそ350万頭が飼養
されており、毎年およそ240万頭がと畜されている。今回の殺処分
頭数は、全飼養頭数の0.3%程度であるが、これほど大規模な殺処
分はNZでは初となる。

 なお、殺処分された牛は、通常の牛と区別なく牛肉として出荷さ
れるが、MPIは、マイコプラズマ・ボビス感染牛の肉を人間が口に
しても、安全上の問題は一切ないことを強調している。

http://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002175.html
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 ニュージーランドではこの殺処分された牛は肉になって市販され
るということですが、いくら合理的な判断といっても、日本だと難
しいでしょうね。

 何か外国で騒いでいるので、その国でだけ発生したものだろう、
と考えがちですが、実は日本にも古くから存在していて、対策もほ
とんど講じられていない、というより検査すらしていないという実
態があります。

 以下はマイコプラズマの解説です。
 
--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 さて、前回重度の慢性肺炎の根底には必ずマイコプラズマ・ボビ
スが関わっているというお話をさせていただきました。それならば、
このマイコプラズマを予防することができれば肺炎の問題はかなり
クリアーできるのではと考えるのは当然の流れとなります。しかし、
このマイコプラズマの感染を防ぐということが非常に難しいのです。

 最初にこの問題を困難にしている原因の一つにワクチンがないと
いう問題があります。たとえば牛RSウイルス、マンヘミア、パスツ
レラ、BVDなどはワクチンが開発されているので何とかワクチネー
ションで病気をコントロールすることが可能なのですが、マイコプ
ラズマは牛用のワクチンがまだありません(H27年11月現在)。つ
まりマイコプラズマにたいする迎撃用ミサイルを準備することがで
きないという問題があります。

 次にこのマイコプラズマは非常に感染力が強く、おまけに爆発的
に増えるので一気に環境が汚染されるという問題もあります。もし
も牧場で発生した場合は相当な覚悟で清浄化を目指さなければいけ
ない疾病なのです。

 ちなみに乳牛の世界では1頭でもマイコプラズマ・ボビスに感染
している乳房炎牛がいた場合は即淘汰です。そのままにしていたら
牧場はとてつもない損害を被ることになります。

 しかし肉用牛の世界では肺炎の検査でマイコプラズマ・ボビスが
検出されても特に症状が出ない場合もあり、そのまま放置されるこ
とがあります。というか、マイコプラズマ・ボビスの検査をするこ
とさえほとんどありません。確かに多くの牧場ではそこまでする必
要はないと思います。でも、大規模牧場であり、なおかつ子牛の中
耳炎やら肺炎で本当に困っている牧場は絶対にこのマイコプラズマ
・ボビスの検査を実施する必要があると小生は確信しています。

 中耳炎や肺炎が多発している牧場ではほとんど100%に近い子牛で
マイコプラズマ・ボビスが検出されるからです。目には見えないけ
ど、すさまじい感染が広がっている。このことをみんなが認識する
こと。すべての予防はここから始まります。

http://www.shepherd-clc.com/archives/8761
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 以下はこの「菌」を研究していた経験のある獣医師の記事です。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

■牛のマイコプラズマ病がこんなにメジャーになっているとは!
2017-09-29

 ところで、標題にあるマイコプラズマ(M)であるが、獣医学関
係者であれば、マイコプラズマは生きた細胞に寄生しなくても、言
いかえれば合成培地で増殖できる最小の微生物であうことをご存じ
であろう。大きく分類すると細菌に含まれるが、より厳密に言うと
細菌とは異なる。ただ、分類学は面白くないのでこれ以上はパス。

 何故、今回は牛のマイコプラズマ病かと言うと、先日読んだ牛の
マイコプラズマ病の文献情報が私の認識を一変させたからである。

 実は、私が学生時代に研究室で格闘していたのが牛のマイコプラ
ズマだった。当時のマイコプラズマの培養や検査は現在に比べては
るかに手間が掛かっており、特に培地の添加物は、市販品で僅かな
予算で買えるものには不純物が多くて使えず、自前で作製しなけれ
ばならなかった。そんなこんなで扱いが難しかった牛のマイコプラ
ズマには愛着がある。ただし、その病原性は弱くて日和見感染菌の
一つ、数ある牛の感染症の中ではマイナーな存在という立場であっ
た。

 ところが、現在、肉牛、乳牛の区別なくマイコプラズマ病が大き
な問題になっている。その疾病は、子牛の肺炎、中耳炎、関節炎、
乳牛の乳房炎で、幾つかある牛のマイコプラズマのうち、 マイコ
プラズマ・ボビス( M.bovis)の感染症の被害が大きい。

 他にも、肺炎ではマイコプラズマ・ディスパー(M. dispar)や
マイコプラズマの1種であるウレアプラズマ・ディヴァーサム
(Ureaplasma diversum)、乳房炎ではマイコプラズマ・ボビゲン
ニタリウム(M.bovigenitalium)やマイコプラズマ・カリフォニカ
ム(M.californicum)も原因菌として上げられる。

 上のマイコプラズマのうち、M.bovisは、私の学生時代にすでに
肺炎や乳房炎から分離されたとの報告がなされており、その頃から
M.bovisだけは他のマイコプラズマと違って僅かではあるが注目は
されていた。

 しかし、ここ10~15年間の研究でM.bovis他の牛のマイコプラズ
マが肉牛農場や酪農場の生産性悪化に重要な役割をしていることが
証明されてきた。さらに興味深いことは、本来マイコプラズマは細
胞寄生細菌であり、呼吸器に感染したマイコプラズマは白血球のう
ちの単核細胞(リンパ球や単球)に感染して牛の全身の臓器に移行
できるということである。なるほど、体外から完全に隔離された関
節にもマイコプラズマが感染して病気を起こせるわけである。

 以上、私が大学を卒業してから、肉牛農場や酪農場において牛の
マイコプラズマ病は最大の悪役の一つになったことを書いた。大し
た病原性もなく世間から殆ど無視されたような牛のマイコプラズマ
に大変な思いをしながら取り組んでいた学生時代を思うと、牛のマ
イコプラズマが、“ある意味でメジャーになった”ことに何となく
誇りを感じてしまう。

https://blog.goo.ne.jp/murakawayasushi3366/e/23f28d80ec192670cea1a7c91c1d5c53
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 以下はかなり学術的な報告です。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

■「Mycoplasma bovis:それは本当に重要な病原体なのか?」

●マイコプラズマは細菌である。ただ、特殊な細菌でもある

 マイコプラズマには細胞壁がなく、リポ蛋白を主成分とする外膜
を持つ。そのため一定の形状を持たず、環境の浸透圧によって形態
が変わる。最初に発見された際には、真菌様の構造に見えたため、
Myco(真菌様)-plasmas、つまりマイコプラズマと名づけられた。

 この細菌は、浸透圧衝撃を回避するために、細胞膜内にステロー
ルを含有している。ポリアミドもまた、細胞膜を安定化し、親水効
果を軽減するために存在している。そして、ウイルス並みに小さく
(0.125-0.82μm)、自己複製が可能な最小の生物でもある。遺伝
情報(ゲノム)サイズも他のバクテリアに比べ非常に小さく、大腸
菌ゲノムの約1/5である。

 マイコプラズマは、染色体喪失により他の細菌、恐らくグラム陽
性菌から進化を遂げてきた。この進化は、細胞壁の合成に影響を及
ぼすDNA断片の欠失を経た、ゲノムサイズの縮小によりもたらされ
たもので、つまりは退行性進化であると言える。結果として、生存
していく上で必要最小限の遺伝子だけを残すことでより効率的な病
原性メカニズムを獲得できたのである。

●マイコプラズマは炎症を惹起して免疫システムに作用する

 マイコプラズマは、糖・アミノ酸に対して遊走反応を持つ上、細
胞骨格線維の存在により運動性も併せ持つ。また、付着器(付属た
んぱく質)が動物細胞への接着を可能にする(シアロ糖複合体)。
移動・接着という能力によって、宿主内で理想的な場所に移動し、
様々な組織に定着できる。

 さらに、多糖類のカプセルが種々のマイコプラズマで確認されて
いる。全てのマイコプラズマが持っているわけではないが、これに
より宿主免疫細胞によるファゴサイトーシスを避けることができる。

 マイコプラズマ・ボビスに関しては、カプセルを分離して牛に接
種すると、毒性ショックのような反応を惹起。循環器の組織、肺な
どに何らかの障害を与えることがわかっている。

 加えて過酸化水素の産生もある。呼吸器器官にあるカタラーゼと
いう酵素は、過酸化水素を水と酸素に分解する。すなわち酸化であ
る。これにより気管や肺胞、また中耳などに炎症が起こりうる。ま
た繊毛の運動障害も起こる。呼吸器にマイコプラズマが入ると、様
々なバクテリアが入ってきた際、繊毛の運動に障害を来たし、そこ
に留まってしまう。

 他の組織への拡散も重要な問題である。数種のマイコプラズマは、
上皮のバリアを通過することができるため、細胞の底部に接着。細
胞膜、気管などでステロールによって、直接細胞に入っていくこと
になる。すなわちマイコプラズマが、呼吸器などの他の器官や、耳、
関節にも見つかるわけである。

 マイコプラズマは単独で病原体になるというよりは、炎症を惹起
してサイトカインを刺激する。それによってマンヘミア、パスツレ
ラといった、他の病原体の増殖を助ける作用がある。他の呼吸器性
の病原体あるいは病原性を制御するための免疫システムが抑制され
るのも問題である。

 マイコプラズマのなかには、アルギニンを破壊したり、代謝した
りするものもある。この代謝競合によって、アルギニン、そして蛋
白が細胞から欠如する。アルギニンが欠如すれば、完全な免疫反応
を維持することが出来ない。この作用がまさにin vitroでの免疫抑
制のメカニズムであると考えられる。

 また驚くべきことに免疫抑制ではなく免疫応答を高めるというマ
イコプラズマもある。アルギニン代謝競合して免疫抑制になる場合
もあるし、ナチュラルキラー細胞に作用して炎症が惹起されること
もある。マイコプラズマ・ボビスに関しては、免疫抑制と免疫応答、
これらの両方の可能性がある。

●薬剤感受性検査を行った上で、効果的な治療を行うことが重要

 通常、マイコプラズマを同定するためにラボは利用されない。通
常の臨床診断や治療で診断されている。もっとも、ラボで実施され
るPCRやエライザ検査でも、マイコプラズマの同定が困難なときも
ある。

 マイコプラズマは、エアロゾルとして吸入、あるいはミルクなど
経口で体内に侵入する。とても小さいものなので、最初の防御線を
通過してしまう。

 容易に吸入され肺に入ってしまうと、鼻や咽頭、気管支や肺にお
いてコロニーを形成する。それからさらに中耳に移り、耳炎を起こ
してしまう。その後に代謝が起こり、過酸化水素が発生して侵襲性
を発揮。他の病原体との相乗作用、そしてアルギニン競合によって
免疫抑制が起こってしまう。

 経口で入った場合、咽頭や扁桃腺を経るが、これらが血中で広が
り、菌血症、関節炎が起こることがある。また、乳腺に入り乳房炎
がみられることもある。過去、アメリカでは、非常に急性かつ悪性
の乳房炎が発症し、多くの牛を屠殺せざるを得なかったことがあっ
たと聞く。このケースではラボの検査が不十分であったうえ、治療
においてもβ-ラクタム系を使用していたようである。マイコプラ
ズマは細胞壁を持たず、β-ラクタム系は効かないのにもかかわら
ず、である。

 マイコプラズマを単独で見出すことは非常に難しく、呼吸器の病
原体として複合感染の原因として見受けられる。だが、ベルギーや
オランダでは、タンクミルクをPCRで検査すると陽性だったという
結果も報告されている。認めにくいことではあるが、マイコプラズ
マはそこかしこに必ずいると思って間違いない。したがって、治療
効果を改善するには、薬剤感受性検査を実施したうえで、最適な抗
菌剤を選択・使用することが重要なのである。

●まとめ

 マイコプラズマは自己複製する最小の細菌であり、退行性進化の
結果として細胞壁を持たない。

 マイコプラズマは大きなDNA断片を消失したが、精密な病原性メ
カニズムを獲得した。

 マイコプラズマ単独を呼吸器病原体と見なすのは難しく、通常は
他の細菌やウイルスとの混合感染である。治療にはこの複合感染を
考慮に入れるべきである。

 子牛の耳炎や関節炎がしばしば起こる農場もある。乳房炎は治療
が難しく、潜在性乳房炎のケースのモニタリングが重要である。

 治療効果を改善するためには、薬剤感受性検査が必要である。

https://www.bayer-chikusan.jp/report/2011/1111-3.html
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

■「ウシのマイコプラズマ感染症」

●ウシのマイコプラズマ感染症の主要な原因微生物はM.bovis

 マイコプラズマは野生動物をはじめとして多くの動物種から分離
されている。イヌやネコなどの伴侶動物の場合、マイコプラズマ感
染症は大きな問題にならないが、ヤギ、ヒツジ、ニワトリ、ブタお
よびウシなどの生産動物の場合、重篤な感染症を引き起こす。

 現在、マイコプラズマは120~130種類が確認さてれているが、そ
れらは動物種に対し、特異的に感染する。ウシの場合、約10種類の
マイコプラズマが感染症に関与しているが、その多くはMycoplasma
 bovis(M.bovis)によって引き起こされる。肺炎、中耳炎および関
節炎だけでなく、現在、最も問題になっている乳房炎などがある。
多彩な病気を引き起こすこともマイコプラズマの大きな特徴である。

 ウシのマイコプラズマ感染症は基本的に一度発症すると治療が困
難となる症例が多い。また、複数の臓器に対して高い定着性を持ち、
血液によりさまざまな組織に移行する。さらには、有効な抗菌薬も
限られており、世界的に増加傾向を示している。

https://www.bayer-chikusan.jp/report/2015/1127-2.html
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 こういう記事を読んでいると、ニュージーランド政府があわてて
いる理由も理解できてきます。

 日本でもかなり深刻な状況と思いますが、何もしなくてよいので
しょうか?

 BSEの全頭検査なんかに注ぎ込んだ金で、こういうものの検査
をしておいた方がよかったのに……と後知恵ですが思います。

--〔後記〕--------------------------------------------------

 「マイコプラズマ」なんて名前だけは知っているというレベルで
したが、案外深刻なものがあるようです。乳牛に乳房炎はつきもの
と思っていましたが、その原因になっているとは。

 いよいよ六月、まもなく今年も半分経過です。そろそろ運転免許
更新にいかなくては……。

 抗ガン剤の点滴が終った直後にクルマを運転して薬局に行くと、
いつも運転して大丈夫?と聞かれます。運転には自信があるなどと
昔の話をしてごまかしていますが、あれは「高齢者の根拠のない自
信」だという話を聞いて、ちょっと反省しています。

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サラリーマン時代に始めた株式投資から株で勝つための独自ルールを作り上げる。2017年、億り人に。 平成24年より投資助言・代理業を取得。現在、著者自身が実践してきた株で成功するための投資ノウハウや有望株情報を会員向けに提供しているかたわら、ブログやコラム等の執筆活動も行う。 2014年まぐまぐマネー大賞を受賞。読者数3万人。雑誌等のメディア掲載歴多数。 主な著書に『10万円から始める高配当株投資術』(あさ出版)『「小売お宝株」だけで1億円儲ける法』(日本実業出版社)
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