紳也特急

紳也特急 vol,136


カテゴリー: 2010年12月01日
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 全国で年間200回以上の講演、HIV/AIDSや泌尿器科の診療、HPからの相談を
        精力的に行う岩室紳也医師の思いを込めたメールニュース! 
 
性やエイズ教育にとどまらない社会が直面する課題を
                                         専門家の立場から鋭く解説。
                    Shinya Express (毎月1日発行)

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~今月のテーマ『伝えたいこと、伝わること』~

●『日本エイズ学会雑感』
○『言葉(用語)の説明が必要』
●『PowerPointでは伝わらない』
○『MSMをどう伝えるか』
●『コンドーム柄のネクタイに思いを込めて』
○『女は赤ちゃんを産む道具???』
●『洗わない包茎は女性のHPV感染の原因に』
○『伝えたいことを伝わるように』

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●『日本エイズ学会雑感』
 日本エイズ学会が11月24日~26日、東京で開催されました。日進月歩の医
療の分野では、新薬の副作用の少なさが報告される一方で、海外ではかねて
から問題視されている骨がもろくなる「骨軟化症」で実際に骨折したり、大
腿骨頭壊死といったトラブルが起こったりしているとの報告も目立つなど、
長期療養には様々な問題が立ちはだかっている現実を突き付けられました。
「HIVの治療薬が進歩しているので、HIVに感染しても早期に発見すればAIDS
を発症せず、天寿を全うできるようになりました」といった安易なメッセー
ジを送ってはいけないと感じました。
 もう一つ興味深かったのが性感染症学会との合同シンポジウムでした。私
自身、両方の学会に所属し、臨床の場面では泌尿器科医として淋菌性尿道炎
やクラミジア性尿道炎を診ていますし、HIV/AIDSの診療もしていますし、MSM
(Men who have Sex with Men:男性とセックスをする男性)が感染する肛門・
直腸尖圭コンジローマの診察もしていますし、当たり前のようにシンポジウム
で指摘された肛門の尖圭コンジローマの患者さんの直腸内の診察もしています。
ただ、淋菌性、クラミジア性尿道炎も、HIV/AIDSも、肛門・直腸尖圭コンジ
ローマも同じくSTI(性感染)に分類されるものの、泌尿器科医として診てい
る尿道炎の患者さんの中でMSMの人はまず出会いません。また、HIV/AIDSを最
初に自分が診断するという経験は一度もありません(保健所や他科で診断が
ついた人たちが紹介されてきます)。MSMを診ているから肛門・直腸尖圭コン
ジローマを発見しますし、紹介されてきますし、紹介してきた先生の所でコ
ンジローマとHIVが合併していたというケースは経験しています。しかし、今
回の合同シンポジウムでは、なぜかSTIという名の下で「どうやれば泌尿器科
医がHIV/AIDSを診断できるか」といった議論がされていました。もちろん私は
梅毒や肛門の尖圭コンジローマを診断した時はHIVの検査もしますが、どちらも
泌尿器科医があまり診ないSTIですので、STIといっても十羽一絡げにして考え
るのは間違っているようです。
 余談ですが、私の患者さんで尖圭コンジローマには感染したけどHIVには感
染しなかったという方は「岩室先生のコンドームの話を中学の時に聞いたので
コンドームは必ず使っていました」と言ってくれました。コンドームを使って
いればHIV感染は予防できますが、コンドームは必ずしも尖圭コンジローマの
予防にはなりません。
HIVが予防できたからよかったと考えるべきか迷うところですが、結局のとこ
ろ、HIV感染予防のための普及啓発がますます重要になっていることは間違い
ありません。
 一方で日本エイズ学会では予防啓発に関する発表が激減していました。私自
身も発表していないので偉そうなことは言えませんが、結局のところアンケー
ト結果を含めた「評価」を入れない学会発表をすると、フロアから「で、どの
ようにその効果を評価したのですか」と突っ込まれるからでしょうか。普及啓
発の効果の評価も大事なのでしょうが、その評価方法が難しい中で、「評価」
を求める声が強くなればなるほど、発表だけではなく、議論も減り、気が付け
ばそれぞれが勝手に自己流の活動を地域でやってしまうリスクがあると思いま
した。そこで、今月のテーマを「伝えたいこと、伝わること」としてみました。

『伝えたいこと、伝わること』

○『言葉(用語)の説明が必要』
 私のメルマガを読んだ医療系の学校で教えている先生から次のようなメールを
いただきました。
 以前は、それほど丁寧に確認しなくても、学生の頷きや表情で彼らが理解し
ていることが感じられました。しかし、最近の授業では、無反応であったり、
怪訝そうな表情であったりするのです。さらに気づいたことは言葉(用語)の
説明が多くなったことです。伝えたい内容がちゃんとわかっているか確認する
ために黒板にその単語を書き出して、数名に「わかる?」「知ってる?」とた
ずねると、「わからない」「聞いたことがない」という返事を返されることが
しばしばあります。説明する言葉の説明をしないと本来伝えたい専門の内容に
は至りません。もうひとつ気になるのが、学生がテキストを読み上げる言葉は
音読みが少ない(できない?)ということです。たとえば、「観察時には○○
に注意して」の「観察時」を「かんさつどき」と読みます。他にも、熟語の読
み方が訓読みの場合が多く音声言語で伝えにくい音読みの言語の理解が乏しい
のではないかと感じていました。音読みで読む熟語というのは聞いただけでは
理解しにくいものが多いと思います。先生のメルマガにもありましたが、「し
んや」と耳から聞いたら「深夜」なのか「紳也」なのかはわかりません。その
前後の言葉の並びから「ああ、人名か」とか「夜中のことか」と理解していく
のだと思います。その力が弱いと思います。
 「先日、岩室紳也先生の講演を聴講してきたのですが・・・」と耳から聞く
と、普通の学生は私が伝えたい通りに理解していますが、それ以外の人には
「せんじつ、いわむろしんや先生のこうえんをちょうこうして・・・」となり、
「●●、いわむろしんや先生の公園を●●して」と頭の中にはわけのわからな
い事象がつくりあげられその結果「わからな~い」になるのではないかと思い
ます。きっと「この前、岩室紳也先生というお医者さんのお話しを聞いてきた
んだけどね。」と言うと伝わりやすいのでしょう。・・・まるで小学生に話し
て聞かせるような感じです。
 専門用語は難しい音読み熟語の連続です。学生が「勉強つまらない。難しい。」
と嘆くのは本を読まない(漫画すら見ないという学生もいます)。ボキャブラ
リーが少ないことと、現象を理解する力が落ちていること、絵文字に頼ったあ
いまいな表現に慣れてしまっていることなど、いろいろあると思います。
 学生はPowerPoint大好きです。わかったような気になるようです。しかし後
にはほとんど残っていません。授業後に試験をすると一目瞭然、板書した講義
とPowerPoint使用の講義では結果が違います。PPの使いかたの工夫をせざるを
えません。講義するのはPowerPointの方が楽なのですが。

●『PowerPointでは伝わらない』
 「PowerPointはわかったような気になる」というのは本当ですね。私は大人
向けの講演では必ずPowerPointを使っています。それは「資料が欲しい」とい
う声が少なくないので「PowerPointをさし上げますのでどうぞ私のメッセージ
をあなた様なりに加工して、周囲にお伝えください」という思いを込めてです。
ただ、最近、いろんな人に「他人のPowerPointは使えないですね」と言われま
す。私の講演を聞き、後でPowerPointを見てみると、わかったような気になっ
ていたことを、いざ自分が伝えようとしても、資料(PowerPoint)があっても
伝えられないものです。

○『MSMをどう伝えるか』
 「男の20人に1人はゲイ。ゲイだと妊娠しないから『コンドームを使おう』っ
て言えない。言ったら『お前病気持ち? それとも俺を疑っているのか?』と
いう会話になってしまう」というメッセージを伝えるだけで次のような感想が
もらえます。
 エイズは保健の授業で中学の頃に受けたり、高校の授業でも丁度受けていま
す。性交や薬物の廻し打ち、輸血によって人から人へ感染してしますこのウイ
ルスはとても怖いものだと感じていました。ですが今回の講演によってエイズ
が決して他人事ではない、自分にも感染する確率があると知り、ますます身近
なものに感じ、恐怖や不安が多くなりました。実際、中学の頃の男友達が男子
を好きになっていたという光景を生で見ている自分にとって、今日のお話はす
ごくその人のことを思い出させられました。今はその友達と学校が違い、どこ
でどのような人を好きになっているのかわかりません。ですが、僕はその人が、
その人らしい生き方をしてもらいたいと願っています。(高一男子)

●『コンドーム柄のネクタイに思いを込めて』
 「このネクタイの柄、何かわかる?」
 「コンドームだ(大笑い)」
 「今まで診てきた100人のHIV/AIDSの患者さんの内、92人がセックスで感染。
感染するセックスの際に(ネクタイを持って)これ(コンドーム)さえ着けて
いれば私の患者にならずに済んだし、何人もの人が死なずに済んだはず」。生
徒向けに必ず話すメッセージです。
 はじめ、コンドームが描かれているネクタイをつけ、生徒たちに話している
のを見て、「なんでこんなものつけてるんだろ。ふざけてるのかな」と正直本
気で思ってしまいました。でも、そのネクタイをつけるようになった理由や、
そこから広がったエイズについてのお話。エイズを防ぐ上でいかにコンドーム
の存在が大事であるか、聞いていくうちにわかってきて、先生のつけていらっ
しゃるそのネクタイを、これからもつけて欲しいという気持ちに変わりまし
た!!(高一女子)

○『女は赤ちゃんを産む道具???』
 いつも話をしに来てくれる先生達は同じことばっかり言って、はっきり言っ
て耳にタコができていましたが、今日は最初から最後までユーモアにインタ
ビューなどを混ぜて楽しく話してくれたのでしっかり聞くことができました。
(生徒からの「女は赤ちゃんを産む道具という意見があるようですがどう思い
ますか」という質問に対しての発言について)女の子は赤ちゃんを「産む道具」
じゃなくて「産める存在」という言葉が心に残りました。望んだ風に赤ちゃん
が生まれてくることを願います(高二女子)
 政治家の発言が新聞等で取り上げられていたのに敏感に反応した質問でした。
言葉尻をとらえたマスコミ報道にはいろんな思いがありますが、このように生
徒さんたちとキャッチボールをするきっかけをくれていると思えば、それはそ
れで意味があるのでしょうか。

●『洗わない包茎は女性のHPV感染の原因に』
 かぶれば包茎、むければOK。このメッセージはつい最近まで男性向けのもの
でした。しかし、今は包皮をむいて洗っていないと、男性は亀頭部や包皮内に
住みつくHPVで陰茎がんになり、そのHPVが原因でパートナーの女性が子宮頸が
んになります。むいて、洗って、また戻す。ぜひ男性はこれを徹底し、女性も
自分のパートナーに伝えましょう。このようにメッセージに幅を持たせたとこ
ろ女の子の関心が高まりました。
 最後の「ホウケイ」の話。そう言えばうちのおかん、よく兄が風呂になると
き、「必ずむけ」って言っていました。やっぱり母ちゃんはスゴイ。そんなこ
とをあらためて考えました。(高一女子)

○『伝えたいことを伝わるように』
 いろんな学校に話に行くと、その学校なりの、その学年なりの反応がありま
す。「この学年はどんな講演でもシラーッとしています。失礼な態度になるこ
とをお許しください」と言われていたのにすごく乗りがいいこともあります。
面白い感想文も、楽しい反応もあくまでもこちらの思いが伝わったからの反応
です。伝えたいことがあれば、それが伝わるようにこれからも創意工夫を重ね
たいと思います。
 12月1日が世界エイズデー。今年もこの日の前後に様々なHIV/AIDS関連のイ
ベントが行われています。全国ネットのFMのネットワーク、JFNネットワーク
では恒例の「THINK ABOUT AIDS」を放送します。HPのトップに番組放送時間を
掲載しています。12月4日23時30分からラジオのニッポン放送(全国37局ネット
で生放送)「福山雅治のオールナイトニッポン 魂のラジオ」も聞いてくださ
い。よろしくお願いします。


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