紳也特急

紳也特急 vol,214


カテゴリー: 2017年06月01日
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 全国で年間200回以上の講演、HIV/AIDSや泌尿器科の診療、HPからの相談を
        精力的に行う岩室紳也医師の思いを込めたメールニュース!

性やエイズ教育にとどまらない社会が直面する課題を
                                         専門家の立場から鋭く解説。
                    Shinya Express (毎月1日発行)

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~今月のテーマ『子宮頸がんワクチンの普及に向けて』~

●『メールの限界?』
○『自己責任という評価』
●『テロ等準備罪処罰法案』
○『統計を読み解く基本』
●『子宮頸がんの統計を読み解く』
○『思い立ったら吉日HPVワクチン接種制度を』

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●『メールの限界?』
 メールは便利な情報伝達手段ですが、時として相手がちゃんとメールを読
んでいるのだろうかと思うことがあります。次のようなやり取りをどう思い
ますか。

相手:10時の講演開始時間を9時30分に早めることは可能でしょうか。
岩室:時間変更、了解しました。
相手:9時30分から11時40分でお願いします。
岩室:9時30分から11時40分だと中学生にはちょっと長いように思いますが
      いかがでしょうか。講演時間1時間30分+質問(これは続く限り応え
      たいと思います)でいかがでしょうか。
相手:講演を1時間30分でお願いします。始まりは9時30分からで大丈夫でしょ
   うか。

 あれ?9時30分スタートは最初に了解したはずだが・・・と思ってしまいま
した。確かに最初に9時30分開始を了解したものの、2時間10分では長いと指
摘され、その枠を変更したのだから講演開始時間もまた岩室が変えることを
撤回したと思ったのでしょうか。私としては順序立てて決めてきたことだと
思っているのですが、一部でも変更になると全てを再確認したくなる時代な
のですね。最近流行りの「全か無か」、「全否定」に通じるものを感じてし
まいました。
 そう言えば総合的な判断ができていないものの一つとして子宮頸がん予防
のためのHPVワクチンだと思わされることが続いています。日本思春期学会の
理事会でも議論が深まらない一方で、講演の中に岩室紳也の考え方を入れて
ほしいといった要望が少なからずあります。でも、そのような要望を出され
る方は「打つべきか打たないべきか」を聞きたいのであって、「ワクチンを
含めた子宮頸がん予防の考え方」を聞きたいのではないようでした。そこで
敢えて今月の話題を「子宮頸がんワクチンの普及に向けて」としました。

『子宮頸がんワクチンの普及に向けて』

○『自己責任という評価』
 今の時代、「評価」という言葉をよく聞きますが、健康づくりに関する評
価には短期的な評価と中長期的な評価に加え、個人の健康状態に対する評価
と集団の健康状態に対する評価という視点が求められています。わかりやす
いのが性感染症です。私が専門としているHIV/AIDSですが、今でも間違った
評価法として、個人の感染を「自己責任」という視点だけで片付けてしまう
人が多いのが現状です。HIV/AIDSの流行が明らかになった時から私は個人の
感染は確かに自己責任ですが、自己責任という考え方で評価を終わらせてし
まうと感染していない人の予防方法も自己責任で終わってしまい、集団とし
て、社会として何をするべきかという発想も、アイディアも生まれないと言
い続けてきました。ところがこの考え方が浸透してこなかった原因が「他人
ごと意識」だと気づくのにすごく時間がかかりました。
 「人は経験に学び、経験していないことは他人ごと」
 すなわち、HIV/AIDSを身近に経験するまでは「自己責任論」に終始し、自
分が経験した人たちだけが身近な問題と感じられるようです。

●『テロ等準備罪処罰法案』
 皆さんは「テロ等準備罪処罰法案」を身近に感じますか。確かに日本でも
オウム真理教によるテロ事件もありましたし、世界では様々なテロが繰り返
されていますので身近に感じている人もいると思います。しかし、自分が取
り締まりの対象者になるかもしれないということを考えている人はいないと
思います。私も次のような経験を重ねているからこそ、今回の法案に疑問を
感じたり、考えたりすることができているように思います。
 大学生の時、学生課の人に「左翼系の団体と関わっているのか」と聞かれ
たことがありました。寝耳に水どころか、政治的な活動にまったく無頓着で、
左翼も右翼もよくわからない学生だったので、何を言われているのかがわか
りませんでした。実は私の車がそのような活動をしている団体の事務所の近
くで確認されたため、どこからか大学に問い合わせがあったようでした。そ
の当時乗っていた車は家庭教師をしながら、月賦(ローン)で買った6年落ち
のサニークーペでした。それを自分が使わないときは仲間が使っていたので
すが、その中の一人がそのような活動に興味があって行っていただけなので、
自分の身の潔白が晴らされたと信じ込んでいました。
 ところが、大学を卒業してしばらく経ってから神奈川県庁の知り合いから
妻に神奈川県警で保健師を探しているので勤めてもらえないかと言われたの
で履歴書を出してお受けしたのですが、全く連絡もなく、「頼んでおきなが
ら失礼な」と思っていました。それから何年かしてから突然「採用」の連絡
があったのですが、結果的にお断りしました。その時初めて私がまだ公安の
リストに残っていたのだと気づかされました。今の時代だとFacebookで何気
なく知らない人の「友達申請」をOKしただけで公安のリストに載ってしまう
可能性も否定できないのです。

○『統計を読み解く基本』
 HIV/AIDSはここ数年という短期間で見ると異性間性的接触も同性間性的接
触もほぼ横ばいです。しかし、長期的な視点で見ると異性間が横ばいになっ
てから既に20年以上経過しています。性感染症は最近減っていると言われて
いますが、淋菌とクラミジアは減っていますが、ヘルペスや尖圭コンジロー
マはずっと横ばいで、梅毒が増えています。さらに淋菌や梅毒は男性が多く、
クラミジアは女性が多くなっています。ヘルペスや尖圭コンジローマはほぼ
同数です。
 このように詳しく紹介したのは、男女の比率や増減の傾向が異なるという
ことは、その性感染症が流行している集団や背景が異なるということです。
昔から泌尿器科医は、淋菌は性産業で流行しているが、クラミジアは素人さ
ん間のフェラチオやセックスで広がっているという印象を持っています。
今回、梅毒だけが急増している状況は、明らかに他の性感染症とは異なる集
団で流行していると考えられます。HIV/AIDSを診療している医者はMSM(男性
とセックスをする男性)間で梅毒が流行していることを実感しています。し
かし、その集団だけだと説明がつかないのが女性の急増です。個人的に相談
を受けていると、性産業に従事している女性の中での感染の広がりがあり、
外国からの持ち込みではないかと考えられます。

●『子宮頸がんの統計を読み解く』
 ここまで、他人ごと意識や統計のことを書いてきたのは、結局のところ自
分の関心事には熱心になるものの、世の中の動きを反映した統計については
よっぽど関心がない限り読み解こうとさえもしないことをお示ししたかった
からです。
 10代の人工妊娠中絶率の推移をこの60年間追ってみてください。1950年代
から横ばい、増加、横ばい、急増、そして2001をピークに下がり続けていま
す。妊娠したということはコンドームを使っていないということで、当然の
ことながらHPVに感染して子宮頸がんを発症するリスクを背負っています。
もちろん全員が発症するわけではありませんが、子宮頸がんの罹患率も同じ
ような傾向で推移すると考えられます。
 25歳から29歳で子宮頸がんに罹患した人は、その10年前、すなわち15歳か
ら19歳の時に感染したHPVが原因で子宮頸がんになったと考えられます。25歳
から29歳の子宮頸がん罹患率をグラフにし、2012年の子宮頸がん罹患率を10代
の人工妊娠中絶率の2002年のグラフにプロットしてみてください。25歳から
29歳の子宮頸がん罹患率の推移が15歳から19歳の人工妊娠中絶率の推移と同
じ傾向で、25歳から29歳の子宮頸がん罹患率のピークが2011年で2012年は低
下するのに対して、15歳から19歳の人工妊娠中絶率は2001年をピークに下が
り続けています。

○『思い立ったら吉日HPVワクチン接種制度を』
 CDCのホームページ(http://ur0.pw/DMxU )にはHPV感染予防にコンドームが
有効だということも書かれていますし、先に紹介した10代の人工妊娠中絶率や
子宮頸がん罹患率の関係を見てもコンドームの有効性は明らかです。もちろん
メルマガで何回も紹介させていただいたように、男性がおちんちんをごしごし
洗うことも重要です。
 これらのことをすべて伝えた後に、でも結局のところコンドームなしでセッ
クスをするとしたら、子宮頸がん予防にはワクチンしかありません。ただ、ワ
クチンがどれだけの持続効果があるかはまだ明確ではありません。いろんな論
文で10年程度は大丈夫だろうと言われているので、15歳で接種すると25歳まで
しか保証できないことになるので、自分がセックスをするかもしれないと思っ
た女性が活用できる「思い立ったら吉日HPVワクチン接種制度」を創設するこ
とを提案したいと思います。まずはしっかりノーセックスやコンドームの重要
性を教え、自分が、お子さんがコンドームなしでのセックスをするかもしれな
いと思ったその時点でワクチンを無料で接種できる制度です。それをしないで
感染したらやはり自己責任でいいのではないでしょうか。皆さん、どう思われ
ますか。
 
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☆岩室先生宛の質問も t.watanabe49@gmail.com 受け付けています。 
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