紳也特急

紳也特急 vol,55


カテゴリー: 2004年03月01日
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〜今月のテーマ『コミュニケーション』〜

●『読者からのメール』
○『乳幼児はテレビを控えて』
●『人を思い込みで判断』
○『講師の選択に失敗?』
●『大人のハードル』
○『なぜ、コミュニケーションか』
●『「人間」という言葉』
○『聴衆にいただくエネルギー』

◆CAIより今月のコラム
「たった一度の油断でも」

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 先月号の「大人も下げよう、性のハードル」にいくつかの意見、感想をい
ただきました。私も「うん、うん」と頷くものばかりでしたので、その一部
を紹介したいと思います。

●『読者からのメール』
その1
 アダルト情報はすべて有害情報なのか。例えば、マスターベーションについ
て、悪いことではない、自分で欲望をコントロールすること、と肯定しても、
その先は言いません。その先に何があるか。性産業です。オナニーはHなビデ
オや雑誌とセットになっているんです。数学の教科書を見ながらオナニーする
子はいないのです。みんな性産業のお世話になっているのです。一方で、性産
業の情報を否定し、一方で男の性欲を肯定するのは矛盾していると思いません
か?アダルト情報がすべて青少年の健全育成に有害と決め付けないで、「正し
いアダルト情報の見方、付き合い方」を教える必要があると思っています。
 先日、「資料」として購入した「コミックMUJIN(むじん)」という漫
画は、普通の週刊誌と同じところで売られていましたが、中身はレイプ、ロリ
コン、輪姦で埋め尽くされていました。少女向けコミック「17歳〜はじめての
H」には、強引にキスをされ、強引にセックスを求められながら、そのかっこ
いい男の子に恋をしていく女の子の心理が描かれています。これも普通に売ら
れています。「これはちょっと違うんじゃないの」と言う大人が必要ですよね。
(男性)

その2
 私は、純潔教育がセックスを結婚制度に結びつけるために
・愛のないセックス(この“愛”が「唯一の異性」とのセックス=結婚制度を
  支える)
・未成年のセックス(結婚できないから)を禁じているのではないかとにらん
でるんです。で、結婚制度に反対するほどフェミな思想を持ってるわけじゃな
いけどうさんくさいな〜命令しないでよ!って思うわけです。(まだ、若いん
ですっ!(笑))
>  セックスをしたっていいじゃない。何が減るんですか? 
> 減るもんじゃないでしょ、と冗談を言うと、大人たちは
> 「肉体的には減るものは無いかもしれないけど、精神的
> には失うものが大きい」と怒っていたのを思い出します。
 岩室先生のお話に出てきた、この人も「愛のないセックス」を禁じるタイプ
だろうなぁ、って思います。あ、愛って言うのは、ただ好き、って気持ちとは
別の…上に書いてあるようなことです。ちゃんと避妊をして、テクが乱暴すぎ
たりしなければ何も「傷つく」ものはないのに!ほんと、性の価値観には違い
がありますよね。この人も、自分の信じる秩序が乱れるのが怖いから、反対す
るんでしょうね。
 でも、物理的に傷つかないようにする方が、先決ですよね。そのために、知
識を!
 ん〜高いハードルがあるんですね〜とてもわかりやすい号でした☆(女性)

その3
「性情報のハードル」
「性行動のハードル」
「性の価値観のハードル」
と情報・行動・価値観を分けて考える、というのが面白かったです。ひとつひ
とつ丁寧に超えていかないといけないんですね。私が会社で一番仲の良い友人
から、彼女のセックス・パートナーの話をよく聞くんですが、どの人もコンド
ームを使いたがらないそうなんです(なぜかそういう人ばかりと気が合ってし
まう彼女。。。)。良くないよね〜、と彼女は自分で言うし、私もリスクにつ
いての話をしたり、コンドーム以外のbetter choicesをアドバイスしてはいま
すが、一向に何か変わるような気配はない。まぁ人の行動を変えるなんて大変
なことだし、彼女のことは心配ながら、ちょっと諦めかけてたんですが、今日
の紳也特急を読んで、情報(言葉)は共有できていても、価値観は違うのかも
しれない。そういう風に少し細かく考えてみたら、違う話の仕方ができるかも
しれない、とちょっと思い直しました。人に伝えるって難しいけど、新しい切
り口が得られて収穫でした。(女性)

 今回、いろんな反応をいただきありがとうございます。私自身、あらためて、
「情報の受け止め方」が大事だと思いました。Information(情報)がいくら
あっても、Education(教育)をどんなに頑張ってしても、他の人との
Communication(コミュニケーション:適当な日本語がないことが日本らしい?)
を通した理解、納得、そして意識化ができないとせっかくの情報や教育がその
人のものにならないのではないでしょうか。
 ということで今月のテーマは漠然と「コミュニケーション」としました。

「コミュニケーション」

○『乳幼児はテレビを控えて』
 先日、新聞に日本小児科医会の提言として「2歳未満はテレビ控えて」とい
う記事が載りました。小さい子どもにテレビを長時間見せていると言葉が遅れ
る、視線を合わせない、友人と遊べないといった乳幼児が最近、臨床現場から
数多く報告されるようになり、そうした家庭ではビデオやテレビを長時間見せ
ている例が目立ち、小児科医がテレビを見せないように助言すると改善したケ
ースも少なくないということのようです。この記事を読んで、私は次のような
投書をしました。(実際には大分添削が入ったのですが採用されましたが、こ
こでは原文を紹介します。)

●『関係性の再構築を』
 医師 岩室紳也 48歳
 「2歳未満はテレビ控えて」という小児科医会の呼びかけを皆さんはどう受
け止められたでしょうか。こども達に「対人関係や言葉に遅れ」という問題が
あることも事実ですが、目先の状況ではなく、問題の本質に目を向けた対応を
する必要があるのではないでしょうか。
 いま、社会問題として表出している事象の多くは人と人の「関係性の喪失」
から来ています。人間にとってコミュニケーションは不可欠です。こどもがテ
レビを見ているから対人関係や言葉に遅れが出るのではなく、親となった人が
こどもにどう語りかけ、話していけばいいかがわからないのです。一方で「コ
ミュニケーション」を求めているこども達は一方通行ではあるものの自分に語
りかけてくれるテレビに引きつけられ、自分から言葉を発せなくなります。家
族で食卓を囲む時にお互いがコミュニケーションを取れず、テレビで間を持た
せていた世代が実は今の親世代を生んでいます。携帯にしがみついている現代
人を見ればいかにコミュニケーションに飢えているかがわかります。
 「テレビを控える」といった対処法ではなく、テレビを見なくても楽しい
「関係性の再構築」が求められていると思います。一人一人が声を掛け合う地
域づくりから始めませんか。

●『人を思い込みで判断』
 ところが先日神奈川県に講演に行った際に「コミュニケーション」の話題に
なったときに「そういえば先日岩室先生と同じ名前の人がこのことで投書して
いました」と言われ唖然としました。「読売新聞の投書なら私ですが」と言っ
たら、そばにいた私をよく知っている人も「あなたは岩室先生のことを知らず
に何を言っているんですか」とフォローしてくれましたが、当の本人は「岩室
がコミュニケーションのことを投書するはずがない」と思っていてどうも納得
できないようでした。
 そんなことを紳也特急の原稿に書いているときに一通のメールが届きました。
地域をあげてエイズに取り組もうとされている方が、私を呼んだ後にさらに多
くの方を巻き込んだ取り組みをしようと、比較的近くにいる方に講演をお願い
したようですが、講師選びの難しさについて次のようなメールをいただきまし
た。

○『講師の選択に失敗?』
 (前略)先方は、岩室先生とは、面識があるとおっしゃっていましたが、率
直に申し上げると・・・彼等は反岩室派なのでしょうか?私の受けた印象は、
昨年、岩室先生が私達に残してくれたもの、そして今後の取り組みの基礎とし
て、我々の中にある岩室先生の考え方には、合致していないと感じました。
様々な考え方や教育方法があってしかりですが、私は、エイズについて説明で
きれば誰でもいいなどとは、全く思っておりません。岩室先生は、いかに子供
達の心の中に入り込み、心のこもった愛情を育む伝達を心掛けているかを常に
考えていると昨年の先生との沢山のメールから学びました。だからこそコンド
ームも子供達には、受け入れられるのだと思っております。それを『彼はコン
ドームだけでエイズ自体の事は、あまり得意ではない』と言われては、先生が
よく言う、そこらへんにいる理解のない大人と同じで、しかもその人に講演を
頼むなど…、運動の幅を広げられる絶好のチャンスなだけに、残念でなりませ
ん。(30代男性)

●『大人のハードル』
 私自身、確かに話すこと、していることの一部が少し「過激」だとは思いま
す。(全部が過激に聞こえる人もいる?) しかし、いつもコンドームは所詮
道具でしかないと割り切っていますし、若者や一般向けの講演会でもコンドー
ムについて話すのは最後の5分程度です。しかし、チャンピオン君を出し、コ
ンドームを出して実演している状況というのは多くの大人にとってその前の1時
間半の話を忘れさせるほど大きなショックであり「情報・行動・価値観すべて
のハードル」を高く積み上げる結果となっているんですね。また、エイズに取
り組んでいる方が私の話を聞くAIDS文化フォーラム in 横浜のプログラムでは
私自身も参加者に遠慮があります。いまさら岩室がエイズのいろいろを話すよ
り「コンドーム」に限定したプログラムを組むようにしているためそこに参加
された方は「コンドームしか話さない、コンドームしか話せない岩室」という
印象が強くなるのでしょうね(笑)。一方で子どもたちはそのすべてにおいて
ハードルが低いため、コンドームの話にひるむことなく、その前の話もきちん
とこころに留め置きながら聴いてくるようです。
 こうやって書いていてやっと大人と子どもの受け止め方の差を気づかされる
おろかさを感じています。大人は人の話を聞く時に、特にエイズや性のように
自分なりのハードルがある問題については相手と自分との距離を見定めて話を
聞いてしまいます。それに対して子どもたちとはこころとこころのコミュニケ
ーションを図りながら人の話を聴き、そして自分の糧とすることできるようで
す。

○『なぜ、コミュニケーションか』
 学校教育の中で情報提供されたことや教育を受けたことを自分のものとする
には「予習」、「復習」が重要だったように、「性」に関して多様、かつ多量
の情報が流れているにもかかわらず、それが自分のものとなるにはいろんな人
とコミュニケーションをとりながらそれが正確なものか、表現として適切なも
のか、正確に理解できているのか、等々、確認しなければならないことは多々
あります。しかし、人間って勝手なもので実際に多くの情報を自分なりに勝手
に解釈し、自分の解釈を正当化して人を巻き込もう、教育しようとします。と
ころがその情報伝達や教育の過程で相手との双方向のコミュニケーションが取
れていると自分の解釈の誤り、表現力のなさに気付かされていくはずです。コ
ミュニケーションがきちんと取れるということはその二人の間のギャップをも
明らかにするでしょうが、一方で相手のよさにも気づけて人は少しずつ成長で
きるのではないでしょうか。

●『「人間」という言葉』
 初めて人間という字を書いた時のことを覚えていますか。私は「人の間」が
人間ってへんだと思いました。人と人の間は空間ですよね(笑)、とへんな理
屈を思いついたものですが、最近は「人間」という言葉を考え出した人って偉
い! それこそ「人間」の本質を見抜いていると思いました。人は人と人の間
にいて、それもいろんな人の間にいて、そして周囲の人とのコミュニケーショ
ンが取れているか否かで人間として成長もし、不安も解消し、そして健やかに
暮らすことができるのではないでしょうか。一人でしかいられない人、閉じこ
もっている人は成長もできず、不安も解消できず、そして健やかに暮らせない
と言えるのではないでしょうか。

○『聴衆にいただくエネルギー』
 今日も中学3年生に1時間あまりの話をしてきました。真剣に聞いてくれてい
る目を見ているとこの話はこころに響いているんだ。この話はちょっと外した
かな。この表現はあの女の子にとってきつかったようだ。最初から最後まで本
を読みながら無視しようとしていたあいつは本のページをめくっていないぞ。
といった反応がひしひしと伝わってきます。最後には学校でいろいろと問題児
だった子までが2つも質問をしてくれて先生方も喜んでいました。御礼の言葉
で生徒代表の子の「知識だけではなく、ちゃんと意識して行動しなければなら
ないことを学びました」という私の行間にもなかった言葉を感じる感性に何よ
り私自身がエンパワーされました。
 生徒の皆さん、ありがとう。




◆CAIより今月のコラム

「たった一度の油断でも」

みなさんコンドーム正しく使えてますか?

 私はCAIに関わってきたおかげで、もう何年も前からセックスの際には
必ずといっていいほど、岩室先生の「正しいコンドームのつけかた」の講義
姿が脳裏に浮かび、その度にパートナーが装着しているのをいつも横目で
チェックしてきました。
にも関わらず、この冬に避妊に失敗。妊娠。(しかも3ヶ月に入る前に流産し
てしまいました)

 「まさか私が・・・」と思うことの連発でした。
失敗したその時は二人とも残業で会ったのがすでに深夜。
ことにおよんだのは明け方近くで、私の興味は

「セックスをしながら相手にばれないように眠る方法」にあり、まさに実践中。

パートナーも疲れていて、コンドームの付け方が適当だったそうです。
 
 行為が終わった後、すぐに「避妊に失敗した可能性がある」と告げられまし
た。長いつき合いの中でそんなことを初めて言われて驚いた私は、産婦人科に
行き、事後ピルを処方してもらうか、妊娠していたら子供を産むか相談。
私とパートナーとは数ヶ月後には結婚する予定なので、後者の選択したのです
が、今では、こういう時はとりあえず産婦人科に行って妊娠回避をして貰った
方が結果的に良いだろうと思っています。

 その後、結局子供は育たず流産の手術をしてしまいました。今はもう体調も
戻り、今回の経験をふまえ、次の妊娠をいつにすればいいかパートナーとよく
話し合っています。

 それにしても、たった一回避妊に手を抜いたことで、こんな大きな代償を産
むとは。

セックスのリスクを痛感しています。
一度でも手を抜かないよう気をつけないと。

                               N.K(♀)

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