KISARAGI

KISARAGI vol.915


カテゴリー: 2017年06月04日
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K I S A R A G I vol.915                              2017/06/04
                                             編集/発行:みやこたまち
                         E-mail:tamachim@yahoo.co.jp
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今週のお話

◆ "古典へのいざない" [686]
   春雨物語 [198] 樊カイ [51]
   作者 たまさん

◆ 連続愛の小説 E [32]
  作者 みやこたまち

◆ 空想技術集団 [32]
    作者 みやこたまち

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古典へのいざない [686]

 春雨物語 [198]  樊カイ[51]                  作者:たまさん

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 小猿と月夜は樊カイ《はんかい》が現れたことに勇気づけられ、抜き身の
刀を構えて木の下に立った。
 若侍たちは樊カイに向かって言った。
「いや、我らも刀傷を負ったからには、このまま立ち去るわけにはいかぬ。
彼らの首級を持ち帰り、主君に詫びるつもりだ。法師もこの場を取りなそう
として命を落とすではない」
 若侍たちは聞き入れる様子がなかった。
「首は彼らのもの。盗んだものを弁償したら助けてやったらどうだ。立ち回
りが悪く、傷つけられたのは各々の不幸。それが聞き入れぬのなら――」
 言うや否や、樊カイは錫杖《しゃくじょう》を取って二、三人を一気に打
ち倒した。
(続く)
                                  ★

 小猿・月夜と若侍たちの喧嘩に割り込んだ樊カイですが、仲裁するどころ
かいきなり相手の何人かを打ち倒してしまいました。まさに電光石火です。
 この続きは次回にお届けします。それではまた。

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 趣味で読んでいる古典文学の現代語訳と参考文献を主に掲載しています

「山猫屋本舗」http://yamanekoya.net/
 写真日記を綴っています

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連続愛の小説 E [32]

e-5 Swing [e5-3]               作者:みやこたまち

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e5-3

 波音とみづはもまた、この吹奏楽部で知り合った。私はまず同じパートになった
波音と言葉を交わすようになり、練習帰りの道すがら、波音と一緒にいるみづはと
も、会話をするようになった。その時点で、私は、波音とみづはとは同じ高校に
通っていたのだと思っていた。二人のふるまいや、言葉を聴いていると、その絆の
確かさや、シンパシーの強さが伝わり、そうした関係性の傍らにいるだけの私にも、
安心感を与えてくれた。幼馴染、親友。そんな関係性がごく自然に当てはまるよう
な、二人から少し遅れて歩いて帰る駅までの道は、おそらく幼稚園のころ、まだな
んの屈託もなく女の子と遊ぶことができた頃にまで遡る幸福感に満ちていた。

 当時みづはは、実家に住んでいたため、品川からJR東海道線下りに乗り、川崎
駅から南武線に乗り換えていた。大学1年のキャンパスは戸塚にあったことから、1
年生の大多数はそのまま東戸塚または、戸塚駅でおり、時間のあるものは、ビリ
ヤード場に寄ったり、マクドナルドで時間でだらだらと話をしたりして帰宅するの
が常だった。
 波音は東戸塚、私は戸塚が最寄駅だった。東戸塚駅周辺にはあまり店がなかった
ため、帰り道の盛り上がり方によっては、全員が戸塚駅で降りることもあったし、
時には、みづはもつきあうことがあった。そういう場合、みづはは波音の家に泊
まっていた。(20170604)

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空想技術集団 [32]

4 福利厚生部の水の女 12
                           作者:みやこたまち
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4-12

 犬は匂いを嗅ぎながら唾液を垂れ流す。私の全裸はまだ溶液のヌルヌルに塗れている。
テクニシャンの鼻先にはベロがついている。もう唾液だか鼻水だかエタノールだか重曹
だか分らない。脇や鼻の穴はおろか、穴という穴、襞という襞の隅々にまで、冷たい鼻
先と柔らかなベロが這い回っている。私がこのイルカチャンに入るのは三回目で、二回
目がいつだったのかもはや曖昧ではあったが、こんなむずがゆいような、叫びだしたく
なるような、それでいて声をだしたらいらぬことを叫んでしまうのではないかという恐
怖がなぜだか笑いにかわって、咽喉チンコを爆発させてしまいそうになっていることが
恐ろしくてたまらなくなって、体の一部が次第にこわばってくるような手順を踏んだと
いう記憶は完全に喪失していた。
 テクニシャンが増えた。二人になっている。増えた独りの髪が、瞼の隙間から眼球を
こすりつけるので涙が出てくる。体がこわばってくる。ふいに、口の中に含みっぱなし
だった溶液の舌触りがザラリとしてきた。ザラリとするなと思ったとたん、口の中一杯
にザラリが膨れ上がって咽喉チンコを真ん中にして胃と肺の両方へとザラザラとなだれ
込んでいく感触がする。体中を這い回っていたはずのテクニシャンの鼻先と下先が遠く
なった。瞼を抉じ開けようとしていた長い髪が全身に巻きついてきているような気がす
る。
「罠だ!」
 私はそう叫ぼうとした。だがその叫びはひび割れた唇とこびりついた鼻くその隙間をか
すかにプーッと鳴らすにとどまった。もう、体は動かず、やけつくように熱くなった。
砂風呂に埋まっているような感触だろうか? いやそんな湿度は微塵も感じられな
かった。唾液も鼻水も溶液もみな干上がって、ただザラザラとした熱だけが体の内と外
とで押し合っていた。塩釜の魚はこんな感覚だったのかもしれないと思う。だが私は塩
釜の料理をちゃんと見たことが無かったので、その想像は、鯛の形に整形された砂糖に
しかならなかった。
 すっかり塩の塊になってしまった私は、結局、あの沙漠の塔から落下して、熱い赤い砂
の深く深くに埋もれたまま、ミイラになっていくのだったと気が付いた。勤怠管理部も、
福利厚生部も、みな落下する間の走馬灯であった。私は砂の塊になった。(20170604) 
 
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