KISARAGI

KISARAGI vol.172


カテゴリー: 2002年12月29日
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K I S A R A G I vol.172   2002/12/29発行
                          編集/発行:みやこたまち
                     ★ E-mail:tamachim@yahoo.co.jp
                     http://miytako.hp.infoseek.co.jp
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KISARAGI通信
KISARAGI小説集「第一集 クリスマスまたは元旦のお話」は、お陰さまを
もちまして、25日より公開開始することが出来ました。ご参加くだすった皆様、
本当にありがとうございました。まだ、ごらんになっていらっしゃらない方、旬の
ものですので、お早めにご一読くださいませ。そして、ぜひ、ご感想を作者の皆様
にお送りください。なによりもそれがうれしいことなのだとの思いは、作り手に共
通のものだと思いますので。続きまして、業務連絡をば。新年5日、KISARAGIは一
回お休みいたします。翌12日から、2003年のKISARAGIはスタートいたします。
それではみなさま、よい年越しを。
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今週の目次
 ◆古典へのいざない【30】虫愛ずる姫君[6] 〜「堤中納言物語」から〜 
                              作者:たまさん
                                
 ◆Inter_View 5 minutes【130】         Guest:交通整理 撞橋基祈氏 

 ◆ 獏食 28.                       オフレコ・・・ 
 ◇ KISARAGIについて
 ◇ 編集後記
 ◇ 発行者について
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|連載|小説|
    ◆古典へのいざない【30】                           作者: たまさん

        虫愛ずる姫君[6] 〜「堤中納言物語」から〜
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 立っていた童が右馬の佐(うまのすけ)達を怪しいと見咎めて、
「あの立蔀(たてじとみ)の元に立派な身なりの男が寄り添って立っています。
――おかしな身なりをしていますが」
 と言うと、大輔の君(たいふのきみ)という名の女房が、
「それは大変。姫様はいつものように虫に興じていて、ひょっとしたら外から丸見
えかもしれない。お知らせしなければ」
 と部屋に参上した。
 姫君はやはり簾の外に出ていて、大騒ぎしながら毛虫を払い落とさせていた。
 大輔の君は毛虫が怖かったので、遠くから、
「さ、早くお入り下さいませ。端近な所では丸見えです」
 と申し上げた。しかし姫君は(大輔の君は毛虫集めを止めさせようと思って言っ
ているに違いない)と思い、
「人目に付く事は、別に恥ずかしくなんかないわ」
 と言った。
「ああ、困りました。嘘を言っているとお思いですか。その立蔀の傍らに、とても
立派な男性がいらっしゃるのに。――お願いですから、毛虫は奥に入ってご覧下さ
いませ」
 姫君は男の童を呼んだ。
「けら男、あそこに行って見て来なさい」
 童は走って見て来ると、
「本当にいました」
 と申し上げたので、姫君は慌てて立ち走り、毛虫を袖に拾い入れると、奥に走っ
て入った。
 背丈は程よく、髪も袿(うちき)の裾くらいまでの長さがありとても豊かである
。
髪の端を切り揃えていないのでふさやかな感じはしないが、端麗であり、かえって
可愛らしい様である。
「これほど器量がよくない女でも、人並みに繕って風情や身振りに気を配っている
のなら申し分ないだろうに。とても親しめそうにない様子だが、とても美しく気品
があり、気のおかれるところが、世間の女性とは異なる。本当に残念だ。どうして
あんな気味の悪い心を持っているのだろう。これほど優れた器量だと言うのに……
」
 と右馬の佐は思った。
 右馬の佐はこのまま帰っては物足りないと思い、姫君を見た事だけでも知らせよ
うと、畳紙(たとうがみ)に草の汁で、

   かは虫の毛深き様を見つるより
    とりもちてのみまもるべきかな
  (毛虫のように毛深い眉のお顔を拝見してから、
    毛虫のように貴女を手に取って大事にしたいと思うのです)

 と書いた。扇を叩いて人を呼ぶと童がやって来た。
「これを姫君に差し上げるように」
 童は受け取った文を大輔の君に渡した。
「そこに立っていた人が、これを姫君に差し上げるようにとおっしゃいました」
 大輔の君は手に取って見ると、
「あら、大変。右馬の佐の仕業だったのね。嫌な虫を面白がっている姫様のお顔を
見たようだわ」
 大輔の君が姫君にあれこれ申し上げると、姫君は、
「何も恥ずかしい事などありません。人の命が夢幻のような世に、一体、誰が悪行
・善行を見極める事が出来ましょうか」
 と言い返すので、言っても仕方ないと、若い女房達は、皆、困った事だと思った
。
 二人の公達は「返事がないはずはない」としばらく立っていたが、屋敷では童ま
でも中に呼び入れて「困った事だ」と言い合っていた。
 やがて女房の中で配慮の行き届いた者がいたのだろう、「返歌をしないでは右馬
の佐が気の毒であろう」と、姫君の代わりに歌を詠んだ。

   人に似ぬ心の内はかは虫の
    名を問ひてこそ言はまほしけれ
  (世間の女性とは似つかないこの私の心の内は、毛虫の名を聞くように、
    貴方のお名前をお尋ねしてから申し上げたいと思っています)

 右馬の佐はこの返事として、

   かは虫に紛るる前の毛の末に
    当たるばかりの人はなきかな
  (毛虫に見間違える貴女の眉毛のその毛先ほども
    貴女に似た人は他にはおりますまい)

 と言い、笑って帰った。

(了)
                              ★

「右馬の佐」という異性と接触した姫君が、これからどのような人生を送るのか、
とても気になるところではありますが、ここで「虫愛づる姫君」はおしまいです。
 最後まで話を書かないで結末を読者の想像に委ねる書き方は、短編によくある手
法の一つですが、世界最古の短編集である「堤中納言物語」で既に認められるのは
何とも驚きです。
 さて、次回も引き続き「堤中納言物語」に収録されている別の作品を取り上げる
予定です。
 それでは皆さん、よいお年を。

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ジャンル:古典レビュー
メール :miztam@nifty.com
HP  :【山猫屋本舗】http://homepage3.nifty.com/miztam/
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 ◆Inter_View 5 minutes【130】 
                        Guest:交通整理 撞橋基祈氏
          
                          作者:宇祖田都子 さん
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before minute
 最近どうなの? やっつけじゃないの。そろそろマンネリ気味なんじゃなくって?
 ゲストが、じゃなくて、貴方が。 というご意見をいただきまして、考えるとこ
ろがございます。宇祖田都子です。暮も押し迫っての反省は、なんだか取り返しが
付かない感でやるせないわけです。すっきりと新年を迎えるためには、今は耳をふ
さいでしまおう、そんな風にも思います。今年最後のInter 
View 5 minutes は、そんな重苦しい気分を心の隅に抱えて、お送りいたします。
ゲストは、交通整理人 撞橋基祈氏です。

first minute
R:旗を振るしか脳の無い男でございまして。
M:しかし、撞橋さんの立つところに、渋滞は無いと、もっぱらの評判ですよ。会
社名よりも撞橋さんのお名前の方が湯名なんじゃないかしら。
R:男子一生の仕事と決めたからには、粉骨細心するのが努めってもんでしょう。
それに、私らの仕事は、いわば決まりきったパターンの繰り返しですからね。クリ
エイチブじゃないんでね、へへへ。
M:交通整理というのは、さまざまな分野でのメタファーとして語られるテーマで
す。撞橋さんの理念について、お聞かせ願えますか?

second minute
R:難しい質問だなぁ。つまり、どういう事を知りたいと?
M:はい。渋滞させない車のさばき方について、どちらを優先するのか、不測の事
態にどのように対処するのかということなんです。l
R:わたしらの現場はだいたい片側一車線交互通行っていうのが多いわけで、基本
的には交互に通してやんないと、クラクションならされることんなるでしょう。で
すから、これはもう決まりきったことで、7台通したら交代って決めちゃう。あと
は分かりやすく旗を振るってこと。問題なのは、片側交互通行の範囲に合流する道
路があるって場合。そこを一人でまわすのはなかなか熟練を要するが、基本的には
自分で決めた台数を信じてひたすら例外を作らないで繰り返すって事につきる。
M:迷いが即、事故につながるわけですからね。

third minute
M:それでも、腹が立つこともおありでしょう。
R:いえいえ。運転手っていうのはもともと身勝手です。目的地までとまらずに、
スピードも落とさずに、前に車がない道を走りたいに決まってます。舗装のよい道
路を走りたいくせに、その工事には我慢がならない。そういうもんでしょう。
M:ええ。確かに。
R:それをとめるわけですからね。腹を立てられて当然です。でもね私らの仕事は、
運転手のご機嫌とりではないんでして、自分のことしか考えない運転者は、つまり
は駄々っ子なんですね。上手になだめてあげればいいんです。同じ立場に立っては
いけないんでしてね。
M:分かります。でも、なかなかそこまで達観できないんですよね。

forth minute
M:撞橋さんは、仕事以外の時も段取りよくテキパキと物事を進められるほうです
か?
R:やらなければいけない事はね、どんどんやりますけどもね、そのやるべきこと
を見付けるのが面倒くさくて、妻にはグータラだと言われます。
M:そうなんですか。
R:車は走ってくるのでそれをさばけばいいんですがね、その車にあたるものが来
ないことには、わたしゃなにを すればいいのか、わかりません。
M:なるほど。なるほど。責めるのではなくて、カウンターで、という立場ですね。

final minute
M:交通整理のプロとして、年末の運転者に一言。
R:そうだなぁ。私ら、あんたがたの邪魔をしたくて立ってるわけじゃない。どっ
ちかというと、スムーズに流すために立っているんだってこと、分かって欲しいな。
M:本当ですね。工事中の道路で、状況を冷静に把握しているわけですからね。
R:ただね、下手な整理員もいるんだ。反対方向を流すきっかけをはずす馬鹿野郎
がさ。とくに現場が増える年末や年度末にはな、急増のアルバイトばっかりになる
だろ。面汚しなんだな、そういうやつらは。だから、運転者はね、待たされすぎだ
と感じたら、罵声をあびせてやればいいんだ。運転手は必ず自分の言うことを聞い
てくれるなんぞと思いあがったエセ整理員なんか、いらないからな。怒鳴られて悔
しいとか、轢き殺されそうになって、逆切れするとかさ、そんなちっぽけなプライ
ドなんざ、粉々にされなきゃ、いい整理員にはなれないってことさ。
M:それでは、お仕事がんばってください。

after minute
撞橋さんは、ごく普通の交通整理員ですが、その仕事を極めていらっしゃいます。
仕事の上で必ず際立ってくる特性があって、それは仕事を離れた生活にも影響を及
ぼしていきます。人格というのは職業が作るものです。ですが、その特性は本人が
生来持っている性格をベースにしているもので、出方は千差万別となるものでしょ
う。結果が職業の求める性質に合致すれば、幸福なのですが、へんにずれている場
合は不幸でしょう。私はこの仕事と幸福な付きあい方が出来ているでしょうか。

<<次回は新年の豊富など語らせていただきたく思います。>>
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種別  :小説短編
ジャンル:架空対談
作者名 :宇祖田都子
メール :cak87430@geocities.co.jp
HP  :非所持
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◆ 獏食 28.                     オフレコ・・・

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現実が侵食されてしまうので、夢は書き記してはいけない。覚えていてはいけない。

獏満足度 ■■□□□ アジノキオクハドコニアル?
 
_/_/ 編集後記 _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
本年中はたいへんお世話になりました。いろいろと不手際もあったと思いますが、
みなさまのおかげで、続けてくることが出来ました。KISARAGIには、決まったスタ
イルはありません。今の形が最高だということもありません。ではどうしていけば
よくなっていくのか、そんな事を時々(いつも、ではないんですけども・・・)考
えます。皆様、今後ともお力をお貸しくださいますよう、お願い申し上げます。
_/_/ KISARAGIについて _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
■配信システム
 KISARAGIは「まぐまぐ」:http://www.mag2.com/で配信しています。
■登録解除の方法
  KISARAGIを解除するには、次のアドレスへアクセスしてフォームに記入を。
 -->http://miytako.hp.infoseek.co.jp
_/_/ 発行者について _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
 編集者 みやこたまち
 E-mail :tamachim@yahoo.co.jp
 WebPage:http://www1.odn.ne.jp/~cak87430/index.html
--------------------------------------------------------------------------
 前編集者 仙ちゃん
 E-mail :slowhand@sea.plala.or.jp
 WebPage:http://www7.plala.or.jp/slowhand/
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 初代編集者 牧瀬佑樹(マッキー)/スタック作家
 E-mail :macky@livrer.jp
 WebPage:http://www.livrer.jp/
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