KISARAGI

KISARAGI vol.235


カテゴリー: 2004年03月28日
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K I S A R A G I vol.235                               2004/ 3/28発行
                          編集/発行:みやこたまち
http://miytako.hp.infoseek.co.jp     ★ E-mail:tamachim@yahoo.co.jp                    
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年に一度のお楽しみ、「ローザンヌバレエコンクール」の放送があって、先程
終了しました。決勝に進む大半がアジア人となって久しいこの大会ですが、今
年は、韓国勢におされて、日本人女子が一人だけというちょっとさびしい結果
でした。体格の不利を表現力でカバーするのは、「美」に点数をつける種目に
共通の戦略ですが、バレエ(とくに女子)は、目を見張るものがあります。
今年は、女性解説者の毒舌がなく、残念でしたが、来年も楽しみです。

それでは、たまさんの「古典へのいざない」をお送りします。

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|連載|小説|
◆古典へのいざない【85】     とりかへばや物語[35]        作者: たまさん

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 その頃、吉野山に先帝の第三皇子で宮と呼ばれる人がいた。万事に優れ人
に遅れたところがなく、様々な方面の学問・陰陽道・天文学・夢解き・人相
といった、世間の人がする全ての事の道を極めていた。
 ――昔は遊学生《ゆうがくせい》といって十二年に一度、唐土に優秀な人
を派遣して学問を習得させたが、末代となって人の顔つきや性格がひどく悪
くなってしまった為に渡来する人もなくなっていた。だが宮は日本ではあま
りにも優れていたので、「ぜひ彼の地に行ってみたい」と熱心にお願いをし
て唐土へと渡った。
 唐土では宮を待ち受けて、
「これまでも日本人は大勢渡ってきた。我が国にも優秀な人材は数多いが、
これほど諸道に優れた人は見た事がない」
と賛嘆した。その国の第一大臣が、この上なく大切に育ててきた一人娘の婿
に迎え、心を込めて世話をした。そうこうするうちに二人の娘が生まれたが、
やがて母親は亡くなってしまった。
「異国の人であっても妻とは確かに心が通じ合っていた。この国の事は知ら
ないが、日本では偶然に女御や后・帝の娘を見た事があったが、これほどの
姿形の女性はいなかった」
 生前、宮は妻に深い愛情を抱き、日本へ帰る気も起きないほどだったので、
妻が死んだときの悲しみは例えようがなかった。このまま唐で出家してしま
おうかと思ったが、亡き妻の形見として残った姫君と別れるのは悲しく、思
い悩んでいた。
 だがやがて舅の大臣も悲しみの為に病で倒れ、遂には亡くなってしまった。
生活の便宜もなくなり、生きていけそうにもなく思っていたところへ、時の
大臣や公卿が、自分の娘の婿にどうかと申し込んできた。しかしもう再婚す
る気がなかったので、宮は全く聞き入れようとしなかった。そんな宮に逆恨
みする人が出てきて、殺そうとしているという噂が宮の耳に入った。惜しく
ない命とはいえ異国の地で死ぬのも悲しく、また自分を愛してくれる人がい
る時には故郷を忘れる心もあったが、妻や舅が死んだ今となっては生活しに
くく恐ろしい地だと感じるようになった。日本に帰りたい気持ちが生ずるよ
うになったが、娘達を見捨てるのはとても悲しい事であった。
「――かつて『させまろ』という人が『なにしう』という女性を連れて唐土
の海を渡ろうとしたところ渡る事が出来なかった事から、それからは女の渡
れない道であると聞いている。だが他に手はない。船を止める海竜王が現れ
たら、自分もそのまま旅の空に命を捨てよう。惜しくはない」
 宮は一途に決心し、亡き大臣の子ども達と相談して逃げるように帰路につ
いた。邪悪な竜王もどう心が変わったのか、海が荒れて船が停まる事もなく、
順風が船を送るように吹いて、無事に帰国する事が出来た。
(続く)
                                   ★

 少し本筋から離れ、今回と次回の二回に分けて、これからの物語のキーパ
ーソンの一人となる「吉野山の宮」と呼ばれる人の半生をお届けします。
 それではまた次回にお会いしましょう。

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ジャンル:古典レビュー
メール :miztam@nifty.com
HP  :【山猫屋本舗】http://homepage3.nifty.com/miztam/
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吉野山の宮登場ですね。長編は、さまざまな人間を深く掘り下げていけるのが
良いです。さまざまな人物を十二分に描写した後、それぞれの関係性によって
さらに複雑な世界が構築できます。ところで、つねに泥縄式にプロフィールを
捏造しつづける作者の文章にも、さまざまな人物がでてきますが、行き当たり
ばったりですから、収拾がつかないことが多々あります。「それが現実ってもん
じゃあありませんか。」と涼しい顔で、今週も連載をどうぞ。
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|連載|小説|

◆そののちのこと【45】                           作者:みやこたまち
      
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>「もう、すっかり分かりました。」と女が平板に言った。

>「何の話です?」 信夫は面食らってそう聞き返した。女は口元に薄笑いを浮
かべ、露になっていた腕を神経質そうに覆った。

>「私を捨てて、そうして今度はこんな策略を用いるのですか?」女が言った。
信夫には、全く思案の外の話だった。

>「私が、どんなむごいことをしたでしょう。あなたが愛想を尽かすような何を
したというのでしょう。それさえはっきりとさせて下すったら、私も覚悟のしよ
うがありましたものを。」

>信夫の片方の眉がつりあがった。

>「それが、別れば許すと?」 信夫の声は低く、そして強く響いた。女は陶然
となっていた。

>「私に非があるというのは、あなたが、私を邪魔にする正当な理由を証拠立て
下さらなければなりません。私がそれを認めて、それが私の中で不変であるとい
うことが納得できなくては、私はあなたを求め続けます。あなたが何処へ行こう
と、私はあなたを待ち続けるでしょう。そうすることで、あなたは確実に私とい
う人間の心の動きに縛られていなくてはならないのです。それにあなたは、私が
いるから、こうして生きていられる、ということを忘れないでいなければなりま
せん。私がいなかったら、あなたはあのまま、堕落していったに違いないのです。
あなただって、私だって、二人でいなくては駄目なのです。あなたは、それを分
かっていながら、ずるいことを考えたのでしょう。だから、黙って家を出たので
しょう。それでも、あのノートを残したのは、あなたの傲慢さに違いがありませ
ん。私があれを見つけることができたら、あなたは、あきらめて私という物を受
け入れようとなさったのでしょう。私は、あなたと過ごす間に、随分利口になっ
たのです。だから、あなたの考えを、知ることが出来たのです。」

>「何の話です?」 信夫は再び、そう聞き返した。

>以下次号
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書見棚 その43-*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*

ここは、みなさまの本棚のなかで今、目に入ったものを御紹介いただく棚です。
投稿が無い週は私の本棚で目についたものを紹介します。今週は

「ポオ小説全集 1」 エドガー・アラン・ポオ作 です。

大家とよぶにふさわしい。でもあんまりちゃんと読んでません。かすかな記憶
を辿ると、「すごい。」という読後感がたしかに残っているんですが、短編集
の、どの話だったのかが、思い出せない。ゴシックロマン風のものだったか、
推理小説のさきがけとなった話だったか、それとも怪奇小説にだったか、詩だ
ったか。とにかく幅広くて精緻な小説の書き手でありました。あ、思い出した。
ウィリアム・ウィルソンていう短編です。いろいろ使わせてもらってました。
全四巻なんですが、持ってるのはこれ一冊。今度図書館行ってこようっと。

創元推理文庫より 680円 1974年6月28日 初版です。
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それではまた次週お目にかかりましょう。

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