KISARAGI

KISARAGI vol.251


カテゴリー: 2004年07月18日
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K I S A R A G I vol.251                               2004/07/18発行
                          編集/発行:みやこたまち
http://miytako.hp.infoseek.co.jp     ★ E-mail:tamachim@yahoo.co.jp                 
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楽しい生活してますか? 夏はすっかり蝉まっさかり。海に、川に、二階にと、
どしどし繰り出していますか? 私は社会待機中で、ほとんど仕事しかしていま
せん。フランス一周自転車レースは欠かさず見ています。昨日は、六時間の生中
継でした。休日の半分はこれで費やされます。あとの半分、どこへいったんでし
ょうね・・・

それでは、今月もたまさんの作品から、いってみましょう。100回。大感謝です。
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◆古典へのいざない【100】     とりかへばや物語[50]   作者 たまさん

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 中納言は疎遠にならぬように吉野山の峰の雪を踏み分けて通ったが、そん
な中納言に対する右大臣の恨みはとける間もなく月日は儚く過ぎ去り、つい
に四の君の出産が間近となった。右大臣は娘の出産を危惧し、絶え間なく読
経・修法《ずほう》を行わせた。左大臣も不審に思いながらも、世間から不
審に思われないようにと祈祷を始めた。
 邸内に満ちる程まで祈祷を行った効験か、かねてから気分が優れず苦しん
でいた四の君であったが、予想以上に安産で、可愛らしい女の子が生まれた。
望み通り末は后になるのではと思われる程の美しさであったので、右大臣は
大喜びし、産屋の儀も善美を尽くし、その支度も慣例以上のものであった。
左大臣も湯殿《ゆどの》の儀まで配慮をし、度が過ぎる程であった。
 右大臣邸の人々が甲斐甲斐しくあやしている赤子の顔を見た中納言は、間
違いなく宰相中将に似た顔立ちだったので、「やはりそうか」と胸がつぶれ
てくる。昔から隔てなく親しく付き合ってきた相手だけに、さぞかし自分の
事を奇妙で愚かだと思っているに違いない――恥ずかしさと情けなさに、胸
が痛くなる思いだった。
 出産の名残で綿などを頭に被り、窮屈そうに包まれて伏している四の君の
ところに近寄り、「少し聞きたい事がある」と声を掛けた。程なく四の君は
目を覚まし、中納言を見上げた。何でもない時でさえ立派で顔を合わせにく
いのに、心中に思うところがあるのでよけいに目線を合わせる事が出来ずに
いると、中納言は微笑を浮かべながら、「この歌をどう思いますか」と前置
きをした。

  この世には人のかたみの面影を
   我が身に添へてあはれとや見ん
 (この世にある限りは、他人の面影を宿した子を、
   我が子として見続けなければいけないのでしょうか)

 四の君は恥ずかしさに何とも言えず、黙ったまま夜具に顔を隠してしまっ
たが無理もない。
 ともあれ、このまま生き長らえるのならいざ知らず、世間の人があれこれ
取り沙汰する言葉が四の君の耳に入る事はそれほど気にならない。だが自分
が世間並みでないのが原因で、あれこれ考えても言葉にしても悩みは尽きず
涙が零れた。こんなに大騒ぎしている時に縁起が悪いと思われるのは煩わし
いと中納言は四の君の傍を離れたが、残された四の君の心中は苦しくて死ん
でしまいたい程であったが、他人にはどうしてその苦しみが分かろう。
 右大臣の北の方が産湯の役、左大臣の北の方が迎え湯の役などをして喜び
騒いでいるのに、中納言の様子が無関心すぎると目を留める人もいるが、
「人柄が物静かなので自分を抑えているのだろう」と見なしていた。
(続く)
                                   ★

 四の君の子どもが生まれました。その顔を見た中納言は、相手が宰相中将
であると確信します。皆が喜び騒ぐ中、中納言、そして四の君はそれぞれの
憂いを胸に苦しんでいます。
 この続きはまた次回にお届けします。それではまた。
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ジャンル:古典レビュー
メール :miztam@nifty.com
HP  :【山猫屋本舗】http://homepage3.nifty.com/miztam/
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人間は、誕生日を越えたあたりが峠で、一年間という区切りを生まれた頃から
刷り込まれてきたあかつきには、やはり一年経過までのプレッシャーとは無縁で
はいられないのだなと思いつつ、心臓が500億回鼓動したら、終了。とかいう
言伝えだって、あながち・・・

じゃ、いつものあれ、いってみましょう。
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◆そののちのこと【59】                           作者:みやこたまち

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−前文略で失礼するよ。もっとも遺書に時候の挨拶もないものだがね。君のとこ
ろに、女がいっているだろうか。いっていないようならば、この手紙は間違いだ
から燃やしてくれたまえ。

−もし君のところに女がいっていたら、女に説明してやってくれ。君には直接関
係の無いことだったが、僕は個人的に君の事を知っていたので、ちょっと利用さ
せてもらおうというわけだ。君ほどの頭脳を持っていれば、僕のこの血に潜む魔
性を、筋道立てて説明してもらえるのではないかと思う。他に頼める者はいない
し、下手に騒ぎ立てられても困るのでね。君ならばそんな愚かな真似はしないと
信じている。

−さて、何から告白したものか。いろいろあるような不思議な気分だ。僕は以前
君に会っている。君はそれには気づいていないのだろうがね。大学の何年だった
か、単位登録にいった学生課の窓口で、僕は君がぼんやりと立っているのをみか
けたのだ。そのとき、なぜ、それが君であると分かったのかは、分からない。お
互い同世代に流れる共感とでもいえるのかもしれない。君はそういうものからは
無縁のところにいたようだから、そういうのだよ。僕はすぐに学生課を覗いて、
君の書類を覗き見した。住所はそこで知ったのだ。同時に君が大学でどのような
立場にあるのかを知った。僕は君を恨んだよ。最初からかなわないじゃないか。
全く、僕はその時から密かに君を見返す時を待ちわびていたのだが、結局、女の
ためにそれどころではなくなってしまった。

>以下次号
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ジャンル:小説
メール :tamachim@yahoo.co.jp
HP  :【電網 昼行灯】http://www1.odn.ne.jp~cak87430/index.html/
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書見棚 その57-*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*

ここは、みなさまの本棚のなかで今、目に入ったものを御紹介いただく棚です。
投稿が無い週は私の本棚で目についたものを紹介します。今週は

「獣たちの夜」押井守作です

こいつは、Blood The Last Vampireというビデオ作品、これは押井塾門下が製
作したものだったと思いますが、きれいな映像でしたし、ちゃんばらがかっこ
いいわけです。小説版としてのこれは、まさに薀蓄、理屈の雨あられ。吸血鬼
伝説は、コウモリから、天使にまでつながっていく。天使の翼は、羽毛ではな
くて、皮系、蝙蝠風だったはずだというのは私の確信でもあるわけですが、も
う一つ、甲殻類系羽であった可能性も捨てがたいなと思います。これは本筋
とは関係の無いお話。

角川ホラー文庫  平成14年7月10日 初版  600円 
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それではまた次週お目にかかりましょう。

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 前編集者 仙ちゃん
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 初代編集者 牧瀬佑樹(マッキー)/スタック作家
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