KISARAGI

KISARAGI vol.647


カテゴリー: 2012年04月15日
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K I S A R A G I vol.647                             2012/4/15
                        編集/発行:みやこたまち
                      E-mail:tamachim@yahoo.co.jp
                      http://mgkisaragi.web.fc2.com/index.html
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◆古典へのいざない【444】 西行物語[11]   作者 たまさん

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 涅槃経《ねはんきょう》の三馬《さんめ》の比喩通りに早く世を捨てたこ
とを、西行は嬉しく思った。心を鎮めて思い返せば、たまたま仏法に出会い、
因果の理《ことわり》を知り、幸いにも善縁に近づき、菩提《ぼだい》の妙
道《みょうどう》を聞くことができた。
 どの宗派も学ばず、いかなる修行もせず、仏性《ぶっしょう》を持ってい
るにもかかわらず、流転の妄業《もうぎょう》を重ね、現世離脱のきっかけ
を失うのは、返す返すも愚かなことである。この現世一代だけでなく、後生
にはいよいよ流転の業《ごう》によって、六道《りくどう》を巡り、四生
《ししょう》の形骸《かたち》に苦しみ、無限の生死を経験し、多くの苦し
みに沈むのは何ともあさましいことだ。
 剃髪染衣《ていはつぜんえ》となったら戒儀《かいぎ》を守り、欲を捨て
愛から離れるべきなのに、妻子を持ち、三毒五欲《さんどくごよく》を欲し
いままにし、五戒十善《ごかいじゅうぜん》を守らなければ、無常《むじゅ
う》の殺鬼《さっき》が貴賎を選ばず襲い、別離の魔業《まごう》が老若
《ろうにゃく》を問わず苦しめるのが決まりなので、現実と理想は異なり、
楽しみと苦しみが同居するのだ。
 だからこの機会に恩愛《おんあい》の絆を切り、無為《むい》の家に住み、
俗塵《ぞくじん》を捨てて、道門《どうもん》にはいることが嬉しく、西山
の辺りに柴《しば》の庵を結んで住んだ。

  さびしさに耐へたる人のまたもあれな
  庵並べむ冬の山里
 (寂しさに耐えている人がいて欲しい
  冬の山里に庵を並べるような人が)

  身の憂《う》さを思ひ知らでややみなまし
  背く習ひのなき世なりせば
 (この身の憂さを知らないままであっただろう
  出家の習わしのない世であったならば)

(続く)
                                  ★

 出家直後の西行が、喜びをつらつらと語っています。
 なお、訳しきれない仏教用語をほぼそのままにしてあるため、読みにくく
て大変申し訳ありません。意味が分からなくても本筋にはあまり影響しない
ため、漢字から何となくニュアンスを読み取ってもらえれば幸いです。
 続きは次回にお届けします。それではまた。
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■薄紅通夜 第六部                       作者:みやこたまち

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 その知らせを受けたのは、全ての支度が終わり、両親と談笑をしていたと
きだった。ゆったりとした揺れと、さんざめくような波光が、部屋を和やか
にしていた。ノックがして、光沢のあるグレーのスリーピースの男がぎこち
なく控え室へ入ってきた。その後ろには、船長らしき男と、看護婦がついて
きていた。
「本日はお世話になります。」
 祥子は、式直前の挨拶なのだろうと思い、美しいドレスの裾をつまんでお
辞儀をした。するといきなり、傍らに座っていた母親が、祥子の手首をつか
んだ。
「痛い!」
 祥子はそう言って、母親を見下ろした。その顔は普段よりも念入りにした
化粧のためだけでなく蒼白で、手は小刻みに震えていた。
「どうしたの、お母さん。ね、お父さん。お母さんが・・・」
 隣の父は、いつの間にか立ち上がっていて、祥子が話していることにかま
わず、そっと祥子の肩に手をかけて、一緒にソファーに座らせた。母親がす
かざず祥子のもう一方の手をとり、互いの両手としっかりと重ね合わせた。
「何が、ありましたか?」
 これほど重厚な、そして悲しみを予見した声を、祥子は聞いたことが無か
った。母の頬を涙が伝っているのが見えた。
 スリーピースの男は鎮痛な面持ちで、船長の方を見た。船長は首を縦にで
もなく、横にでもなく振った。それから船長は看護婦にむかって少しうなず
いた。看護婦は大きく目を見開いて、ゆっくりと祥子達の座っているソファ
ーの横へ歩み寄った。
 父は男を凝視している。母は嗚咽をこらえている。祥子は何か不吉なこと
がもたらされたのだと知った。両親が何故そんなに早く事態を察することが
できたのかは、わからない。だが、この日、この時に、それほどまでに深刻
な不幸とは、祥子にとって、何らかの事情で式が挙げられないという事態し
か思い浮かばなかった。
―何か不都合ができて、それで、神妙に謝罪に来たのではないだろうか。そ
れとも、これは何かのどっきり企画なのではないだろうか。両親も仕掛け人
で、最大の不幸を知らされた後で、樹記が登場して、「大成功」というので
はないだろうか。樹記。樹記は今どこで何をしているんだろう。どこかで、
この仕掛けられた悲劇の舞台を眺めているのではないだろうか。
「何でしょうか? はっきりとおっしゃってください。」
 祥子は母親の手を握り返し、父親にむかって気丈にうなずいて見せた。
「先ほど、後藤樹記様が、亡くなられました。」
 男と、船長が深々と頭を下げたところまで、祥子は記憶していた。
 気がつくと、祥子は山間の病院の二階のベッドに横たわり、深い緑の山々
を眺めていた。
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