紳也特急

紳也特急 vol,171


カテゴリー: 2013年11月01日
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 全国で年間200回以上の講演、HIV/AIDSや泌尿器科の診療、HPからの相談を
        精力的に行う岩室紳也医師の思いを込めたメールニュース!

性やエイズ教育にとどまらない社会が直面する課題を
                                         専門家の立場から鋭く解説。
                    Shinya Express (毎月1日発行)

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~今月のテーマ『男は怖い?』~

●『生徒さんの感想』
○『群れない』
●『関係性があっても学べない』
○『男の嫉妬は怖い』
●『わかりにくい名刺』
○『役割が大事』
●『仲間づくりのために』

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●『生徒さんの感想』

★何度も性の講演を聴いてきたのであまりためになることはないと思ってい
ましたが、岩室先生の講演はとてもわかりやすくて、おもしろく、楽しく話
を聞くことができました。質問があります。包茎の状態から皮が完全にむけ
た後もペニスを毎日定期的に洗い続けなければいけないのですか?
 →毎日歯磨きをする理由は「そうしなさい」と言われているからなのでしょ
うか。「朝起きて、歯を磨かないと気持ち悪いから」という感覚がないとし
たら怖いですよね。

★性のことをわかりやすく教えていただき、楽しみながら話を聞くことがで
き、今までで一番わかりやすい講演会でした。『たかが生理、されど生理』
私は今まで生理がくるとイライラしたり、早く終わらないかなぁと思ってい
ました。しかし、先生の話を聞いて、生理がきちんとくることはいいことな
んだと、良い方に受け止められるようになりました。
 →月経教育の歴史は長~いはずですが、なかなか前向きにとらえるための
メッセージが行き渡っていないのですね。

★今日の講演会で一番印象に残ったのは「愛の反対は無関心」という言葉で
す。エイズに感染しないためにも、今日学んだことを守りたいです。
 →相変わらずこの「愛の反対は無関心」という言葉は人のこころをつかむ
ようです。
 こうやって大勢に話し、いろんな反応をもらうと私自身が勉強になるので
すが、その勉強になったことを実践できるかというと、これまた大変難しい
ことだと感じています。私自身、いろんなことを言っていますが、自分自身
がどこまで実践できているかというと反省ばかりです。「コミュニケーショ
ンが大事」と言いつつも、実際には自分自身のコミュニケーション力に反省
する毎日です。なぜ理想どおりにできないのかと考えてみると、どうも自分
の中の「男」が邪魔しているように思えてなりません。
 そして世間では「男」が引き起こす事件が後を絶ちません。大学生の女の
子が振った男に刺殺される事件があったばかりなのに、つい先日も女子高生
が振った男に刺殺される事件がありました。食材偽装事件の多くも男たちが
謝っています。実は被災地でも男たちが問題になっています。皆さんの周り
にも困った「男」はいませんか。メルマガで何度も「男」を取り上げていま
すが、あらためて今月のテーマを「男は怖い?」としました。
 
『男は怖い?』

○『群れない』
 女性はすぐ群れるのに、男性はなかなか群れません。先日も70人ほどが参
加した研修の初日の午後のセッションを担当しました。午前中のオリエンテー
ションと簡単なグループワークの後の休み時間に教室に入ったのですが、既
に女性たちはおしゃべりの花を咲かせていました。しかし、男性たちは男性
同士でも、また女性ともまだ打ち解けた感じにはなっていませんでした。
 では偉そうに言っている私はどうかというとやはりそう簡単には打ち解け
られない方です。ただ、仕事で人に偉そうに話しているからこそ、自らを反
省すると共に、少しずつ、2回に1回の割合程度ですが、自らの実践につながっ
ているところもあります。その意味で知識も大事です。

●『関係性があっても学べない』
 一方で群れたり、それなりの関係性があったりしてもなかなかそのつなが
りの中で学ぶことが出来ないのもこれまた「男」です。これは日常の中だけ
ではなく、学会を含めた仕事の場でも同じです。
 どのような包茎もむきむき体操をしていれば必ずむけるようになり手術は
不要。このシンプル、かつ論理的な説明をしても、なかなか聞く耳を持って
いただけない男性医師が少なくありません。女性医師の場合は「自分にはな
いから」と素直に話を聞いてもらえるのかと思っていたのですが、どうもそ
うではないようです。女性の方が感情的、感覚的に物事をとらえていると思
いがちですが、男性医師が受け入れてくださらない理由は他にありそうです。
新しい知見の受け入れを邪魔するのが「プライド」のようです。
 男はどのような相手でもその人が自分とどのような関係性にあるのか、上
なのか、同等なのか、下なのかを瞬時に、勘と自分勝手な指標で見極め、決
めます。岩室が自分より上の存在であると思えれば素直に話を聞けるのです
が、下と思うと聞く耳を持てなくなります。一番簡単な関係性の基準が年齢
です。最近、学校で校長先生たちと話していると58歳という私の年齢を調べ、
「だいたい同じ」ということで親近感を表明する人が多いことに改めて気づ
かされます。40代だった頃は必ずしもコミュニケーションがスムースに成立
したわけではなく、いろんなアプローチで垣根を低くする工夫をしていまし
た。

○『男の嫉妬は怖い』
 医者になって32年。この間、気が付けばあまりにも多くのことに首を突っ
込んできた自分がいる一方で、このような中途半端な人間を受け入れられな
い人がいることを思い知らされることがありました。泌尿器科医として包茎
や前立腺がん検診の話をして議論が噛み合わないことはあっても、医者とし
て、泌尿器科医として否定されることはありませんでした。しかし、先日、
ある内科の先生とHIV/AIDSの話になった時に「泌尿器科医がHIV/AIDSを診る
のは無責任」のようなことを言われました。その瞬間、頭の中が「???」。
「日本エイズ学会の認定医も取っているのですが」と一応少しは反論したの
ですが全く相手にされませんでした。実際にHIV/AIDSを診ている、日本エイ
ズ学会などでお会いする先生たちからこのような扱いを受けたことは一度も
ないのにどうしてなのかとず~~~~~と考えていて、ふと思いだしたのが
死んだ父親が常々言っていた、「男の嫉妬は怖いぞ」という言葉でした。ど
うも「男」は自分自身のプライドが傷つけられると嫉妬という形で反撃に出
るのだとあらためて勉強になりました。内科の、それも感染症をかじってい
る医者にとって、泌尿器科医が土足でその領域を侵犯しているのは許せない
のでしょう。私がHIVの患者さんの結核も診療していると言おうものならとん
でもない反撃を受けたでしょうから、早々に退散して正解でした。

●『わかりにくい名刺』
 男には名刺と役割が必要と言いながら、名刺で苦労をしている自分がいま
した。泌尿器科医がHIV/AIDSを診ることを否定する人がいても平気ですが、
やはり困るのが医者としての専門性を聞かれる時の説明です。名刺の肩書は
「ヘルスプロモーション研究センター長」ですが、知らない人には理解でき
ない肩書です。そのため、公衆衛生関連で使う名刺には「陸前高田市包括ケ
アアドバイザー」、「女川町健康づくりアドバイザー」と入れています。そ
うすれば、何となく健康づくりや地域へのアドバイザーをしているとわかり
ます。ただ、ヘルスプロモーションは医者の専売特許ではありません。わが
センターには保健師や栄養士もいますが、もちろんその人たちもこの道のプ
ロです。
 一方で臨床医だということを伝えなければならない相手には「厚木市立病
院泌尿器科」というのを入れています。しかし、前述のように医者の中には
岩室紳也は泌尿器科医の枠から出ることを快く思わない人がいます。最近テ
レビでも「総合診療科」や「総合医」という標榜をよく目にしますが、実際
にはまだ専門医集団からは低く見られているのではないでしょうか。それは、
あれもこれもできるはずがないという専門医たちのプライドのなせる業が原
因と考えれば理解しやすいですね。

○『役割が大事』
 名刺や肩書に守られている人もいますが、それがない私がそれなりに頑張
れているのは一定の役割を与えられているからです。HIV/AIDSを診る医者が
ほとんどいない時から診療を始めていますが、いつも「代わりに診てくれる
医者がいたらいつでもHIV/AIDS診療を辞めます」と言い続けています。しか
し、さすがに20年もこの領域で仕事をしていると、「診る」というのは単に
外来で診療をするだけではなく、その人が地域で暮らしやすい環境を整備す
ることを含めて「診る」と言っています。今では地域や施設の理解を得て、
HIVに感染した認知症の患者さんが何の問題もなく施設に受け入れていただ
いています。しかし、病院の中しか見えない専門医には医者にはこのような
役割があり、期待されているということは理解どころか想像さえもできない
ようです。そういう意味で、私自身はへき地医療、保健所での公衆衛生活動、
さらにはHIV/AIDSとの出会いがあったからこそ公衆衛生領域をも視野に入れ
られる医者という役割を与えられたことに感謝しています。

●『仲間づくりのために』
 千葉県浦安市や被災地では自殺対策に首を突っ込んでいます。おかげさま
で精神科の先生たちは度量が広いのか、「泌尿器科医」の岩室紳也が自殺対
策を語っても特段反発はありません。これは自殺対策のように様々な切り口
で、地域の総合力を結集しなければ解決しない問題に対して、「オレが専門
家だ」と威張ったところで、自分にしっぺ返しが来ることを最初からわかる
からです。
 答えが簡単に出ない分野では名刺や肩書より実践が重視されます。しかし、
そのようなわかりにくい世界に「男」たちを引き入れるには、役割を明確に
し、わかりやすい名刺を作ることも大事なのかもしれません。これからもま
だまだ十分な支援が行き届いていない患者さんや地域の人たちのためになる
仕事が広がるよう、仲間を、それもやっかいな男たちを増やせるよう、頑張
らなければと改めて思いました。


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