農業文化マガジン『電子耕』

『電子耕』No.246-2008.10.30号


カテゴリー: 2008年10月30日
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隔週刊「農業文化マガジン『電子耕』」  第246号
−環境・農業・食べ物など情報の交流誌−
2008.10.30(木)発行      山崎農業研究所&編集同人
<キーワード>
環境・農業・健康・食べ物などの情報提供、高齢者と若者、農村と都市の
交流ミニコミ誌。山崎農業研究所&『電子耕』編集同人が編集・発行。
http://www.yamazaki-i.org
*************************************発行部数 1230 部 ***************
□  目  次    □----------------------------------------------------
<巻頭言> 「農」の景観と耕作放棄地解消の取組み 石川秀勇
<83歳からのメッセージ> 我が家の戦争 原田 勉
<編集後記> 危ないタネと言う前に
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<巻頭言> 「農」の景観と耕作放棄地解消の取組み
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 穀物価格の世界的な高騰の影響とされるが、このところ食料品の値上がりが、
小麦粉製品をはじめいろいろなものに及んできている。この急変は、食べ残し
の多い実態など指摘されてきた、これまでの「飽食の時代」を変えさせるきっ
かけともなろうか。
 もう一つの残念な実態といわれるものに、耕作が放棄された農地があちこち
見られる地区の少なくないことがある。これの早急な解消も、第一には食料自
給率向上の重要さを考えれば、喫緊の課題である。

 今、みのりの秋の季節。10月中旬の日曜日の朝、テレビでも報じられていた
が、絵のように美しい黄金色の稲穂の信州の棚田の光景が、都会などから訪れ
ている人びとを魅了させているとのこと。
 また先年、筆者も現地を眼にした、道東は富良野・美瑛の夏。波打つ地形の
広々とした畑作地帯は、白い花の馬鈴薯の畑、収穫期が近づき黄色になりつつ
ある小麦の畑、青緑色の葉の砂糖ダイコン(ビート)の畑と、3色がモザイク
模様に、パッチワークのように織り成して、それは見事だった。
 関東は横浜の南、三浦半島の野菜地帯に足を運ぶと、今の季節、葉を大きく
しつつあるダイコン等の畑が遠く近くに目に入り、農家の人の作業している姿
が見られる。

 こうした、地域の風土に合致した農業を力強く持続させているところでは、
その「農」の景観には、いわば風格のようなものを感じさせられる。
 しかし、現に耕作が行なわれてなく、今後も再び耕作するはっきりした意志
のない、耕作放棄の荒地が散見されるようになったところでは、そのように言
うのは難しい。

 耕作放棄地が多くなっているところでは、担い手の高齢化や労働力不足、あ
るいは土地条件が悪いなど、難しい事情が多々ある。とは言え、景観について
言及したように、耕作放棄からは単に作物の生産面積の減少だけではない、別
の負の側面を逃れられない影響がある。
 この視点も意識して、耕作放棄地の解消に、地域で地道に根気よく取り組ん
でいくことは、現下の大きな課題であると認識していなければならない、と言
えよう。

石川 秀勇
山崎農業研究所会員、千葉県野田市在住
yamazaki@yamazaki-i.org

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<83歳からのメッセージ> 中島飛行機製作所田無運転場の仲間 
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 昭和十八年十二月、私は徴用により、中島飛行機武蔵製作所に入り、田無運
転場に配属になった。

 同時に入った仲間は五十人、金融会社の社長や松竹東京劇場の支配人、ゴム
統制会社の社員など多彩な人々であった。

 一カ月の教育研修を経て、専門学校卒以上は事務所へ、その他は現場に入っ
た。

 私が配置についたのは、零戦など航空機につける気化器の検査テストであっ
た。

 気化器(キャブレター)は中島の誇る名器で、三菱やその他の飛行機にも全
国的シェアを占めていた。

 だから運転台は零戦のエンジンを常時付けっぱなしで、気化器だけを取り付
け、取り外すのが主な仕事であった。もちろん、それに付属する、始動のため
のプロペラ廻し、燃料のガソリンのドラム缶運びなど重労働もあった。

 一番辛かったのは取り付け作業で、ナットの取り付け、取り外しで、スパナ
ーがすべって手に傷つけることで、これは慣れるまで半年位はしばしば起こっ
た。

 両手は傷だらけ、そこにガソリンや油がしみ込んで、痛いのなんの。冬はし
もやけもあって電車のつり革にもさがれない有様だった。

 また、夜間作業は他の運転台に行って、重爆撃機のエンジンテストにも参加
し、プロペラ起動のあと爆風で二階から吹き飛ばされ転落することもあった。

 先輩の工員は、ほとんどが海軍の元下士官で操縦や整備の経験者であった。
だから親切に指導を受け、可愛がられた。歳は私は十八才という最年少であっ
たこともある。

 困るのは、徹夜作業のあと仮眠するのであるが、夏はどこでもよいが、寒く
なると、ボイラー室の床しかない。下働きだから、いつも遅くなると適当な温
度の所は先輩が占有していて、熱い所や寒い床しか残っていない。

 でも楽しみは、夜食の素うどんであった。民間ではとうてい口に入らないも
のが特配されていた。また、肺結核の初期で二カ月ばかり現場事務所で働いた
ときは一日一本の牛乳が支給された。

 昭和十八年は、飛行エンジンの最高の生産高で名古屋の三菱重工業よりも中
島飛行機の方が多かった。

 しかし、検査結果は次第に落ちて合格するものは五十パーセント以下のよう
だった。機材の材質が悪くなり、熟練工が少なく、大部分が徴用工や動員学徒
で占められていたからである。合格水準も片道行けばよいという特攻作戦を見
込んだ対策だった。

 私は昭和十九年十一月に徴兵で召集され、中島を離れたが、その直後の十一
月二十四日、大規模な東京初空襲があって中島飛行機武蔵製作所が集中的に爆
撃された。マリアナ諸島を発進したB29約八〇機が二時間にわたって、武蔵
野町を中心に、千代田区神田などを空襲した。もちろん新聞には発表されなか
った。

 続いて十一月二十九日、初めての夜間爆撃があり、田無運転工場にも五〇〇
キロ爆弾が落とされ、隣接していた久留米町南沢では防空壕入り口に落ちて一
家六人が死亡した。

 以後、武蔵野町では十二月三日、二十七日、昭和二十年一月三日、四月二日
と続き、中島飛行機武蔵製作所は完全に破壊された。

 ことに四月三日は、近くの三鷹町の軍需工場や民間の家が被爆した。

 当時、三鷹町下連雀の自宅にいた太宰治も被災した。


 思えば、苦しい工場勤務や先輩たちに可愛がられた懐かしい想い出になった。

 田無工場は松林のなかであったためか夜間飛行にも発見されず無事だったが、
本製作所が機能を失ったため休止状態になり、浅川方面に疎開したが生産は回
復できぬまま敗戦を迎えた。

 その頃の仲間もすでに亡くなり、年少だった私だけが工場の近くの都営住宅
に住んでいる。

 工場跡地は、現在、高層マンションやコープ食品街になっている。


 それにしても戦争は再び起こしてはならない。
 (十月五日記す)


山崎農業研究所会員・『電子耕』編集同人
原田  勉
tom@nazuna.com
http://nazuna.com/tom/

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<編集後記> 危ないタネと言う前に
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第33回山崎記念農業賞(2008年7月)を受賞された野口のタネ・野口種苗研究
所/野口 勲さんのホームページをのぞいてみたら、たいへんなことになって
いた。

 タネへの恐怖を煽る女性自身の記事を検証する
 http://noguchiseed.com/hanashi/joseijishin081104.html

女性週刊誌でタネのことをとりあげ、野口さんはその取材に応じたが、書かれ
た記事の内容・表現がきわめて不正確かつ扇情的なものだったのである。読者
から農水省や種苗会社に問い合わせがあり、野口さんは業界団体から事情を説
明せよなどの要請をうけ、その対応におおわらわだという。

くわしいところはホームページをぜひとも読んでいただきたいのだが、たしか
にこの記事はひどい。「農薬まみれで生産、放射線照射は当たり前」「輸入種
子は、F1と呼ばれる繁殖能力がないものになっている」「F1種は成長力が弱く、
農薬や化学肥料なしでは立派な野菜に育たない」などなど、この手の週刊誌に
ありがちなといってしまえばそれまでだが、少しでも知識があればそんな馬鹿
な! と言いたくなるような表現がおどる。

「輸入野菜の汚染問題への不安からか、家庭菜園がブームになっている」とも
この記事には書かれている。家庭菜園では農薬を使いたくないと思うのが人情
だろう。そういう人たちにとってたしかに固定種は向いている。しかし、その
ことと、タネの実情(実際のタネの作られ方・生産現場での農薬や化学肥料の
使われ方・植物としてのタネの能力)とは別だ。事実は事実として、きちんと
伝えられなくてはならない。

不正確な記事に取り上げられた野口さんの困惑と心労は察してあまりあるもの
がある。

2008年10月29日
山崎農業研究所会員・田口 均
yamazaki@yamazaki-i.org

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