紳也特急

紳也特急 vol,3


カテゴリー: 1999年11月01日
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■■■■■■■■■■■  紳也特急 vol,3  ■■■■■■■■■■■
          http://www.cai.presen.to/
  全国、津々浦々年間100ケ所以上の教育機関などへ性教育の講演を行う
      厚木保健所、岩室紳也医師の衝撃のメールニュース!
   今まで届きにくかった性教育の現場を指導者の立場から鋭く解説
   〜人に聞けない性の疑問など岩室医師が答えるコーナーもあり!〜
                    Shinya Express (毎月1日発行)
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◆今月の話題
「再び薬害エイズが起こってしまった???」
 
 今回はこのことだけで書いてみました。

 CAIのホームページの最新ニュースで次のようなコメントが載っています。
「1999年10月10日■ ●輸血によりHIV感染発覚!あの事件?関連報道を聞いて
いると、輸血提供者がHIV抗体検査の為に献血したように言っているけど、純
粋に献血しようとした可能性だってあるのに。。。と思うのは私だけ?献血し
た経験がある人はわかると思うが、問診を強化するって言っても限界がある
し。輸血時のリスク説明の言及はあったのでしょうか?疑問です。」と。

○あなたの問題? 誰の問題?
 あなたはこれら一連の報道をどう受けとめましたか。自分自身の問題として
考えてみましたか。
 10月19日の読売新聞夕刊でも「HIV、献血で発見急増」という記事が一面を
飾りました。私はエイズ問題に関わる人間として、憤り(いきどおり)と感染
された方への申し訳のなさで翌日投書をしましたが、取り上げられる可能性は
低いのではないでしょうか。神奈川新聞は夏に「献血でのHIV抗体陽性者が増
加」という記事を書いていたのですぐに取材をしてきましたので私なりに問題
点をコメントしておきました。しかし、時間をかけて、論理立ててお話しない
と理解されないところがあるようですので少しページを割いて書いてみまし
た。
 何が問題なのですか、どうして憤りを感じているのですか、誰に対して憤り
を感じているのですか、と何人かに聞かれました。私が考え過ぎなのかもしれ
ません(と書きながらそうは思っていません)が、今回のトピックスは「再び
薬害エイズが起こってしまった???」というかなり刺激的、挑発的なものに
しました。今回の「事件」を詳しく説明したいと思います。

○どこまでが不可効力?
 少し前に日本赤十字社が献血で集めた血液を輸血された結果、お気の毒にも
2人がHIVに感染してしまいました。私が敢えて「お気の毒にも」と言っている
のはやむを得ない感染とも言える一方で、予防できたかもしれない感染だから
です。ここが大切です。「やむを得なかった」か「予防できたかもしれない」
では非常に大きな違いになります。地震で自宅壊れてケガをした時を例に考え
てみて下さい。地震は天災で誰を恨んでも始まりませんし「やむを得なかっ
た」としてあきらめるでしょうが、後で実は自宅の工事が手抜きであったとわ
かれば工事業者を訴えますよね。今回も厚生省研究班!!!!!が「保健所な
どの検査体制の拡充が必要だ」と見当違い、責任逃れのコメントを出していま
す。この研究班だけではなく、献血を実施している日本赤十字社も少々見当違
いの対策を行なっていると思います。(こんなことを言っていると将来日赤に
天下りできないよ、という声が聞こえてくるような気がしているのは幻聴で
しょうか)。もちろん、厚生省も積極的な対策を打ち出していません。

○献血でのHIV混入予防対策
 献血で確保された血液を輸血する前に、その安全性を確認するためにHIVの
抗体検査や、HIV自体が混入しているかを調べています。HIVが混入している可
能性がある血液は廃棄処分され使われることはありませんが、どんなに精度の
高い検査方法を用いても感染してから2〜3週間の間は検査では「陰性=感染し
ていない」という結果が出てしまいます。[献血で集めた血液を2〜3週間保存
して、それから検査をしたのではだめですかという質問を受けることがありま
す。しかし、抗体ができたり、ウイルスが増殖(増える)のは血液が人の体内
にあるときだけですのでダメです]。献血にHIVが混入していることを検査で
確認できない期間をウインドウピリオドと言い、最新の技術を導入しても完全
に解消することはできません。最新の検査方法にミスがないとするならば「3
週間以内にコンドームを最初から最後まで正しくつけなかったセックスをした
人は献血をご遠慮下さい」というのもHIVの混入を防ぐ方法の一つでしょうが
そうすると献血数自体が減ってしまうでしょう。

○献血での問診
 日赤は献血の場面でウインドウピリオドの期間に献血をする人をできるだけ
少なくする方法として、エイズ検査目的の献血と感染している可能性が高い人
達からの献血を排除するために次のような「問診」を重視して行なっていま
す。

お願い:問診は項目ごと正確に答えてください。 輸血の安全性を高めるため
にぜひご協力をお願いします。 問診は、献血される方の健康を守るために、
そして輸血を受ける患者さんの安全性を高めるために実施しています。 献血
の際、問診票の内容を充分にご理解していただいたうえで、項目ごと正確にご
回答いただき、最後にご署名をしていただきます。問診に対するみなさまのご
理解とご協力をお願いします。問診により、次に該当する方は献血をご遠慮し
ていただいております。
エイズ検査の目的の方
この一年間に次のいずれかに該当することがあった方
 (1)不特定の異性と性的接触をもった
 (2)同性と性的接触をもった
 (3)エイズ検査(HIV検査)で陽性と言われた
 (4)麻薬・覚せい剤を注射した
 (5)上記(1)〜(4)の該当者と性的接触をもった

 不特定の異性や同性とのセックスをしていてもコンドームを最初から最後ま
で使っていればHIVに感染しません。麻薬・覚せい剤を使用していても自分だ
けで使っている分にはやはり感染しません。また、問診で「同性との性的接
触」を質問項目として残していることはゲイの人達に対する差別を助長するこ
とになりませんか。

○あなたがHIVに感染するリスクは何でしょう
 HIV感染はもはや、セックス、静注薬物の回し打ち、出産・授乳、医療機関
での針刺し事故、そして輸血でしか感染しません。帝王切開等を行なっても防
げない母子感染と医療機関での針刺しを除けば輸血以外の感染(セックス、静
注薬物の回し打ち)は「自己責任」で回避できます。読者の皆さんが感染する
可能性があるのは何ですか。
 いつもながら私個人のことに当てはめて考えてみます。既にこの世に生を受
け、授乳(自己責任で子供のを盗み飲む場合、しかもそのお母さんの感染を
知ってか知らずかは別として)の予定もありません。HIV陽性の人の診療もし
ていますが、針刺し事故をしてしまった場合は医者としてやむを得ないと思っ
ています。今の所薬物には手を出していません。セックスは愛する女房としか
しません(そのつもり、たぶん、おそらく、いや絶対?????、仮に誰かと
してもコンドームの達人が生でするはずがない、そうだこれを最初に言えば良
かった???? 何を混乱しているのだ、しっかりしろ!!)。
ある高校での講演会の時の生徒と私のやり取りを紹介します。

岩室:私はHIVに感染している人の診療をしていますが針刺し事故以外では患
者さんからHIVをもらうことはありません。輸血で感染する危険性があります
がこれはやむを得ないと思っています(取り敢えず建前として)。麻薬の回し
打ちもしていません。セックスは愛する女房としかしません。だから、私は
HIVに感染することはありません。しかし、あなた方はこれからセックスをす
ることでしょうからHIVに感染する可能性を考えてコンドームを使って下さ
い。

生徒:それは変だよ。先生だってセックスで感染する可能性はありますよ。
だって奥さんが誰かとセックスしているかもしれないでしょ。

岩室:???????? 
 
 返す言葉がなかったというのが正直な所です。愛しているから、信じている
から、そんなはずがない、いやコンドームを使っていれば大丈夫だ????、
俺の女房を侮辱するのか、と言ったところで真実は女房しか知らないことで
す。そんなことを言ったら奥さんがかわいそう、という意見もあるでしょう
が、HIV感染の可能性があるかどうかは二人の愛情云々の問題ではありませ
ん。客観的な観点からお互いの可能性がゼロの時に初めて感染するリスクがな
いと言えることになります。高校生は「誰でも感染する可能性があるというこ
とですね」ということを指摘してくれたと思って感謝しています。

○どうして検査目的の献血がおこるのでしょうか
 ウインドウピリオドに献血する人には2通りの場合が考えられます。1つは献
血前の2〜3週間以内にセックスをしていたにもかかわらずその時にHIVに感染
したことにまったく気が付いていない人です。このような人には問診は全く意
味を持ちませんし、セックスの際には必ずコンドームを使うという習慣が徹底
されない限り、このリスクはこれからも排除できません。もう1つは献血前の2
〜3週間以内にセックスをしたことに不安を覚えてウインドウピリオドのこと
を知ってか知らずか、検査目的に献血をしてしまう場合です。この場合、本人
は検査をしたことにはなりますが、検査結果が正確ではなく、感染の有無を確
認するには再度検査を受ける必要があります。保健所でエイズ検査に関わって
いますと、検査を受けようとする人達の中には抗体出現までに3ヶ月かかるこ
とを知らない人から、知っていても3ヶ月間が待てない人、あるいは、過去の
感染なのか最近の感染なのかを調べるために何度も受ける人がいます。ある人
は「自分はハイリスクなセックスを止められない。しかし、感染したら他の人
にうつしたくないから定期的に検査を受けている」と言っていました。定期的
に保健所で検査を受けている人も多くいますが、検査目的で献血を利用してい
る人がいる事実は認めざるを得ないと思います。
 保健所に勤務しエイズ検査を担当しているものとして、安心できる、受けや
すい検査方法を工夫してきたつもりです。検査時のカウンセリングでは万が一
陽性になった時に保健所は医療機関を紹介するだけではなく、地域で生活する
時の支援もしていることを説明させていただいています。受けやすくするため
の工夫として全国的には、夜間、休日、祭日に検査が受けられる所は数多くあ
りますが、残念ながら保健所の検査をどんなに受けやすくしても、全国津々
浦々まで移動式に周っている、献血をしていて怪しむ人もいない、といった献
血のしやすさを超えることはできません。本人の良心に訴えることも大切で
しょうが、全ての人に検査目的の献血をさせない方法はないと思います。「保
健所で検査を」と建前を言うだけでは検査目的の献血はなくなりません。献血
をしても検査結果を教えてくれなければ検査目的の献血は必然的になくなると
思いますがいかがでしょうか。

○輸血での感染は自分でチェックしましょう
 輸血によるHIV感染の危険性は医療機関では認識されつつあります。輸血の
前にリスクについて説明はされています。しかし、輸血後のHIV抗体検査をし
ている医療機関はほとんどありません。輸血を受けた人こそ(本人が望めば)
検査を受けて自分のこれからの治療や生活設計を考えることが重要ではないで
しょうか。もちろん輸血で感染したことが明らかになれば様々な保障も受けら
れますが、そのためには輸血して少なくとも半年以内に感染していることが証
明されたり、保存されていた血液に含まれるウイルスと一致することが大前提
になります。何年か後にHIV感染が判明し、セックスでパートナーにうつして
いたにもかかわらず輸血によるものと証明できずに泣き寝入りする人がでない
かを心配しています。今までに、あるいはこれから輸血を受ける人は輸血を受
けた3ヶ月後に抗体検査をお受けになるという選択肢もあることを承知してお
いてください。

○社会防衛か自己責任か
 献血でHIVに感染していると分かった人にその結果を教えないことはどのよ
うなデメリットがあるでしょうか。告知するメリットとして以下のようなこと
が言われています。
1. 献血者は、より早く感染の事実を知れば早く治療に結び付けることがで
きる
2. 献血者は、感染を知っていれば自分のパートナーへの感染を予防できる
3. 献血者のパートナーは感染の事実を知ることで感染予防ができる
 どれも一見ごもっともな意見のように思われますが、大前提として「輸血の
安全性」を確保するべきなのでしょうか。それとも「献血者やそのパートナー
のメリット」を優先するべきなのでしょうか。私は「自己責任」で回避できる
ことに対して他人の犠牲を払ってまで守ってあげることはおかしいと思いま
す。検査目的の献血をなくさない限り輸血でHIVに感染するリスクを減らすこ
とができません。検査結果を知らせなければ検査目的の献血はなくせます。私
には単純明快なことであり、これを実施しない理由が理解できません。できる
ことをしないかった結果HIVに「感染させられてしまった」人達は「第二の薬
害(輸血)エイズ」被害者と言えませんか。

 誰が「検査の告知をするように」と判断したのでしょうか。
 今、誰が「検査の告知をしないようにしよう」と判断できる立場にあるので
しょうか。

 私は「再び薬害エイズが起こってしまった」と思っています。輸血の危機管
理を急がなければ被害者はさらに増えることは間違いありません。
 皆さんのご意見をお待ちしています。


◆読者の方から
 『vol,2で男性のオナニーの話が出ましたが女性のオナニーはどうなんでしょ
うか??教えてください?』

紳也
 男性のオナニーを「必須科目」とすれば女性のオナニーは「選択科目」と考
えています。また、男性のようにワンパターンではないようです。

◆CAI編集者より今月の一言
 来月12月1日は、世界エイズデーです。この日に合わせて新コンテンツ『コン
ドームの正しいつけ方』を動画でアップする予定です。コンドームが外れた、
破れた経験のある方は必見です。お楽しみに。
 
 ホームページ開設より来月で1年、1日のアクセス数も50件以上、多い日には
150件を越えます。『紳也特急』購読者数も700部を越え反響の大きさに驚いて
います。また、充実したコンテンツ作りに日々頭を悩ましています。
 こんなのがあれば便利なのに、、、など。 御意見お待ちしております。
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☆岩室先生宛の質問も cai@excite.co.jp 受け付けています。
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