KISARAGI

KISARAGI vol.943


カテゴリー: 2017年12月17日
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K I S A R A G I vol.943                              2017/12/17
                                       編集/発行:みやこたまち
                       E-mail:tamachim@yahoo.co.jp
                                 http://mmkisaragi.blogspot.jp/

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通信欄:飛んできて初雪として降りにけり

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今週のお話

◆ "古典へのいざない" [713]
    伽婢子《おとぎぼうこ》[22] 竜宮の棟上げ [12]
    作者 たまさん

◆ 大学ノート狂詩曲 宇祖田都子の話
    第七回 手藻蔓空也 4
    作者 宇祖田都子

● KISARAGIについて

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古典へのいざない [713]
伽婢子《おとぎぼうこ》[22] 竜宮の棟上げ [12]
作者:たまさん

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 竜王は役人をつけて阿祇奈《あきな》を案内させた。
 玻璃《はり》と水晶で作られ、珠《たま》を散りばめて飾り立てた楼閣
《ろうかく》が一基《き》あった。上ってみると大空より高く上がった気が
し、一の重《え》にすらたどり着くことができなかった。
「ここは身分の卑しい者や凡人は上ることができず、神通力がある方しか最
上階に到達することができません」
 別の楼台《ろうだい》に上ると、傍らに丸い鏡のようなものがあった。き
らきらと光り輝き、目が眩んで近寄ることができない。
「これは電母《でんぼ》の鏡といって、少し動かすだけで大きな稲光りが発
生し、世の人の目を奪います」
 その近くに大小様々な太鼓が幾つも置いてあった。阿祇奈が打ってみよう
とすると役人が止めた。
「もし強く打ち鳴らすと、人間界の山河や谷、大地は大鳴動し、人はみな肝
を潰して命を失い、死ななかったとしても聴力を失うことになります。これ
は雷公《らいこう》の鼓《つづみ》です」
 また鞴《ふいご》のようなものがあった。阿祇奈が動かそうとすると再び
止められた。
「それは蛸風《しょうふう》の皮袋です。強く動かすと山が崩れて岩石が空
に上がり、人の家はすべて吹き破れて四散します」
 その傍らに水瓶があり、箒《ほうき》のような物が上に載せてあった。阿
祇奈が箒を手に取り、水に入れて撒こうとするとまた止められた。
「これは洪雨《こうう》の水瓶です。箒に浸して強く振ると、人間世界は大
雨と洪水で押し流され、山も浸水し、陸は海となります」
 阿祇奈は役人に尋ねた。
「ところで、これらを司《つかさど》る官人たちはどこにいるのですか」
「雷公・雷母《でんぼ》・風伯《ふうはく》・雨師《うし》は非常に荒々し
い性格なので、いつもは牢獄に押し込められ、思い通りに振る舞うことがで
きません。彼らが外に出て仕事をする際はここに集められ、風雨、雷《いか
づち》、稲光りを決められた分量に従って起こすことになっていて、それを
守らなかった場合は罰が与えられることになっています」
(続く)
                                  ★

 竜宮城の中を見学する主人公は、天候をコントロールする装置を見せても
らいました。竜宮は海(琵琶湖)だけでなく、全世界の自然を支配している
ようです。
 続きは次回にお届けします。それではまた。

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HP
「かたかご」http://yamanekoya.jp/
 趣味で読んでいる古典文学の現代語訳と参考文献を主に掲載しています

「山猫屋本舗」http://yamanekoya.net/
 写真日記を綴っています

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大学ノート狂詩曲 -宇祖田都子のはなし
第七回 手藻蔓空也 4
作者:宇祖田都子

コココココココココココココココココココココココココココココココココココ

 梅雨の中休み。盛大に晴れた休日の或る日、私はマンションの屋上で、ビー
チパラソルの影の下、デッキチェアーに寝転がり、パイン材の折り畳みテーブ
ルにおいてある、大きなシャンパングラス中の、氷を一杯浮かべたペリエの泡
を、ぼんやりと眺めていました。
 南の空はるかには、そろそろ梅雨明けをもたらしそうな三本の天気柱の、激
しい回転を想像させるような雲の切れ端が転々としています。

 今日は夕方から、手藻蔓さんに会うことになっていました。

 並木さんのスーツケースのことがあった日、「近いうち何かおごるよ」とい
う、挨拶代わりの言葉が、まさかのその日の夜に実現し、私たちは「鸚鵡」の
大テーブルに座って、ピザをつまみながら、そこにあるZINEを手当たり次第に
論評していました。
「文字ばかりというのは、僕には少々面倒くさい。宇祖田さんは文系だから、
得意そうですね」
「面白いものならば苦にはなりませんね。でも、文章としておもしろくなくっ
たって、フォントがかわいかったりすれば飽きたりはしないかな」
「なるほど。文字も確かにデザインだ。こう言ってしまうと当たり前のことだ
が、文書となるとつい意味が気になってしまう」
「私、本を読んでいても、時々、本を読んでいるのも、ぼけーっと雲を見てい
るのも、あまり変わらない気持ちになることがありますよ」
「うん。それは、ここでやっていた宇祖田さんの展示を見ていたら分った。あ
れは、絵と文との間のとてつもない隔たりを繋ぐ何かを、示しているような気
がした。絵の意味、文の意味という一義的なものではない大きな繊細ななにか
をね」
「ごらんいただたいていたんですか? ありがとうございます」
「ああ。二回目のときは、ちょっと地元を離れていて見られなかったのが残念
だった。何か記録のようなものは残しているの?」
「あ、いえ。ああいう展示は、その場限りの雰囲気が大事だというのが、友人
との共通認識なので。期間が終ればみんなバラしてしまいます。会場の記録と
して、ここのFBの履歴には残っているでしょうが」
「うん。それを見たんだ。次は、僕に記録係をさせてもらいたいものだが、そ
れは君にオファーすればいい?それともマスターかな?」

「宇祖田さんにお願いしてみてください」
 カウンターのむこうから、マスターが言いました。その夜はあまりお客さま
が多くはなかったようなのですが、マスターは終始ニコニコしていました。
 あ、接客業ですから笑顔は必須なのですけど、その夜の笑顔は、いつもより
ずっと柔らかくて、なんというか、無防備だったような気がします。
 「では、よろしいでしょうか?」
 と、手藻蔓さんが、右手を差し出しました。
 本当は、私は一緒に作品をつくる友人に承諾を得なければいけないのだと思
いました。でも、そのように逡巡することで、今夜の雰囲気を壊したくないと
思いました。
「ええ。是非。夏の終わりには多分、三回目の展示のこと動き始めると思いま
すので」
「そうか。楽しみだ」
 がっちりと握手をした手藻蔓さんの手は大きくてとてもしなやかで、暖かで
した。
 
 食後のエスプレッソのあと、お酒を飲みに行きませんか、と誘われましたが、
私はお酒を飲むとただただ頭痛してくるばかりだったので、お断りをしました。
「そうか。では、もうすこしコーヒーを」
 手藻蔓さんは、その日の朝持っていたタンニン染めの帆布生地のバックだけ
を隣のイスにかけていました。私は、ずっと心にひっかかっていて、なかなか
言い出せずに居た質問を切り出してみることにしました。
「て、ても、手藻蔓さん」
 噛んだ。二回も噛んでしまいました。手藻蔓とは、しかしなんと発音しにく
い名字でしょう。
「え? ああ、クウヤでいいよ。って、そっちも呼びにくいかな(笑)」
 つられて笑ってしまってから、私はごく自然に「クウヤさん」と呼ぶ言葉で
きていました。
「では、クウヤさん。私のことも名前でよんでもらって大丈夫ですから」
「そうか。では、ミヤコちゃん。何かいいかけていたね?」
「あ、はい。実は、並木さんのことなんです。不躾とはおもうのですが、差し
支えなければ、クウヤさんと並木さんとが知り合われた経緯が伺えたらと思っ
たんです」

 一瞬、手藻蔓さんの表情が曇った気がしました。やはりこの質問は控えるべ
きだったのだ、と私はものすごく後悔しました。
「あの、どうしてもということでは、ない、ので。その、聞くべきじゃなかっ
た、ですか? ですよねその、今朝のスーツケースのこととか……」

 結局私はあのスーツケースの中身が何なのかを知りたくて知りたくて仕方が
ないだけだったのでした。
 手藻蔓さんは「ん?!」という風な表情で顔をあげ、私を見ました。
「あ、ああ。全然問題じゃない。軋轢も陰謀も遺恨も屈託もなにもないんだ。
ただね」
 そういって、手藻蔓さんは、コーヒーを一気に飲み干しました。
「ただ、僕にも判然としないところがあってね。並木さんとの関係については。
秘密はなにもないし、疚しさもない。ただ、他人に説明するのが難しいような
気がしてね」
 クウヤさんが首をかしげると、シャツの襟にすこしだけ後ろ髪がかかり、小
ぶりな眼鏡に、シャンデリアが映りこみました。

「どうだろうか。その件については日を改めて」
「ええ。もちろん、うれしいです(!)」
 うれしいです。じゃないだろ~ という一人突っ込みに、頬が火照りました。
 でも、手藻蔓さんはこの微妙な感じをスルーしてくれたようでした。ほっとし
たような、がっかりしたような……

「じゃ、また連絡するよ」
「はい。お待ちしています」

 これが、手藻蔓さんとの始めての食事の顛末です。(20171217)

ニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニ

星空文庫 過去作品上げていきます https://slib.net/a/20077/

ロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロ
ノノノノノノノノノノノノノノノノノノノノノノノノノノノノノノノノノノノ

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