紳也特急

紳也特急 vol,190


カテゴリー: 2015年06月01日
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 全国で年間200回以上の講演、HIV/AIDSや泌尿器科の診療、HPからの相談を 
        精力的に行う岩室紳也医師の思いを込めたメールニュース!  
  
性やエイズ教育にとどまらない社会が直面する課題を 
                                         専門家の立場から鋭く解説。 
                    Shinya Express (毎月1日発行) 

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~今月のテーマ『ソーシャルキャピタルで他人事意識解消』~ 

○『考えるきっかけ』
●『成功と失敗に学ぶ』 
○『信頼・お互い様・ネットワーク』 
●『お互い様で自分事』 
○『HIVの診療拒否、受け入れ拒否はなぜ起こるのか』

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○『考えるきっかけ』
 今回、岩室先生の話を聞いて、家に帰ってから、生きるということ、AIDSの
こと、友人関係、とにかくいろいろなことを考えました。性についての授業と
聞いていたので、それについてばかりの話だと思っていたので、こんなにいろ
いろ考えることになるとは思いませんでした。たくさんのことを考えるきっか
けを作ってくれてありがとうございました。
 避妊についてですが、失敗したら傷つくのは女性の方だと思っていて、でも
避妊は基本的には男性がするものだと思っていました。傷つくのは自分なのに、
相手任せにするなんておかしな話だと思いました。家に帰ってからまず先生の
HPを見て、YouTubeでコンドームの装着法の動画を見ました。でも、どんなに
しっかり装着したとしてもゴムであるのだから破れてしまうこともあるという
話を聞いてとても怖いなあと思ったし、つければ大丈夫なんて、そう簡単にし
ていいことではないのだと改めて思いました。
 大学生にもなれば付き合っている人がいればその人とセックスするのが当た
り前かと思っていましたが、先生の話を聞いて考え直しました。セックスをす
ると聞いて妊娠したら困るということはいつも思いますが、病気になるかもし
れないということも考えたことはほとんどなかった自分を恥ずかしく思いまし
た。そのうち自分も彼氏とセックスしようと思っていたのですが、ちゃんと話
をして、いろいろ考えてからにしようと思い改めました。純潔でいるのも素敵
ですね。
 とにかく今回は私たちに考える機会をいろいろと与えてくれてありがとうご
ざいました。たくさんのことを真剣に考え、広い友好関係を作り、人間として
も心を病まずに生きていきたいと思います。これからもたくさんの人に先生の
考えを広めていって欲しいなと思います。
 私の話が考えるきっかけになったのをすごくうれしく思いました。
 「エイズは他人事ではない」という言葉をどんなに力を入れて訴えても、
データを駆使して訴えてもほとんどの人の心に響くことなく、他人事意識はそ
のままになってしまいます。しかし、この学生さんのように自分事としてとら
えてくださった理由、原因はどこにあるのだろうかと考えていた時に、陸前高
田市の菅野利尚民生部長が、「岩室さん、ソーシャルキャピタルに関する研究
班の資料を使っていいかな」と声をかけてくださいました。「もちろんOKです
よ」と返事をしつつ、どこに興味を持っていただけたのかを確認したところ、
ソーシャルキャピタルの醸成に他人事意識の解消法のヒントがありました。
 そこで、今月のテーマを「ソーシャルキャピタルで他人事意識解消」としま
した。

『ソーシャルキャピタルで他人事意識解消』

●『成功と失敗に学ぶ』 
 HIVの患者さんの高齢化は今後避けて通れない問題になっています。実際、私
が診ている患者さんでも認知症になり、施設のお世話にならなければならない
方もいらっしゃいます。ただ、医療機関でさえも診療拒否が出る状況の中で、
施設で受け入れてもらう状況をつくることは必ずしも容易ではありません。
幸いにも私の患者さんはある施設では上手に受け入れられた一方で、別の施設
では2回目以降の受け入れを拒否されるという事態になりました。1回目はOK
だったのに2回目以降を拒否された理由を検証してみると岩室自身がソーシャ
ルキャピタルの研究班員であったことを恥じなければならないと反省しきりで
した。
 最初の施設で受け入れてもらう際に、私は講演をするだけではなく、主たる
職員の方と顔が見える関係性を構築し、患者さんの様子を見に直接お邪魔した
りしていました。もちろん、施設で困ったことがあった場合は職員の方が直接
私の携帯やメールに連絡をする体制もとり、実際に何度も電話もメールもあり
ました。しかし、もう一つの施設にはドクターもおり、私が行った研修会を受
講できなかった職員の方にも私の資料を使ってその先生がお話をしてください
ました。そのため、実際に職員の方が私に直接連絡をされることも、私が再度
お邪魔することもありませんでした。このことが結果的に2回目以降の受け入
れ拒否になったと反省しています。

○『信頼・お互い様・ネットワーク』 
 厚生労働省は健康づくり運動を全国的に広めるため、健康日本21(第2次)を
推進していますが、その中で「ソーシャルキャピタルの醸成」を大きな柱とし
ています。ソーシャルキャピタルの日本語訳は「社会関係性資本」ですが、要
は「人と人との絆」や「人と人との支え合い」のことです。ソーシャルキャピタ
ルが醸成された効用として、健康面では健康行動が活発化し、喫煙率が低下し、
自殺も減り、最終的には総死亡率も低下するということが明らかになっていま
す。ただ、東日本大震災の後にさんざん言われた「絆」にしても、正直なとこ
ろ、感覚的にはわかるけど、で、「どうすれば絆が強くなるの?」という思い
はないでしょうか。実はソーシャルキャピタルについても同じような思いを持っ
ている人が少なくありません。ただ、今回、敢えてこのような言葉を紹介した
のは、その理解を通して、健康教育、性教育、他人事意識の解消法などにつな
がるヒントがあったからです。
 ソーシャルキャピタルをわかりやすく言うと「信頼」、「お互い様」の精神、
「ネットワーク」が存在する状況です。先に紹介した私の成功例は、(岩室と
施設の職員間の)信頼と、(エイズ拠点病院と受け入れてくれた施設との間の
役割分担を確認した上での)お互い様の精神と、(それらを可能にする情報
ツールと対面による双方向の)ネットワークの存在があったソーシャルキャピ
タルが醸成されたと言えます。一方で失敗例は、(岩室と施設の職員間の)信
頼を勝ち得る努力不足の結果、(エイズ拠点病院と受け入れてくれた施設との
間の役割分担を確認した上での)お互い様の精神ができあがらないまま、(そ
れらを可能にする情報ツールの活用や対面による双方向の)ネットワークづく
りもされないまま、結果的に「拒否」となりました。

●『お互い様で自分事』 
 他人事意識を解消するにはまずは、相手が抱える課題について「お互い様」
と思えることが大事ですが、そのためには、相手側を「人」として認識する必
要があります。しかし、HIV/AIDSの医学的な説明だけではそこに「人」は存在
しません。私は性教育、エイズ教育では「事例」が大事と言っていますが、結
局のところ病気を抱えた「人」が存在しなければ、聞き手が「お互い様」と思
える状況は作れません。
 その次に大事になってくるのがその話の中に「信頼」が存在することです。
私が「全くバカな患者で、コンドームを使わなければHIVに感染するのは当た
り前だよね」と言えば、私が患者さんに対して「お互い様」も「信頼」もない
ことが聞き手に伝わります。しかし、「岩室紳也が今感染していないのはむし
ろ偶然の状況だった」という思いで、「ここにいる皆様には可能であれば予防
して欲しいし、万が一感染したらもちろん受け入れてあげますよ」と伝えるこ
とで私に対する「信頼」が生まれるようです。先の大学生がいろんなことを考
えてくださるようになったのもこの「信頼」がどこかで生まれ、その結果とし
て「お互い様」と思えたからではないでしょうか。
 大学での講義を実現してくださったのはこの大学の先生と知り合うきっかけ
をくださったあるネットワークのおかげでした。このように「お互い様」、
「信頼」、「ネットワーク」というキーワードを意識し続けることで健康教育
が効果的なものになっていき、そのことをないがしろにするとネットワークが
壊れ、結果的に思いが伝わらず、「知ったことではない」となることを改めて
思い知らされました。

○『HIVの診療拒否、受け入れ拒否はなぜ起こるのか』
 あらためてこの課題を検証すると、診療をしている、受け入れているところ
には「お互い様」、「信頼」、「ネットワーク」が存在し、診療拒否、受け入
れ拒否のところには「お互い様」、「信頼」、「ネットワーク」が存在しません。
このことは別にHIVだけの問題ではなく、障がい者、性的マイノリティーをはじ
め、ノーマライゼーションということが言われ続けている全ての分野に共通し
ています。
 「お互い様」の気持ちが育つには、自分自身が失敗や理解されないといった
辛い思いを数多く経験し、失敗する、辛い思いをする自分という事実を受け入
れざるを得なかった経験を繰り返ししている必要があります。自分自身が失敗
しない、あるいは失敗していてもそのことを無意識の内に自分の意識から消し
去っている人は、失敗する相手を受け入れられないまま、「どうして私が診な
ければならないの」となります。
 最近は人を「信頼」できない時代になっています。私も長く公務員をしてい
ましたが、マスコミだけではなく、選挙でも相変わらず行政叩き、公務員叩き
が横行しています。行政改革、機構改革、政治改革の名の下で、本質を見ずに
目先の自分の業績づくりに一所懸命になっている人があまりにも多いと思いま
せんか。そしてその人たちは結果的に、「信頼」も「お互い様」も「ネットワー
ク」も切り崩しているとしか思えません。ソーシャルキャピタルが醸成された
結果の効用として行政効率や町おこし、防災、治安、防犯の向上にもつながる
ことは明らかになっていますが、その状況に逆行している日本はこのままでは
本当におかしくなることでしょう。
 「ネットワークづくり」の逆がいつも指摘している「関係性の喪失」です。
つながりを拒否する風潮が当たり前になっている今の日本でこそ、ソーシャル
キャピタルの醸成を意識した取り組みが必要なようです。
 これからは他人事意識の解消も、HIV患者さんの受け入れもソーシャルキャピ
タルの醸成と言う視点で推し進めたいと思いました。


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☆岩室先生宛の質問も t.watanabe49@gmail.com 受け付けています。 
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