紳也特急

紳也特急 vol,79


カテゴリー: 2006年03月01日
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〜今月のテーマ『ダイエットに学ぶ性教育』〜

●『短絡的な発想?』
○『コンドームを教えることは効果なし?』
●『体重コントロールができなかった自分』
○『人の生き方に学ぶ』
●『ライフスキルとは』
○『できなかった自分とできた自分』
●『続けられなかった自分と続けられる自分』
○『ダイエットもコンドーム使用も同じ?』

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4月2日(日)「ワンコリアンフェスティバル」@代々木公園
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●『短絡的な発想?』
 講演の後、いろんな人とのコミュニケーションを通して日々学ばせていただ
いている私です。先日は次のような質問がありました。

Q:講演を聞かさていだだき、感じたことがあります。性感染症やエイズなど
の性教育を推進していくと、日本の大問題になっている少子化に拍車がかかる
ような気がしています。今日も授業で性感染症やエイズについて学習したので
すが、生徒が恐怖を感じている様子でした。この前の講演の質問の返答に、先
生は「エイズ学習を脅しに使ってはならない」とおっしゃいましたが、生徒は、
勝手に恐怖を感じているようです。「少子化との問題」と「どうすれば、エイ
ズの恐ろしさを感じずにエイズ教育を行うことができるか」について、お聞か
せください。

A:少子化の原因をまず最初にきちんと分析する必要があると思います。私は
「コミュニケーション能力の低下」、「自分中心主義の台頭」が大きく影響し
ていると考えています。このことはエイズの比ではなく恐ろしいと思います。
エイズや性感染症を恐ろしく思うのは、「エイズ」や「性感染症」を語るから
であって、「エイズになった人」や「性感染症になった人」を語れば決して恐
ろしくなるのではなく、その行動や、思考パターンに学べるはずです。一つ一
つの問題を自分のこととして受け止めていくコミュニケーション能力を育む手
段としてエイズや性の話をすれば脅しにはりません。「エイズ」を語る側に怖
さを教えようとする思いがあると思いますが、少なくとも私の話を聞くと「エ
イズの恐ろしさ」ではなく「無関心でいることの恐ろしさ」を感じると思って
います。エイズ予防を強調した結果、すべてのセックスでコンドームを使うよ
うになるから少子化が進むというのはあまりにも短絡的な発想と思っています
が、もしかしたらそのように短絡的に考える子どもたちが多いということで
しょうか。私にはそう思えませんが。
 
 こんなやり取りをしながら自分が12キロやせたプロセスを振り返ってみると、
そこには性教育につながる多くの示唆があったので、今月のテーマはまるで結
びつきそうにもない「ダイエットに学ぶ性教育」としました。

『ダイエットに学ぶ性教育』

○『コンドームを教えることは効果なし?』
 こんな質問もありました。「コンドームの装着を教えることは意味がない、
という論文があったのですが、そうなのでしょうか」と。どんな論文かも興味
はありませんが、まるで「岩室紳也がやっていることは意味がない」と言いた
いような論文だったとその方は感じたようです(苦笑)。それにしても相変わ
らず研究のための研究をしている研究者がいるんですね。そもそも、人の行動
に関わる研究を、一つの研究方法、一人の研究手法で妥当性や有効性を検証で
きるはずがありません。ましてや教える側の力量が大きく影響するのに、その
ことを棚に上げて議論をすること自体、研究そのものの稚拙さが露呈されてい
ると思います。まともな研究であれば、岩室を含め複数の講師による差も検証
して、どの人がやっても意味がなかったという結論を出さなければ、まるで性
教育バッシングお抱えの、恣意的な研究と言わざるをえないですよね。それは
今回ダイエットを実践してみて、あらためて人が行動変容をおこすことの、そ
してさらに行動変容を継続することのむつかしさを実感するとともに、あまり
にも多様な要因が関与することを、私自身が身をもって実感したからでした。

●『体重コントロールができなかった自分』
 先月も少し書きましたが、その後さらにダイエットは進み、現時点で7月の
最大体重から12キロやせました。しかし、50歳になってこんなにやせると、誰
も「ダイエットしたんですか」とは聞いてくれません(苦笑)。がん年齢だか
らか「岩室さんはもしかしたら病気」と思ってか、やせたことで声をかけてく
れる人は皆無といっていいほどです。そしてダイエットに成功したと知ると
「どうやってやせたの」とこんどは簡単な方法論を聞いてきます(これも苦
笑)。
 何を隠そう、私は医者です。知識もあります。家内は保健師で自宅の食環境
は申し分ありません。そう開き直ると、「ではどうして太ったのですか」と言
われ、結局は「あんたの意思が弱かっただけ」と批判されておしまい。それに
しても、どうして人は個人の責任を追及しようとするのでしょうか。

○『人の生き方に学ぶ』
 ストレスとは「人と人との関係性の中での、『プライド』が保てない、『こ
だわり』が解消できない、『被害者意識』が解消できないことの結果」である
と都立墨東病院精神科の春日武彦先生が教えてくれました。相手の、個人の責
任を追及すれば、最終的に楽になるのは責めている本人です。責めている時に
実は本人が被害者意識を持っているということに気づけず、自分の不都合な人
たちを何とか押さえ込もうとするようです。
 自分がやせた時に最初に感じたのは、やせた自分を自慢し、「やせられない
人がだめ」といってしまうと、実は一番惨めになるのはいままで右肩上がりに
太ってきた自分でした。「今までやせられなかったあなたがいるでしょ」と考
えられるようになったのは、HIV/AIDSの患者さんをはじめとして、様々な状況
とともに生きてきた多くの人たちとの出会いのおかげだと思います。本当に感
謝です。

●『ライフスキルとは』
 「生きる力」とか「ライフスキル」といったことを教えようとする試みがあ
り、なるほどと思っていた私がいました。しかし、今回やせてみて「岩室紳也
のライフスキルってなんだったの?」と思いました。確かに自分の意思は弱かっ
たのかもしれませんが、そんな意志が弱い人が、20年間でたった12キロの増加
でとどまったことが奇跡的なのかもしれません。やせるに当たって医者として
の知識も役に立ちましたが、別の見方をすれば、暴飲暴食の悪癖から抜け出せ
なかった私が20年でたった12キロしか太らなかったのは家内を含めた私の環境
(サポーター)のおかげかもしれません。医者としての知識があったから、本
当は50キロ太っていてもおかしくなかったのを12キロに抑えてくれたのかもし
れません。
 では、私の「ライフスキル」とやらは、あったのか、なかったのか、どちら
なんでしょうね。

○『できなかった自分とできた自分』
 ダイエットに成功した今の私と、ダイエットどころか右肩上がりの体重を積み
重ねてきた私との違いは実はどこにもありません。2005年7月24日にダイエット
を決意させてもらった私ですが、その2日前に参議院議員会館で山谷えり子さん
にインタビューをさせてもらい、一緒に写真撮影もさせてもらいました。今で
はその時の写真を「こんなデブの男が、いま12キロやせた姿を皆さんの前にさ
らけ出しています。さてどうしてやせられたのでしょうか」と講演会で話して
います。2005年7月22日の時点で私の意識の中にダイエットをしようという意識
は全くありませんでした。にも関わらず、その2日後から私のダイエット日記が
始まっています。もちろんその2日間の間に、私の「知識」も、「技術・スキル」
も何も変わっていません。私の場合は「やる気」を起こすには10キロの体重増で
は不十分だったのだと思います。「12キロの体重増」と「顔変わりました?(暗
に『醜くなりましたね』と言ってくれたある保健師さんの一言)」の二つの条件
が重なるという条件が必要だったようです。

●『続けられなかった自分と続けられる自分』
 しかし、ダイエットというのは継続することが大切ですし、一ヶ月に2キロ前
後にしておかないと、健康にもよくありません。もともと外食が多く、お酒も飲
む私ですので、リバウンドの可能性も十分あります。今までもダイエットをしよ
うと思ったこともありましたが、続きませんでした。しかし、なぜか今回は7ヶ
月間も何とか継続することができています。ではダイエットを継続できている今
の私と、継続できなかった昔の私との違いはどこにあるのでしょうか。
 いまの私の仕事はヘルスプロモーションをすすめるにはどのような視点が必要
かを研究することです。多くの研究者は「他人」を研究するようですが、それだ
と「この人のここが悪い」とか「この人のここが良い」といった他人ごと意識の
研究になりがちです。「コンドームの装着を教えても意味がない」という研究も
自分のことを棚に上げて、というか無意識に考えないようにしている研究でしょ
う。そして他人を題材に研究を進めるとどうしてもその人の自己責任ということ
に行き着きがちです。しかし、自分を題材に研究をすると、確かに個人の力量と
しての「知識」、「技術・スキル」、「意識」をいかに持ってもらうかも大切で
すが、それだけでは健康づくりはうまくいきません。個人の力量を発揮しようと
いう気持ちになるための「きっかけづくり」として「心に響く」出来事の大切さ
とそれを受け止めるストレスマネージメントの力量。さらには思いと取り組みを
継続するための「エンパワーメント」を得られる、その時のその人が必要として
いる多様な環境が重要だということに行き着きます。

○『ダイエットもコンドーム使用も同じ?』
 セックスをする時にコンドームを常用するというのが生活習慣になっている人
ならいいのでしょうが、生活習慣が確立していない人であればそれを繰り返し自
分の中で思い出し、続けるためには「知識」や「技術・スキル」を教えるだけで
はだめです。岩室紳也がやせるためには生きてきた50年のすべてが、それこそ、
こうやってメルマガを書かせてもらい、それを読んでくださっている皆さんがい
るという環境も必要でした。無駄なものは何一つありませんでした。だからこそ
一生懸命生きているいろんな人の後姿に学び続けられる環境が自分の健康づくり
につながっていると、ダイエットを続けていて感じる今日この頃です。あらため
て皆さんに感謝です。




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