KISARAGI

KISARAGI vol.208


カテゴリー: 2003年09月21日
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K I S A R A G I vol.208                               2003/09/21発行
                          編集/発行:みやこたまち
http://miytako.hp.infoseek.co.jp     ★ E-mail:tamachim@yahoo.co.jp                    
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地震、台風。息を吹き返した夏もこれで終わるのではないでしょうか。
今日は休みで、一日中動画のカットとDivX変換をさせていて、ほかの事は出来ま
せんでした。休みの日が雨なのは、ゆっくりできていいです。

それでは、今回もたまさんから、お願いいたしましょう。
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|連載|小説|
◆古典へのいざない【63】     とりかへばや物語[13]        作者: たまさん

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 九月十五日の月明の夜、内裏での遊宴に出た後、そのまま宿直《とのい》をした
中納言は、特に興味があった訳ではないが、梅壺の女御《うめつぼのにょご》が帝
の寝所に上がってくるのを、藤壺へ通る塀の辺りに隠れて見ていた。
 夜更けの月が隈なく澄み渡っている中、濃い衵《あこめ》に透いて見える薄物の
汗衫《かざみ》を羽織り、髪を美しく垂れ掛からせた女童が、火取り香炉を持って
歩み出て来る。女房達も皆、砧《きぬた》で打って艶を出した衣の上に薄物の唐衣
を脱ぎ掛けたように着ており、その様が今宵の空のように優美に見えた。続く女御
は、御几帳《みきちょう》を麗しくさし巡らし、大層かしずかれた様子が奥ゆかし
く見事であった。
「ああ、私も人並みの身や心であったならば、きっとこのようにかしずかれて帝の
許を出入りしていたであろうに。人前に顔を晒した上に男の姿をして世間に出てい
るとは、全く正気の沙汰ではない」
 と考え続けていると、目の前が暗くなってくる。

  月ならばかくてすままし雲の上を
   あはれいかなる契りなるらん
 (もし月であったならば雲の上で澄んでいられるのに。
   どうしてこのように辛い宿命なのであろうか)

「私は拙い宿命の為にこうなってしまったが、せめて姫君だけでも人並みにこうし
た宮仕えが出来ればどんなに嬉しかろう。我が身の不幸を嘆くのは構わないが、せ
めて姫君が世間並みであったのならば、退出・参上の世話をする事も出来るだろう
に――」
 自分の身の上の事を考え続けているうちに、ここから抜け出して深い山に姿を隠
してしまいたいという気持ちになってくる。女御を見送り、先ほどの独り言を思い
返していると、「蓬莱洞《ほうらいとう》の月」の句が自然に口をついて出てきた。
 その声は例えようもなく美しく、空へと澄み登っていくのであった。

(続く)
                                   ★

 帝の許へ向かう途中の女御と出合った中納言は、本来は自分が歩んだはずの人生
を彼女に重ねて見ます。自分はどうしてこのような姿をしているのか、いっその事、
どこか山奥に隠れてしまいたい――かなり思いつめている様子です。
 この続きは次回にお届けします。それではまた。

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ジャンル:古典レビュー
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HP  :【山猫屋本舗】http://homepage3.nifty.com/miztam/
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悩んでますね。特に興味が無かったけども、隠れてみている、というのは、何か
心の奥底でひっかかりがあったのでしょうし。幼いころは、男の子みたいだった
けど、「男として出てしまった以上はいまさら」という気持ちになっているんで
すね。これは気の毒です。女性だと、カミングアウトする日は来るのでしょうか?

続きまして、慢性化したかみそり負けに悩む作者がお届けする連作です。涼しく
なれば、治るだろうか・・・

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|連載|小説|

◆そののちのこと【20】                           作者:みやこたまち
      
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>同時代の少年達に比して、幾分か成熟した精神構造を持っていたとはいえ、そ
れはやはり、庇護される者の枠を外れてはいなかった。

>信夫は何かを否定することで、自らの存在を証明していた。

>自分ではない者がいる、という事実。社会的な人間にとっては、この前提は不
変である。自分と他者との関係の度合いによって、しがらみとか、確執とか呼ば
れるものが生じる。

>中学での信夫は、無口で気難しい生徒だった。誰にも気を許さず、他人のして
いることには全く加わらない。学芸会、体育大会、研究発表会、グループ学習。
通信簿は学力がずば抜けていることと、協調性が皆無であることの二つを明示し
ていた。これは小学校、中学校を通じて、不変だった。

>社会的でないという性質を、両親は個性として受け入れることは出来なかった。
社会に出て役に立たないということは、すなわち、人間として無価値であるこ
とと同じだった。

>信夫の性質は矯正されるべきだった。

>道は舗装道路から細い悪路に変わった。

>道の両側は雑木林になり、その左手の奥の方は、小高い丘になっている。

>右手はどこまでも林が続いている。

>冬特有の橙の光の中で、枝は冷たい風になぶられ震えていた。

>時折小石を跳ね上げながら、車は走り、やがて、うらぶれた門をくぐった。

>以下次号
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書見棚 その18-*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*

ここは、みなさまの本棚のなかで今、目に入ったものを御紹介いただく棚です。
投稿が無い週は私の本棚で目についたものを紹介します。今週は

「空の色に似ている」 内田善美 著です。
これは、「ぶーけ」という月刊誌で連載されていたものです。

氏の作品は全て集めまして読みました。名作です。本作と「星の時計のLiddell」と、
「草迷宮・草空間」の三作は普及の名作といえるでしょう。読むべきです。時空
を超え、生命を超越し、絵のタッチやストーリーの風合いは優しいのですが、
内容は非常に厳しく現実を直視しているのです。

全て、集英社より。星の時計のLiddellは全三巻です。
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それではまた次週お目にかかりましょう。

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