KISARAGI

KISARAGI vol.899


カテゴリー: 2017年02月12日
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K I S A R A G I vol.899                               2017/02/12
                                             編集/発行:みやこたまち
                         E-mail:tamachim@yahoo.co.jp
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今週のお話

◆ "古典へのいざない" [671]
   春雨物語 [183] 樊カイ [36]
   作者 たまさん

◆ 連続愛の小説 E [17]
  作者 みやこたまち

◆ 空想技術集団 [16]
    作者 みやこたまち

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古典へのいざない [671]

 春雨物語 [183]  樊カイ[36]                  作者:たまさん

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 樊カイ《はんかい》たちは城下町にたどり着いた。
「ここは某《なにがし》殿の治める国で、とても豊かで人も多いことで知ら
れております。この家は国守の一族ですが臣下に下り、北陸道に並ぶものの
いない大金持ちです」
 月夜たちが語った通り、その屋敷は石垣を高く積み、白壁がきらきらと輝
き、門構えは高く、邸内も広かった。
「俺は盗人になったが、未だに一度も盗んだことがない。今夜、この家に入
って試してみよう」
 周囲をくまなく見て歩いてから居酒屋に入った。
「酒を温めてくれ。四人で一斗を買おう」
 そう言いながら樊カイは金を前払いした。店主はとても驚いたが、先に勘
定を払ってくれたので言われた通りに燗《かん》をつけて出した。
「酒の肴はないのか」
「山のものがございます」
 兎や猪の肉をあぶったものを喰らい、心ゆくまで酒を飲んでいるうちに日
が暮れた。一同は「いざ」と言って、先ほどの家に向かった。
(続く)
                                  ★

 樊カイたちは城下町にある金持ちの家を次のターゲットと決め、景気づけ
に近くの居酒屋で大酒を飲みました。
 この続きは次回にお届けします。それではまた。

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HP
「かたかご」http://yamanekoya.jp/
 趣味で読んでいる古典文学の現代語訳と参考文献を主に掲載しています

「山猫屋本舗」http://yamanekoya.net/
 写真日記を綴っています

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連続愛の小説 E [17]

e-4 生き難い魂 [e4-6]                 作者:みやこたまち

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e4-6

 どうも余談にかまけすぎたようだ。結婚後のみづはと私との間にあった、いくつ
かの交渉ごとについてはもう少し後から綿密に書くはずだったのだ。今話していた
のは、尾花友希のことだった。そう。尾花友希の結婚についてだ―

 尾花、というのは私が知る限り彼女の二番目の姓だ。それは彼女の母の何番目か
の夫の姓であり、そのような姓の変更を彼女は三回は行っていた。
 彼女は自分の、いわゆる生物学上の父の顔を知らないという。だが彼女が自らの
余命を知った後、その生物学上の父の姓で死ぬことを望み、そのように手続きをし
たのだと聞いた。その姓がどういうものだったのか、私は知らない。前にも書いた
ように、その頃にはもう私は彼女との交流を断っていたからだ。

 私にとっては、高校1年生の時の「尾花」が彼女のシンボルであった。だから、
彼女が結婚して姓が変わった後で、手紙を書くときなどには、まるでゴッコ遊びを
してでもいるかのような愉快さを感じていた。芸名というか、役名というか。

 旧姓尾花友紀は、結婚生活という演劇に興じていた。そしてその演劇は、喜劇で
はなかったし、芸術的色彩も皆無だったようだ。
 私にとっては、初めて、彼女の陰鬱な様子を知ることができたという点で、ひ
じょうに有意義な期間だったし、その陰鬱な彼女と向き合うのに、「新幹線なら二
時間半という距離」のあるのがありがたかった。
 当時もし、私も都内に住んでいたとしたら、彼女からの電話のたびに、終電に飛
び乗り、始発までファミレスで話を聞くことになっただろう。
 実は私は、そのように時を過ごすことにやぶさかではない。だが、仕事しなけれ
ば食えない身としては、徹夜明けの身体をひきずって、細かな製図作業にいそしむ
苦痛になど耐えられるものではないのだ。

 だが、本当のところ、もし私が彼女の近所に住んでいたのだとしたら、多分彼女
は私には連絡をしてこなかっただろう。彼女が彼女自身に陰鬱さを許すとき、その
姿を見せる相手は、なるべく遠くにいるほうがよかったのだと思う。
 手紙では、自己解決を演じてしまうだろうし、面と向かっては、十分に落ち込む
ことができなくなる。だから、深夜の電話だったのだと思う。

 私は彼女が高校生の時にこうした陰鬱さを露わにしていた相手について、考える。
当時は「害をなす夫」という切迫した状況にはなかったとはいえ、当時は当時なり
の切迫した事情を飲み込んで生きてきたはずなのだ。

 高校時代の彼女はまん丸い鼈甲柄のめがねの奥で、ただ目を細めて笑っていた。
 高校を卒業すると、彼女はコンタクトレンズを使うようになり、大きく見開いて
驚き、その目をゆっくりと閉じて微笑んだ。
 思うに、彼女は高校生活の全てを自らの夢に呑みこんでいたのだ。一人暮らしが
できるその時まで。(20170212)

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空想技術集団 [16]

3 勤怠管理部の氷の女と福利厚生部の水の女 6
                           作者:みやこたまち
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3-6

 僕はそのご宣託の意味を即座には把握できませんでした。認証エラー? この社の
完璧な社員管理システム内にあって、僕が僕だと認証されないなどということはおこ
りうるはずはないのです。いつの間にか溢れていた涙が頬を伝う生ぬるさが、極北の
鉄路のように凍てつき始めるのに、さほどの時はかかりませんでした。

「どどどどういうことでしょうか?」

 僕は彼女のほうへにじりよろうと、腰を浮かせました。その浮いた尻と僕の背骨と、
視線とが、地媚型端末の膝小僧と膝小僧との隙間と一直線を形成する瞬間に、120%
正確なショットが尾てい骨の数ミリ下部にヒットしたのです。
 そうです。ビリヤードのキューのような細く固く長くしなやかな黒光りする棒状のも
ので。

 あと数ミリ上であれば、僕の尾てい骨は砕けていたでしょうし、あと数ミリ下で
あったなら、その素敵に長い棒は、僕の… ああ、みなまでは言いますまい。もしかし
たら、その棒は私の腸壁をまっすぐに貫いて彼女の秘部を刺し貫いていたのかもしれな
いとだけ、申しておきましょう。(20170212)

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