KISARAGI

KISARAGI vol.369


カテゴリー: 2006年11月05日
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K I S A R A G I vol.369                              2006/11/5発行
                          編集/発行:みやこたまち
http://miytako.hp.infoseek.co.jp    ★ E-mail:tamachim@yahoo.co.jp 
                
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まだまだ暑い日が続きますが、朝晩は冷え込みます。秋空の透明感には程遠い、
何か霞がかかったような空気感が少し嫌ですが、夜空はさすがに綺麗です。
今年はあまり虫が鳴きません。11月? そうか。夏はもう終わったんですね。
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◆古典へのいざない【212】     とりかへばや物語[162]  作者 たま さん

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 賀茂祭も過ぎた四月二十日過ぎ、特に内裏の行事がなく手持ち無沙汰だっ
た右大将は、以前に尚侍が話のついでに口にした麗景殿の細殿の事をふと思
い出して足を運び、佇んでいた。
 麗景殿の女は、右大将と何という事もなく親しげに語り合った夜の事を忘
れる事が出来ず、世間から姿を消した時もかつて歌に詠まれたように、ただ
我が身一つの事として恋しくも悲しく思い続けていた。今宵もしんみりと端
を眺めていると、夜目にもはっきりと右大将の姿が見えた。間違いないと確
信すると、驚くほど音沙汰がなくて幾月も過ぎた事を恨めしく思ったが、心
が騒いで何か言わなければと思っても言葉が出なかった。しかし、姿を見た
事だけは相手に伝えたくて歌を詠んだ。

  思ひ出づる人しもあらじものゆゑに
  見し夜の月の忘られぬかな
 (わたしを思い出してくれる人はここにいませんが、
  わたしはあの夜の月を忘れられないのです)

 右大将はその嘆きを聞いて、これは聞いていた女に違いないと思い、自分
と同じ思いでいた事に感じて近くに寄った。

  驚かす人こそなけれもろともに
  見し夜の月を忘れやはする
 (私の心を騒がすような女はいませんでしたが、
  貴女と一緒に夜の月を見た事を忘た事はありません)

 右大将の声や気配は朝夕聞き慣れた人でも聞き分ける事が出来ないので、
麗景殿の女は相手が依然とは別人だとは思いも寄らず、前と同じように親し
げに様々な事を話して立っていた。昔もこのように夜毎に逢って話していた
ので、世間普通のように乱暴に振舞う事はあるまいと油断していたが、一方
の右大将は思っていたよりも奥ゆかしい女を見過ごし難く、急に屋敷の中に
入ると戸を閉めてしまった。
「……思い掛けないほど興醒めな心ですね」
 女は驚き呆れて右大将をたしなめようとしたが、右大将はとても落ち着い
た様子で女をなだめて隔てなく身を寄せてくるのでどうしようもない。女は
この幾月の間の待ち遠しさに思い余って声を掛けてしまった悔しさが今にな
って思い知らされて泣き出してしまった。普段、接している女達とは異なり、
奥ゆかしくて世慣れた宮仕え人ではない事に気づいた右大将は気の毒にも思
い遣りのない事をしてしまったと後悔したが、ただ今は親しみを込めて熱心
に語った。
(続く)
                                   ★

 尚侍が男姿だった時に出合った麗景殿の女――右大将はふとこの話を思い
出して足を運びました。相手は別人だとは思いも寄らずについ気を許してし
まいますが、右大将はそのまま彼女を押し倒してしまいました。
 この続きは次回にお届けします。それではまた。

※これまでの「とりかへばや(とりかえばや)物語」の現代語訳を
 以下のURLでまとめています。
 http://homepage3.nifty.com/miztam/change/

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ジャンル:古典レビュー
メール :miztam@gmail.com
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     【山猫屋本舗】http://yamanekoya.net
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デスノートとスケ番刑事を見てきます。あ、先程スカパーでシュートボクシング
S−CUPトーナンメトをやってました。アンディーサワー三度目の王座ならず。
日本人が優勝してました。裏番組で、極心のウエイト別トーナメントもやってま
した。なんとなく、見てました。正月は「犬神家の一族」を見ます。
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◆きせい 【百七】                            作者:みやこたまち

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川の流れに身を任せ 2

川原を離れると、急角度にそびえる鉄階段にとりついた。これで10メートル
程の高さのコンクリート護岸を上る。階段は全てが錆びていてところどころ、
腐食し穴が開いている。踏み板も錆びて丸まっていたり、薄くなっていたりす
る。手すりもブラブラだ。あと数十メートル下れば、アスファルトの取り付け
道路があることは知っている。だがそこに行く途中にある、むやみと広い川原
を横切るのがたまらなく嫌なだけだ。
 私がそこに「賽の河原」と名づけていることは誰も知らない。失業している
時、その場所へ行って寝ころぶと、川原と空しか見えなくなる。忙しい川のせ
せらぎが遠くから聞こえてきて、それよりも乾いた風の音ばかりが耳元で渦巻
いて、なぜだかいつでも茶色くなったススキが二三本揺れている感じがして、
午前も午後も、早朝も黄昏時も、そこだけはいつも、午後の4時25分みたいな
太陽の光の色をしている。そこにいると、あと2分ちょっとで義務を果たさねば
ならないのだ、という焦燥に駆ら、でもそんな義務はぶっちぎるんだ、という
罪悪感に苛まれるのだ。汗びっしょりの毛布に意地でくるまって、家を出なけ
ればならない刻限まであと2分ちょっとだという感覚。つまり、全く落ち着か
ない場所なのだが、私は失業しているとき、実によくそこに行って、そして、
はっきりと覚醒したままうなされ続けていたものだ。
 階段を上り終えると、申し訳程度の松林が川を隠して、がけ下にコンクリー
との長い格子をこしらえて確保した人口の土地に住まう人々の家と、生活道路
をはさんだ平屋の長屋が軒を連ねている。道は川から緩やかに上っていく。

つづく
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ジャンル:小説
メール :tamachim@yahoo.co.jp
HP  :【電網 昼行灯】http://www1.odn.ne.jp~cak87430/index.htm
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今があるのは過去の様々な出来事の延長線上だっていうことを知ることは大切。
今が大事、自分だけが大事なんて不遜な姿勢が、歴史に対する甘えだってこと
を知らないと恥ずかしい。むしろ、今よりも未来、自分よりも人類。多数の幸福
のために少数を殺戮するばあい、どのくらいの比率なら正義ですか?ところで。

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