KISARAGI

サンプル誌


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投稿小説マガジン KISARAGI
vol.6 1998/11/01 発行  編集・発行:牧瀬佑樹
メール:Yuuki@kcn.or.jp  HP:http://www.kcn.or.jp/~yuuki/kisaragi/ 
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〜〜〜〜〜KISARAGI Novels'List〜〜〜〜〜
・“時にあそばれて” [第6回]
 作:うりぼ〜 さん SFファンタジー;中編
・“Earth 〜魔法の水晶〜” [第6回]
 作:牧瀬佑樹 異世界ファンタジー;中編
・“LIVER” [第3回]
 作:佐藤 海 恋愛小説;長編
・“〜カタルシス・・・漫画における精神の浄化作用についての考察〜”
 [第2回] 作:柊 萌芽 ノンジャンル;短編

・投稿作品募集
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タイトル:時にあそばれて [第6回];vol.1より連載開始
作者:うりぼ〜         メール:y-uriu@kcn.or.jp
HP:なし
コメント:
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●帰り道●
何も話さずに歩いている二人。涼美、何か言おうとしてやめる。洋一、急に立ち
止まって
洋一「ごめん。俺、ばかで、鈍くて・・・何も分かってなくって・・・」
涼美「・・・いいの。」
洋一「俺さ・・・渡辺に言われたんだ。涼美にラブレター渡させるなんてどんな
神経してるんだって。」
涼美「・・・」
洋一「そんな無神経な人とは付き合いたくないって、あっけなくふられちゃっ
た。」

○回想○
目に涙をためてつらそうに何かいっている千秋の顔。

涼美「・・・千秋がそんなこといったの。」(ちょっと驚き)
ここでふたり、社やしろにもたれ掛かる。
洋一「うん。・・・あのさ。俺、涼美のこと好きだよ。でも・・・。」
涼美「もういいの。・・・私、分かってる。ずっと親友だったんだもの、これか
らもずっと友達でいよう。」
洋一「・・・ごめん。」
涼美「どうして謝るの。」
洋一「・・・いや。そうだな。」
しばらく沈黙が続く。街灯にまっている虫。
洋一「確か・・・あの空き地だったな。涼美が捨て猫拾ってきてさ。家じゃあ飼
えないからってリンゴ箱ひろってきて二人で世話してた。」
涼美「・・・でも、ある日突然いなくなっちゃって・・・」
洋一「うん。その時、泣いてる涼美見て俺、ぼんやりとだけど思ってたんだ。自
分たちだけは絶対にずっと友達でいようって。だから・・・」
涼美「・・・」
カメラ、街灯に照らされた二人にズームアウト。

●千秋の部屋●
泣きながらベットに腰掛けている千秋。ステレオから流れている荒井由美。悲し
げなそのメロディ。
千秋「わたしって・・・馬鹿なのかな・・・。」(ため息&涙混じり)

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タイトル:Earth 〜魔法の水晶〜 [第6回];vol.1より連載開始
作者:牧瀬佑樹         メール:Yuuki@kcn.or.jp
HP:マッキーの部屋;http://hp.vector.co.jp/authors/VA009730/ 
コメント:あのRPGが小説化!まだまだ未熟ですが、どうぞ
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四、リクレスの城
「目を覚ましたようだな・・・」
 何か懐かしい声が遠くから聞こえた・・・どこか見覚えのある風景が目の前に
広がった。少女は上体を起こした。
「・・・!?ケ、ケイス先生!!」
「ミナ、大丈夫だったか?」
 ケイス・・・リクレスの国では知らぬ者がいないほどの大魔法士である。が、
まだ30代と相当若い。
「びっくりしたぞう、リトスがつれてきたときは・・・なにかあったのか?魔法
の修行は一応終わったはずだが・・・」
「え、ええ。・・・実は・・・」
 がちゃっ
 ミナが喋ろうとしたとき、戸が開いた。
「あ、リトスか。・・・気がついたぞ、あの子」
「ああ、そうですか」
「リトスって・・・?」
「森の中でオークと戦ってたお前を助けたやつだ。これでも腕前はいいんだぞ。
一応、騎士団の一人だからな」
「き、騎士団って・・・まだ・・」
「ミナと同い年だ。」
「すごーい。・・・ありがとう」
「いいよ。別に・・・それより何であんな時間にイストの森に?最近物騒だから
魔法士や騎士でも近づかないのに」
「だ、だって、仕方ないじゃない!途中で日が暮れたんだから!」
「でもな・・・」
「はいはい、喧嘩はそこで終わり」
「喧嘩してませんよ!」
「喧嘩なんか!」
 二人は同時に叫んだ・・・と、一呼吸置いて、
「ちょ、ちょっと、真似・・・」
「真似する・・・」
「ストップ!二人の仲がいいのはよーく分かったから・・・で、ミナ、何の用事
できたんだ?単なるかいもんでもなさそうだが・・・」
「うん。実は、村の水晶がモンスターに持ってかれちゃって・・・それでモンズ
山に行こうと思って、まずケイス先生のところで修行し直そうと思ってきた
の。」
「ふうん、モンスターか・・・で、いったい何なんだ、そのモンスター?」
「パスティスです。」
「パ、パスティス!?・・・おい、お前じゃ一生無理じゃないのか?」
「ほっといてよ!ね、ケイス先生、何とかなりますよね?」
「う、うーん、・・・何とかするしかないだろう・・・大事なもんなんだろ。
さ、もとの部屋は空けてあるから、荷物とかも運び込んであるからな・・・覚え
てるだろ」
「もちろん!」
「じゃ、明日からもう一度修行するか・・・炎熱弾だけじゃきついだろうから
な」
 少女が部屋から出ていく。それを見送りながらケイスはリトスに話しかけた。
「リトス・・・ちょっと頼みがあるんだが・・・」
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タイトル:LIVER [第3回];vol.4より連載開始
作者:佐藤 海         メール:hunter@olive.plala.or.jp
HP:なし
コメント:すごく長いですけど、頑張って飽きずに読んでやって下さい。
     細かい事は気にせず読み進めて下さい。
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いつもよりも遅く行ったせいだろうか、食堂は混んでいて容易に食事ができそう
な状態ではなかった。別に昼食を食べなかったからといって私に問題はなかった
、しかし彼には大問題だったみたいで
「昼飯抜きで授業なんて受けられるかよ、なあ」
と私に同意を求めてきたが、私はまた答えなかった。
彼はそんな事は全く気にしていない様子で、唸りながら考え事をしていた。その
彼がいきなり子供のような無邪気な笑顔を見せ
「よっしゃ、いい提案がある。外で食おうぜ」
などと言ったので、私は少しだけ面食らってしまった。
この学園は一応私立だけに、規律もそれなりに厳しい。規定時間内に学園内から
外出する事など許されてはいない。
「聞いてんのか?」
私は別に校則がどうとか、規律を守らないとどうなるとかは考えた事もなかった
が、この提案は安易に受けるわけにはいかなかった。親代わりの宗太郎に迷惑か
ける事になるし、一応同じ学園の高等部に龍馬がいる。
「私は昼食抜きでも授業を受けるのには問題はない。だから、お前だけそうすれ
ばいい」
私が機械的な口調で話したので、彼は大笑いをした。
「変なやつ〜〜やっぱおもしろいよ深海って。いいから行こうぜ、お前、校則と
か規律とか何とも思わない奴だろ?」
と彼が言ったので、私はまたまた少し驚いてしまった。私をおもしろいとか変な
奴とか、それに校則とか規律とかを気にしない生徒だって?と彼の顔をマジマジ
と見つめていると、いきなり彼に腕をとられそのまま食堂から連れ出されてしま
った。そして、そのまま学園外へ。校則、もしくは規律というものを破ったのは
久しぶりのような気がして少し解放感を感じてしまった。
「で、何食う?どっちにしても、5限の授業には間に合わないからゆっくりしよ
うぜ」

彼はあらゆる事を気にもせず、軽く言った。彼にとって問題なのは食事を摂らな
い事のみのようだ。
「何でもいいわ。どうでもいいから」
私は投げやりな態度をとった。しかし、それは本心だった。
「ほんっと深海って噂どおりだな」
彼は両手を自分の後頭部にまわして何処か遠くを見るような目をして言った。
噂?どうせろくなものじゃない、それにそれも自分にはあまり関係ないもののよ
うに思える。
「で、何を食べるの?」
私は噂という彼の言葉には全く触れずに今しなければならない事だけを事務的に
言った。
「そうだな、この辺りには何もないし、俺の足で少しここから離れようぜ」
私が彼の言っている『足』の意味があまりよくわからずに返答に困っていると、
彼はまたいきなり私の腕を掴んで、近くの公園の裏に連れて行かれた。そこでよ
うやく彼の言う『足』の正体を知った。
「ほんっと変な女、これ見て何も思わないのか?」
彼は自分の『足』と呼んだ赤色のオートバイを軽く叩いて、私にそう言った。
「大きいわね。で、免許はあるの?」
彼はわざと大きく溜め息をついて
「一応2週間前に手に入れました。だからほんと言うとまだ人は乗せちゃいけな
いんだ、怖かったら乗らない方がいいけど、どうする?」
「怖い?別に何とも思わないけど、乗せるつもりないならどうして連れてきた
の?ただの自慢?」
私はまた人の神経を逆撫でする言い方をした。勿論本心には間違いないが、この
言い方に彼はどういう反応をするだろう。
「俺は君さえよければ乗って欲しいって思ったから連れてきた、勿論正直見せて
自慢したいってのもあったけどな」
私の意見に反論するどころか肯定するなんて、彼の反応は私にはかなり意外とも
言える反応ばかりだ。
「乗るわ、乗せてくれるんでしょ?私さえよければ」
もしこれで大怪我すれば、いくらなんでも両親が戻って来てくれるかもしれな
い。などという考えが一瞬だけ浮かんだ。だが、その考えをすぐに打ち消された
、いるかいないかわからない人達が戻ってくるかどうかなんて考えるのも馬鹿馬
鹿しい。
「ああ、深海さえよければね」
と彼は考え事をしていた私にヘルメットを渡した。私はヘルメットという物を手
にして
「大きいのね」と呟いた。
「それが生命を守ってくれるんだ。しっかりかぶれよ」
彼は自分もヘルメットをかぶりながらそう言った。
これが生命を?こんなもので守れるの?私はまじまじとその丸い物体を見つめて
いた。

「おーい、頼むから早くしてくれよ。かぶり方くらいわかるんだろ?」
彼は大きなオートバイを少し動かし、それにまたがった。
「かぶり方?確か・・・」
私はテレビで何度か見た事あるバイクシーンを思い浮かべながら、それと同じよ
うに被ってみた。何だか両側から圧迫されて少し苦しくて、妙な感じがした。そ
れでいいのかどうかもよくわからずに戸惑っていると、彼がオートバイから降り
て、私の首の所にたれさがっていた紐のような物を少し息苦しいくらいに締め
た。
「よっしゃこれでいい。じゃあ、後ろに乗れよ」
彼はそう言って自分が先にバイクにまたがり、エンジンをかけ、何度かアクセル
をふかし、騒音を鳴らした後、自分の後ろのシートを指さした。私はそこをじっ
と見つめた後、タイヤの近くに足を乗せるステップのような物があるのを見つけ
て、それに足をかけ彼と同じようにしてまたがってみた。
「じゃあ、しっかりつかまってろよ、振り落とされるぜ。ああ、それと風でス
カートがめくれると思うからそれもしっかり抑えとけよ」
彼の声は緊張の為か少しだけうわずっていて、でもとても楽しそうな声に聞こえ
た。私は彼にしっかり掴まりながら、しかもスカートもしっかり抑えるっていう
のはどのようにするのだろうと悩んでしまった。
結果私は右手で彼にしがみつき、左手でスカートの裾を抑えた。その時少しだけ
彼の背中を通して、彼の鼓動の音を感じて少し離れた。
「おい、ちゃんと捕まってろって。マジでやばいんだから」
彼は私のその行動にすぐ気づき、私の右手をしっかり彼のお腹に回した。さっき
から私は彼の奴隷のように彼の言うがままの行動、させるがままの行動をとって
いる、そんな自分がまた人形のように思えた。
彼は満足したように、そのバイクを発進させた。確かに彼の言うとおり振り落と
されそうになり、私は強く彼にしがみついた。まだ名前も知らないその人にしっ
かりとしがみついていた。
しばらくしてバイクというものに慣れ、風を感じていると、とても気持ちがよく
なってきた。どれくらいの速度で走っているのかはわからなかったがスカートは
すごい勢いでバラパラと音をたてて何度もめくれかけていた。
 しかしそんな時間、学生が制服のままオートバイの二人乗りをしていたという
ので当たり前のごとくすぐに警官に止められてしまった。
結局、彼が必死で頼み込んだ功績だろうか、学校側への連絡は免除、そして点数
なるものは運良くひかれなかったようだ。とてもいい警官だったようだが、その
後重いオートバイを押して戻らなくてはならなかったのは悲惨だった。
「俺ってほんっと馬鹿だよな。運が良かったからいいようなものの、免停くらっ
てたとこだぜ。それに停学とか退学の可能性だってあったんだよな」
と、彼は独り言のような事を口にした後、私に向かって
「悪かったな、俺が軽々しい行動とったもんだから、深海にまで迷惑かけて」
重いバイクを汗を流して押しながら、本当に申し訳なさそうに言った。
「私、バイクに乗ったのも初めてだし、警官に捕まったのも勿論初めてだった。
だからとても楽しかった」
私は珍しく『楽しい』という言葉を使った。自分でも意外だったが、それは本音
だった。
「そりゃよかった。無茶した甲斐があったな」
彼は今まで落ち込んでいたかと思うと、すぐに子供のように無邪気に笑った。
「無茶?」
「しっかし、危ない橋だったよな。下手すりゃ退学だったかもしれないの
に・・・ちょっとやり過ぎた」
彼は話しながら、相当疲れているのか肩で息をし、呼吸も乱れてきた。
「何処かで休んだ方がいいんじゃない?」
「いいよ、早く戻んないと6限の授業にも間に合わないだろ」
「私は平気、ここまできたら授業なんてどうでもいいわ。そっちさえよければ休
みましょう、だって私達何も食べてないんだから」
「そうだな。俺も深海さえよければ・・・」
「じゃあ、あなたはしばらくそこで休んでて」
「あっ、おい!」
私は近くに公園のようなもの、さぼりの学生に食べる物を売ってくれるような店
があるかを探す為その場を離れた。
しばらく走り回ると公園が見つかり、近くにコンビニエンスストアも見つかっ
た。
私はすぐに彼の所に戻り100M程離れた公園に案内した後、急いでコンビニに
行き、おにぎりやパン、飲み物を適当に買い集めて公園に戻った。
彼はベンチに座っていたが、疲れ果て、よく公園までたどり着けたと思える程に
ぐったりしていた。
「迷惑かけどおしだな」
彼は私から食べ物を受け取りながら、ポケットから財布を取り出したが、私はそ
の手を止めて
「いいわ、楽しませてくれたお礼だから」
と言って彼の横に腰掛た。
「何言ってんだよ、迷惑かけたんだから俺がおごらなきゃいけないくらいだろ」
と彼はそれでもお金を払おうとしたが、私が
「そうさせて、お願い」
と言ったら最初は不服そうに
「ありがと、だったらありがたくいただく」
と言ったが、
「けど今度は俺におごらせろよ」
と、最後にはまた笑って、余程お腹がすいていたのだろう、みるみるうちにたく
さん
あった食べ物がなくなる程急ピッチで食べていた。
「でもこういう所で、食べる飯ってまた一段とうまいよな。天気が良くて気持ち
いいし、ピクニックみたいだ」
と彼は大きく伸びをして、無邪気に笑った。上を向いた彼の顔に太陽の光が当
たっていて、笑顔が余計に輝いて見える。
ピクニックなんて見た事はあるけど一度もした事がなかった、けど彼が『ピク
ニックみたいだ』って言った事で、こういうのがピクニックなんだって事を知っ
た。
彼の側はとても気持ちがよくて、不思議と心が温まり、休まる。そして目の前に
置いてある彼の赤いオートバイが光に当たって怖いくらいに綺麗だった。
などと考えていると、いつのまにか彼が隣で寝息をたてて、すっかり眠り込んで
いる。

いつもの私ならたぶんここで黙って帰っていただろう、でも何となくこのまま帰
りたくないような気がしていた。私にとってここは居心地のいい場所になってい
たし、それに私はまだ彼の名前を知らない。

どれ程の時間だったのだろう、私は彼の横ですっかり寝入ってしまっていたよう
で目が覚めると彼の顔がすぐ側にあって驚いた。私は彼に寄り掛かって眠ってい
たのだ。
運良く彼がまだ眠っているおかげで、寝顔を見られたりする事はなかった。
ふと腕時計を見るともう既に5時をまわっていた。完全に昼からの授業はさぼり
となり、後にくる宗太郎からの小言が安易に想像できた。
しかし、まだすっかり寝込んだままの彼を一体どうするのか、それが問題だっ
た。
しばらく考え込んでいると、彼が目を覚まして
「ん?深海?・・・へ?え?ちょ、ちょっと待て」
最初彼は私の顔を寝ぼけ眼で不思議そうに眺めた後、辺りが暗くなりかけている
のに気づき、慌てて立ち上がった。
「ま、まじかよ、い、今何時?」
「5時42分」
私は彼の動揺とは反対に平然と答えた。
「ご、5時42分?嘘だろ?・・・なあ、勿論深海は一旦学校に戻ったんだよ
な?」
と彼はまだ立ったまま、のんびりとベンチに座り込んでいる私に尋ねた。
「ううん、すっかり眠ってしまったみたい。さっき目が覚めたところ」
彼は口を開けて唖然とした顔で私を見つめた。
「深海まで眠っちまったってのかよ、冗談だろ?まいったな」
彼は自分の頭を掻いて、その場をウロウロ歩き回り必死に何か考えているよう
だった。

「何が問題なの?」
私は彼がこれ程困惑する理由がわからずに、平然と彼に向かって言った。
「何が問題って、・・・うーん、よくよく考えたらこれは覚悟してた事なんだけ
ど、その、やっぱ」
「怒られるのが嫌?」
「ば!馬鹿違うよ、俺はそんなもん平気だけど、深海が同罪っていうか、俺のせ
いなのに怒られたりすんのがやなんだよ」
彼はまた申し訳ないという顔をした。さっきからおもしろいくらいに表情がコロ
コロ変わる。
「私なら平気。こんなの別に初めてじゃないし、叱られるのだって慣れてるか
ら」
「そんなもんに慣れんなよ。もし何か言われたら俺が無理やり連れ出したって言
えばいいからな」
今度はすごく真面目な顔。
「嘘はつけないわ」
「嘘じゃないだろ、俺が君の腕を掴んで無理やり連れ出した事に間違いはないん
だ」
「無理やりなんかじゃなかった、抵抗しようと思えば出来たって思うし、ここで
私が眠ってしまったのはあなたのせいじゃない。つまり何もあなたが困る事なん
かないって事」
私は熱弁する彼とは反対に冷静に言った。
彼は大きく一つ溜め息をついて、私の隣に座りなおした。
「わかりました、これ以上君に何を言っても無駄だろうからな」
隣に座る彼は肩を落として、落ち込んでいるかのように見えた。だからというわ
けではないが、私はずっと気になっていた事を口にした。
「私、あなたの名前を知らないの、だからそれを聞こうと思って」
失礼な事だと思った、しかし彼は別に意外でもなかったというように
「ああ、ごめん言ってなかったよな。俺の名前は剣光太郎、いやあ名字はかっこ
いいんだけど、名前が光太郎ってのがね、ちょっと情けないような気がすんだよ
な」
「つるぎこうたろう、いい名前ね」
私は遠くを見るような眼をして呟いた。
「え?あ、ああどうも」
「私は」
「深海光瑠、だろ。知ってるよ」
「どうして?」
「同じクラス、しかも隣の席、知らないわけがないだろ?それに知らなきゃ声な
んてかけないよ」
と彼は言ったけど、現に私は今の今まで彼の名前を知らなかった。それなのに彼
はそれについては何も言わない。
「ああ、もう深く考えるなって」
「ありがとう、名前知っててくれて」
私は自分の名前を他人が覚えていたり知っていてくれる事が何故か特別のような
気がしていた。私には今まで必要のない事だったから。
「ほんっとに変な女だな」
彼はそう言って笑った後、大きな欠伸を一つして
「そう言えば荷物全部まだ学校だったよな、どうする?」
と私に尋ねた。
「私は取りに戻る、ここだったら学校からそれ程離れてないし、歩いてでも戻れ
るから」
と言って立ち上がった私の手を取って彼は
「だったら、送るよ。もうポリに捕まる事はないって思うけど、どう?」
「そうね、じゃあそうする。まだ乗り足りない気がしてたの」
私がそう言うと彼はまた無邪気に笑った。
彼の言うとおり、もう警官に止められる事はなかったが、先生に見つからないよ
うに教室に忍び込み荷物を取りに戻るのは大変な作業だった。
私は見つかっても平気だって言ったんだけど、彼はこういうのもスリルがあって
楽しいと言って、まるでスパイごっこを楽しむ子供のように顔を輝かせてコソコ
ソと泥棒のように自分と私の荷物を取りに行った。
「はい、これだけでよかったかな」
私は彼から受け取った自分の荷物を確認して、頷いた。
「それじゃあ」
「剣光太郎!」
彼が何かを言おうとした途端、大きな声で彼の名前が呼ばれて、彼は一瞬緊張し
た。
勿論私も何故か少し驚いてしまった。
彼はゆっくりと声のした方に振り向くと
「何だよ〜〜〜〜光司かよ〜〜〜、脅かすなよ」
と大きく息を吐い後、笑顔でその声をかけた相手に向かって言った。
その光司と呼ばれた男の子もまた笑って
「何してたんだよ。どうせおさぼりかまして、バイクでどっか行ってたんだろ。
少しは真面目に」
と言った。その男の子はいわゆるジャージ姿だった。クラブ活動の最中だったの
だろう。彼より少し背が高く、たぶんかっこいいと言われる部類の顔とスタイル
だろうと私はその男の子を冷静に分析していた。
「おいおい説教はやめてくれよ。せっかく楽しい時間を過ごしてたんだから」
彼はその男の子の言葉を遮り、彼に向かっていき、その彼の背中を軽く叩いてい
つもの笑顔を見せていた。男の子は一瞬私の顔を見て、すぐに目を逸らし彼の方
へ向き直り
「今からでもいいからクラブハウスに顔見せろよ、でないと流石に先輩達お怒り
だぜ」

と言ったので彼は少し面倒くさそうな顔をして、私の顔を見た。
「じゃあ、私は帰るわ。ありがとう、楽しかった」
私はそれだけ言うと歩き始めた。
「深海!」
彼が大声で私の名前を呼んだので、ゆっくりと振り返ると
「ごめん、送ってやれなくて」
と彼はまた申し訳なさそうな顔で言った。
「気にしないで」
私は彼から目を逸らして言った。彼のその顔は好きではなかったのだ。

私にとってその日は高校に入学してから一番長い一日だった。そして、剣光太郎
が私にとってただの隣人でなく、知り合いとなった日。

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タイトル:〜カタルシス・・・漫画における精神の浄化作用についての考察〜 
    [第2回];vol.5より連載開始
作者:柊 萌芽         メール:aqua@orange.ocn.ne.jp
HP:
コメント:挿し絵をお見せできなくて残念ですが、友来ちゃんは可愛いです。
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Catharsis
   〜カタルシス・・・漫画における精神の浄化作用についての考察〜
                 第2話:五月晴れはパステルカラー
 6月。つまりは梅雨である。不快指数が高い日が続く、あの『梅雨』である。
「あーっ! うっとうしいっ!!」
 とある週末の昼休みのこと。思わずあたしは叫んでいた。どうも、あたしは梅
雨が嫌いで(雨は好きなんだけど)この時期になると、どーもダメ。生理的に体
が嫌うのよね。
 あーあ・・・、雨止まないかなァ・・・。
「友来ちゃん?」
「あ、みゆきちゃん・・・。なに?」
 無二の親友、上條みゆきちゃんが、いつ来たのだろう? 知らぬ間にあたしの
隣に陣取っていた。
「ねぇ、明日、街に行かない?」
「えぇー・・・。雨が降るからヤダ」
「大丈夫。明日は晴れるわよ」
「嘘ォ・・・。本当に?」
 思わずみゆきちゃんを覗き込むあたし。そんなあたしを正面に見詰めなおして
みゆきちゃん。
「うん。高気圧も近づいてきてるし、この分だと、明日は晴れるはずよ。それに
雨が降ったら私も行く気ないし・・・」
「そう。なら、付き合うわ。どうせ暇だし」
「ありがと、友来ちゃん」
 他ならぬみゆきちゃんの頼みですもの。断る訳にはいかないわ。ま、それにあ
たしも今月号の雑誌、買ってなかったし、ちょうど良かったのよね。
───にしても、明日、晴れるといいなァ・・・。
 翌日。昨日までの雨がまるで嘘のように青空が広がっていた・・・。
 こんな五月晴れの日には、やっぱり外へ出るのが一番よねッ。あ、そうそう。
よく『五月晴れ』って言葉を聞くと思うけど、この言葉の意味は『梅雨の時期の
晴れた日のこと』であって、『五月の晴れた日』じゃないの。ここでの『五月』
は旧暦ってのがポイントよ。だから、みんなきをつけましょー。以上、文系の友
来からの一口メモでした。
 そんなことはさておいて、そろそろ出掛けないと・・・。そォだなぁ。何着て
行こうかな? ジーンズにTシャツに・・・ソフトジャケットで決まりッ! そ
うそう、雨降ったらいけないから、傘持っていこ。
 さてっ、出掛けますかっ! とは言っても、待ち合わせ場所はすぐソコの公園
なんだけどね。きっと今日は紫陽花の花が奇麗に咲いているんだろう
なァ・・・。
あとでちょっと見に行ってみよ。
「友来ちゃーん!」
 ん? みゆきちゃんの声が聞こえたような・・・。空耳かしら?
「こっちよ! こっち!」
 あぁ。バス停の方にいるのね。うーんと・・・。
「えっ?」
「今日は早かったのね。友来ちゃん?」
「・・・・・・・・・(絶句)」
「どうしたの? えっ? なに? 何っ? どこか変かなぁ・・・?」
「い・・・いや・・・別に・・・」
「そぉ?」
「そ、そういえば・・・みゆきちゃんってクラブなんだっけ?」
「私? ソフト部よ?」
「・・・・・・・・・」
 そ、ソフト部ってことは・・・みゆきちゃんって体育会系よね・・・。で、当
のみゆきちゃんが今着ている服は、赤とピンクの・・・しかもフリルの付いた、
世間で言う『ピ○クハウス』系の服ぅ! ・・・は、恥ずかしくないのか
な・・・?
 
し、しかも目に悪そうな原色ばかり使ってるし・・・。に、してもフリルは
ちょっと・・・。
「さ、行こっ!」
「え・・・あ・・・う、うん」
 これじゃぁ、あたしのカッコなんて男の子みたいじゃない。・・・確かに女の
子らしい服装なんて持っていないけど・・・。
「どうしたの? さ、行きましょ!」
「あ、あはっ・・・。そうねェ・・・」
 あたしはこの後、余りにも違い過ぎたみゆきちゃんのイメージに、我を取り戻
すまで、およそ1週間を要したことを記しておく・・・。
「あたしだって・・・あたしだって、女の子なんだからァ!(涙)」
                                                          つづく

○◎●◎○○◎●◎○○◎●◎○○◎●◎○○◎●◎○○◎●◎○○◎●◎
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それをこえるものはこちらで自動的に修正しますのでご了承下さい
○◎●◎○○◎●◎○○◎●◎○○◎●◎○○◎●◎○○◎●◎○○◎●◎○

○▼●△発行者について○▼●△○▼●△○▼●△○▼●△○▼●△○▼●△
名前:牧瀬佑樹 ハンドル:マッキーetc... メール:Yuuki@kcn.or.jp
HP:「マッキーの部屋」 http://hp.vector.co.jp/authors/VA009730/ 
今週のコメント:メルマガPLANETも発行しています。そちらもヨロシク!
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国内トップクラス(ユーザー数70000人)のWordPressテーマTCDやフォトマルシェ、ロゴマルシェなどを運営する株式会社デザインプラスの中田俊行が発行するメールマガジン。 アフィリエイトから始めた著者が、ネットマーケティングや最新のウェブ業界の情報を発信していきます。
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サラリーマンで年収1000万円を目指せ。
高卒、派遣社員という負け組から、外資系IT企業の部長になった男の、成功法則を全て公開します。誰にでも、どんな状況、状態からでも自分の力で人生を変えるための情報と知性を発信しています。人生を意のままにするには、脳みそとこころの両方が進化しなければなりません。そんな進化とは何か?をお届けする四コママンガ付きメルマガです。2014年から3年連続でまぐまぐ大賞部門賞を受賞しました 学歴やバックグラウンドに拘わらず、人生を思いのままに生きるために必要な考え方が書かれた、「良書リスト」も希望者に差し上げています。
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今週のおすすめ!メルマガ3選

川島和正の日刊インターネットビジネスニュース
■読者数32万部超、日本一の個人メルマガ(まぐまぐ総合ランキング調べ) ■9年連続で年収1億円以上になり、70か国以上を旅行して、 190平方メートルの豪邸に住んで、スーパーカーに乗れるようになり、 さらに、著書は、日本を代表する超有名人2人に帯を書いてもらい、 累計50万部のベストセラーとなった、現在香港在住の川島和正が、 最新のビジネスノウハウ、自己啓発ノウハウ、健康ノウハウ、恋愛ノウハウ さらに「今チェックしておくべき情報リスト」などを配信中!
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3連単3頭ボックスで超簡単に万馬券をゲットする競馬プロジェクト
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生きる意味は仏教に学びなさい
仏教メルマガ読者数日本一。今この瞬間に幸せを感じ、後悔のない人生にする方法とは?なぜどんなにお金があっても幸せになれないのか。むなしい人生になってしまう原因とは?あなたの人生を背後で支配する運命の法則と99%の人が自覚なく不幸を引き寄せている6つの行いとは…?仏教史上初のウェブ通信講座を開設、仏教の歴史を変え続ける中村僚が、葬式法事仏教となった現代日本の仏教界では失われた本当の仏教の秘密を公開。発行者サイトでも隠された仏教の秘密を無料プレゼント中。
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