KISARAGI

KISARAGI vol.902


カテゴリー: 2017年03月05日
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K I S A R A G I vol.902                               2017/03/05
                                             編集/発行:みやこたまち
                         E-mail:tamachim@yahoo.co.jp
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今週のお話

◆ "古典へのいざない" [674]
   春雨物語 [186] 樊カイ [39]
   作者 たまさん

◆ 連続愛の小説 E [20]
  作者 みやこたまち

◆ 空想技術集団 [19]
    作者 みやこたまち

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古典へのいざない [674]

 春雨物語 [186]  樊カイ[39]                  作者:たまさん

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 樊カイ《はんかい》は火を切り出して縄につけ、上から中に放り込んだ。
二人が見回すと、確かに金蔵《かねぐら》だった。二階から梯子《はしご》
で下りてから改めて確認すると、金銀が入った箱が幾つも重なっている。
「今回は金だけにしておけ」
 そう言って樊カイは一箱、二箱を肩に担ぎ、二階に上がった。
「さて、これからどうしたものか。その辺りに縄などはないか」
 辺りを調べると、太い麻縄が束ねて置いてあった。
「樊カイ殿、これがありました」
「その縄をお前たちのどちらか一人の身体にくくりつけて、物を伝って上っ
て来い」
 小猿が自分の身体を縛り、月夜に梯子を二階まで引き上げさせ、これを壁
に立てて這《は》い上った。あと少しだと焦る小猿に、また錫杖《しゃくじ
ょう》を差し伸べて引き上げた。
(続く)
                                  ★

 樊カイたちは侵入した金蔵で財宝を見つけ、金を運び出す準備を始めまし
た。
 この続きは次回にお届けします。それではまた。


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 趣味で読んでいる古典文学の現代語訳と参考文献を主に掲載しています

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 写真日記を綴っています

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連続愛の小説 E [20]

e-4 生き難い魂 [e4-9]                 作者:みやこたまち

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e4-9

 それからひと月ほどで、二学期の期末テストを迎え、二日目の古文の試験監督
としてその教師がやってきた時、私はワケあって学校指定の上履きとは別の靴を
履いていた。学校指定の上靴とは、便所のスリッパのようなもので、私は入学し
てから4回ほど買い直していた。そして当日の朝、五回目の紛失が起こったのだ
が、購買に買いに行く時間がなかったため、急きょ、体育館シューズを履いて古
文の試験に臨んだのであるが、出席番号順に並ぶと折悪く私は先頭の席であり、
しかも椅子と机は小さかったので、どうしても足を机の前に投げ出すような恰好
になるのだ。
 当然、教師は私の靴に目を付け、靴を何度も蹴りつけながら、私の列には試験
問題を配らないと言い始めた。
 私は靴を脱ごうとしたが、勢いあまって、両方の靴が教卓まで飛んでいき、バ
タンバタンと派手な音を立てて転がった。傍から見れば非常に反抗的な態度に見
えただろう。教師は激高し、私の足を横ざまに蹴りはらった。その勢いで、私は
机の上でバランスを失い、足と反対方向、つまり教師が立っている方向をめがけ、
弧を描いた。正面のやや左に立ち、左から右へと蹴りはらった教師に対し、私は
左半身から床にむかって弧を描いていったわけだ。その時私は右手に削りたての
鉛筆を握っていた。2Hの鉛筆の芯を長めに削り出すのが私の決まりだった。蹴
りはらった私の足が右へ流れたため、ふんばりがきかなくなった教師の身体もま
た、私の左にむかって沈み込んだ。その教師の左のこめかみに、私の右手が追い
ついた瞬間、ブチ、という気持ちの悪い感触が肩まで駆け上ってきた。教師が私
の左の床にうつ伏せに倒れ、その上に私が落ちた。横ざまに落ちたため、咄嗟に
躰をかばおうとして、私は左ひじを出していた。その肘が、どうやら教師の頸椎
あたりへ鉛直に突き立ったらしい。
 椅子と机がぶつかりあう音が響く教室は静まり返っていた。 僕の身体の下で、
ブヨブヨと震える教師の身体は気持が悪かった。
 私はその場に立ち上がり、テスト用紙を後ろに送ると、靴を拾って教室を出た。
足がジンジンとして、頭がぼんやりとしていた。(20170305)

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空想技術集団 [19]

3 勤怠管理部の氷の女と福利厚生部の水の女 9
                           作者:みやこたまち
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3-9

 落下の終了はつねに、身体、内臓、気持 の順番に終わります。いくら低反発クッ
ションの塊が「息子よ!」とばかりに包み込んでくれたとしても、速度の急速な変化は、
重力の増加として感じられ、自らの体重によってへしゃげるほどの衝撃を受けねばなり
ません。
「グェッ」というオオマトペは、擬音語であると同時に擬態語でもあるという教科書の
挿絵のような感じで、僕が押し込められたのは、再び暗くて狭い場所でした。
「アルビヤ? アヤノ? さん?」
 切れ切れの半疑問系で鈴のような声が響きました。確かに、響きました身体じゅうに。
この振動に伝わり方は……
「勤怠管理部? から? ことづかる? こと?づかっておりますアルビヤさん?アル
ビヤ?アヤノさん?」
 これは、呼びかけられているのだと気付いて、私は返事をしようとしました。が声が
出ません。声を出すための材料が足りていないのだと気付いた僕は、息を思い切り吸い
込もうとしました。が、吸い込めません。もはや、肺は一杯に膨らんでいて「もうたべ
られないよぉ」状態なのです。知っています。これは、気胸です。または、肺水腫です。
私は乙種蘇生法講習を受けているので、呼吸に関しては詳しいのです。このままでは、
窒息してしまいます。慌てて、手を振り回そうとしました。ひじょうに重く、何かが纏
わり着く感覚があります。足も同じです。四肢の運動麻痺と発語不具合。これらは神経
系のトラブルと考えられます。落下のため脊椎を損傷したか、酸欠により脳がダメージ
を受けているのかのいづれかでしょう。
「タンク? 内?で暴れないで下さい。いい? ですか? アルビヤアヤノさん。アル
ビヤ? アヤノ? さん。あなた? はタンクの中にいるのです? から?」

 タンク? 私の脳内を、様々なタンクが巡りました。それはとても錯乱に似ていまし
たが、脈絡はありました。そういえば息苦しさもありません。タンク? 厚生部のイル
カチャンではないでしょうか。
 勤怠管理部で、認証エラーとの判断を下された私に、地媚型端末はこう告げました。
「社員証発行のため、厚生部へ送ります」と。(20170305)

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