KISARAGI

KISARAGI vol.217


カテゴリー: 2003年11月23日
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K I S A R A G I vol.217                               2003/11/23発行
                          編集/発行:みやこたまち
http://miytako.hp.infoseek.co.jp     ★ E-mail:tamachim@yahoo.co.jp                    
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「価値観」というのはとても重要ですね。というよりも「価値観」といってしま
えば、ほとんど全ての行動原理が説明できるものだと思います。そして、この価
値感というのが現在のところ資本主義世界にどっぷりと浸かった価値観となって
いるわけですから、全ての啓蒙というのは「価値観」の変革=資本主義経済の変
革を伝道しなければいけないのでしょう。

それでは、たまさんの古典へのいざないです。
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|連載|小説|
◆古典へのいざない【70】     とりかへばや物語[20]        作者: たまさん

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 年が改まった朔日頃の事、霞んだ空は春の気配を感じさせながらも、まだ旧年
《ふるとし》を思わせる雪がちらつき、何とも言えぬ風流な景色の中を左大臣が宣
耀殿《せんようでん》に参上すると中納言も来ていた。
 以前に左大臣邸に住んでいた頃は、北の方同士の競争心で子ども達の仲も疎遠で
あった。だが左大臣には他に子どもがおらず、自分の寿命もいつ果てるか分からな
いので二人に対し、
「よいか、普通でない身の上も、赤の他人に相談するより、互いに話した方がよか
ろう」
 と言い聞かせていた。
 それぞれが成長してからは、若君は御簾の中に入れたが、姫君は恥ずかしがって
母屋の中でも御簾を隔てにしていた。だが内裏に出仕してからは、中納言が尚侍
《ないしのかみ》の世話をするうちに慣れ親しみ、また男女の事を知って見慣れて
きたからだろう、几帳を隔てただけで尚侍は中納言と親密に話していた。
 中納言は尚侍の素晴らしく美しい様子を見て、「尚侍が普通の女性であったのな
ら……」と惜しく悲しい事だと思っていた。また尚侍も、中納言の様子を見る度に
胸が締め付けられるような思いだった。このように互いの身の上を案じている心中
は兄妹だから当然だというものの、親愛感に満ち溢れ、感慨も深いのであった。
(続く)
                                   ★

 女性でありながら男性の姿の中納言。男性でありながら女性の姿の尚侍。昔は互
いの母親同士の確執から仲があまりよくなかったようですが、世間に出た後、宮中
でよく顔を合わせるようになってからは、随分と親しく話をするようになったとの
事です。今後のストーリーは、二人がどうやって協力していくかが、一つのキーと
なります。
 この続きは次回にお届けします。それではまた。

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ジャンル:古典レビュー
メール :miztam@nifty.com
HP  :【山猫屋本舗】http://homepage3.nifty.com/miztam/
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外の世界で同じ悩みを抱えているもの同士は、連帯感を持つ、ということでしょ
うか。そういえば、海外で出会った二人はうまくいくことが多いということもよ
く聞きますね。でも、かつて爆風スランプが「リゾラバ」で歌っていた通り、家
に戻ればよさが分からなくなるってことも、またよくある話でって、関係ないで
すね。このように、関係ない話題を次々に並べ立てて言いたいことが分からなく
なる作者がお送りする連載です。
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|連載|小説|

◆そののちのこと【28】                           作者:みやこたまち
      
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>山間に雪が積もっている。一面の杉の林とトンネルと雪とが幾度も交錯する。
車内は昼間だというのに電灯が付きっぱなしだ。毛羽だった緑の別珍張りの座席
は、異様に盛り上がっていて、生地だけが緩んでいる。

>暖房のため、尻が熱かった。だが心地よい振動が、一郎の気持ちを穏やかにし
ていた。

>もう、何時間列車に乗っているのか知れない。記憶ですら夢だったかのようで
ある。遥か昔から自分は列車に乗っていて、これから先もずっとここに座ってい
るのだという思いが、最も真実に近いように感じられていた。

>緑、白、闇が交互に続いた。車内の電灯はオレンジ色だった。駅も無く、車掌
も回ってこなかった。大学も、女も、穂積信夫も、長い旅の途中に思い描いた幻
だったかのようだった。自分の家、あの没落した家、憤死した父、そして、死ん
だ母、いなくなった女中の娘。

>皆、夢だったのだ。

>自分の人生とは、こうして列車に乗りつづけることなのだ。

>トンネル、雪、杉木立、トンネル、雪、杉木立。

>車内はオレンジ色の光ににじんでいる。車掌も来ない。駅も無い。

>幻想に浸って、幻想こそ現実だったと確信し、その現実に慣れ始めた頃、列車
は最後の駅に滑りこんだ。

>「止まった?」

>多田一郎は列車を降りた。右足が支えを無くしてバランスを崩した。脚が突っ
張ったままコンクリートに激突し、膝に痛みが走った。落ち着いて振り返ると、
列車の床は自分の腰の高さにあった。
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書見棚 その27-*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*

ここは、みなさまの本棚のなかで今、目に入ったものを御紹介いただく棚です。
投稿が無い週は私の本棚で目についたものを紹介します。今週は

「日本人は思想したか」吉本隆明 梅原猛 中沢新一です。

対談集が好きでして、中沢新一氏の作品をこのごろ読み返しております。一時離
れていましたが、おもしろいです。この本は、日本人が「哲学」を残さなかった
変わりに、「茶道」とか「華道」など「道」の中に哲学があるという話です。も
ちろん、仏教、芸能、和歌などなどから抽出していく三人の知性。吉本隆明につ
いては、ああ久しぶりだな、と懐かしい感じでした。

新潮社より 1900円 1995年6月30日 第一刷です。
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それではまた次週お目にかかりましょう。

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