KISARAGI

KISARAGI vol.341


カテゴリー: 2006年04月16日
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K I S A R A G I vol.341                               2006/04/16発行
                          編集/発行:みやこたまち
http://miytako.hp.infoseek.co.jp    ★ E-mail:tamachim@yahoo.co.jp                 
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文学史31

さて、文学史といっても歴史に興味があるわけでもなく、現在になんらかの意味
をもたせんがために、過去を検証しようというほどの情熱もなく、連綿と続く先
人の営みに埋もれていた自身の営為を発掘せんがためのプロパガンダという程の
才能もなく、今が最も新しい過去であるという一点のみ過去に優越しているのだ
と信ずる者達の、あまりにも陳腐で片手間な小説との戯れに憤りをおぼえつつも、
その憤りですら自身の発案ではないという体たらくに、学術的な方向から、メス
を入れてやろうと思わなくも無いが、それだけの知識もないといった場合、文学
史は、なにがしかのよりどころにはなるものではなかろうか。無論、そこから何
かを汲み取れるわけもないのだが。昔の人は凄かったんだ、へぇー、というバカ
みたいな感心を見つめるところからでもやりなおそうかと思ったりする。
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◆古典へのいざない【185】     とりかへばや物語[135]  作者 たま さん

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 帝は東宮の病の心配も心配だったが、かつて尚侍《ないしのかみ》へ寄せ
た思いが忘れられず、東宮の傍に付き添う有様をぜひ見たいと思っていた為、
病気の見舞いにかこつけて梨壷に行こうと思った。ある静かな昼のこと、前
もって知らせないで人目を忍んで梨壷に行き御帳の後ろにそっと隠れて様子
を見ると、東宮は厚めの白い御衣を頭から引き被って休んでいた。尚侍は少
し引き下がって薄色の単を八枚ばかり重ね、上着は色の似通った袷《あわせ》
の織物で袖口を長く引き出して口を覆い隠して添い伏していた。思わずその
可愛らしさ目が止まった。愛敬は辺りにも零れるほどで右大将と瓜二つだっ
たが、右大将は年を重ねるにつれて着高く優美な風情が他に類を見ないほど
素晴らしくなっていったが、一方の尚侍はただ見ているだけで思わず微笑ん
でしまうほどで、どんな深刻な悩みも忘れてしまいそうな魅力がこの上なかっ
た。
 評判だった尚侍の容貌をこれまで何年も見たいと思い続けていたが、まだ
これ程の機会しかなく、また今日まで見る機会がなかった事が悔しくて気持
ちを抑え切れそうにない。
「今でも入内は難しいと思えない。これほど不満な点がない人なのに、父・
左大臣は役立たず無用な女であると宮仕えを諦めてしまったのだろう。人見
知りが激しいと聞いているが、それを聞いたら左大臣は自宅に閉じ込めてし
まうかもしれない」
 帝は不安な気持ちで落ち着いていられず、自分の気持ちを静める事が出来
そうになく心が焦るのも宿縁なのかもしれないと思っていた。
 心を落ち着けて更に見ていると、白い薄様で包んだ文が結んだまま東宮の
傍らにあるのを少し及び腰で取るその手つきや、傾けた顔に掛かる髪の艶・
その下がり端が目がくらむほど素晴らしい。衣の裾の上にたれている髪はそ
れほど長くはなさそうで背丈ほどのようだが、袿の裾に八尺も余る程の髪よ
りも愛らしく見える。
「ああ、今朝も返事がないと心配していると思いますよ」
 尚侍は小さく溜息を付くと手紙を引き隠した。右大将が東宮に向けた手紙
に違いないと帝は納得した。
 そのままいつまでも立って見ていると、宣旨の妹にあたる中納言の君がやっ
て来た。
「帝がこちらに来ているそうですが、どこの物陰に隠れているのでしょうか」
 そう言ってあちこち覗き込みながら帳の帷を下ろしているので、帝はその
場から立ち去り、今ちょうど来たような振りをしてその場に腰を下ろした。
(続く)
                                   ★

 尚侍と帝の初顔合わせの場面です。帝は一目で尚侍の美しさに魅かれ、ぜ
ひ入内させたいと考えているようですが、尚侍はまだそんな帝の心中に気付
いていません。


※これまでKISARAGIに掲載した「とりかへばや物語」の現代語訳を下記に
 まとめました。
 http://homepage3.nifty.com/miztam/classic/change/

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ジャンル:古典レビュー
メール :miztam@nifty.com
HP  :【かたかご】http://homepage3.nifty.com/miztam/
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あまりにも変わらない事をどのように評価すべきか? たとえば、赤い眼鏡を見
て、立喰師列伝を見る。途中でご先祖様万々歳と、Talking Head をみて、
うる星やつら2 Beautiful Dreamer を思い起こすとき、この執拗なまでの変わ
らなさは何だろうと思う。こうかく、パト、迷宮、天使の、レムナント、ケルベ
ロス、ナバ、etcetcetc・・・
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◆きせい 【七十九】                            作者:みやこたまち

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温泉を出て夜が白々明けるまで 5
 
 夜の川で砂金を掬うには熟練が必要だ。女はそんな言葉を思い、首筋をぞくり
と震わせる。流れる川面に映る月光を何よりも愛していた。そんな風景は大抵は
橋を渡る時に見下ろせるのだった。橋を渡るとマンションがあって、そこにはピ
ンクと水色のファブリックでくるまれた、暖かな部屋があったのだ。私の部屋。
そこには、小さいながらも、きちんとした楽しさや、凛とした清潔さがあった。
夫はそうした規律のようなものに、全く関心を払わなかった。やめろ、とさえ
言ってくれなかった。ああ、この人はこの部屋を作り上げている細やかな物達
を顧みる心を持っていない人だったんだ。なぜ、今更そんな事を思い、その思い
に縛られ、苦しめられ、耐えられなくなってしまったのか、分からない。川を
浚っていると指先にまつわりつく長い長い黒髪。夫はその髪を全く何の感情も
動かさないまま、つまみとって捨てるのだ。たとて、その髪の先に、私がから
めとられていたとしても・・・

つづく
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ジャンル:小説
メール :tamachim@yahoo.co.jp
HP  :【電網 昼行灯】http://www1.odn.ne.jp~cak87430/index.htm
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