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JOG-Mag No.985「東京都の闇」に挑む小池百合子都知事


カテゴリー: 2017年01月15日
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      人物探訪: 「東京都の闇」に挑む小池百合子都知事

「大義と国民の共感」を武器に、小池都知事は都政大改革に挑んでいる。
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■1.「東京都の闇」

 桝添前都知事の迷走振りを見て、どうして自民党はこんな人物を推薦したのか、と思っていたが、最近、出版された『都政大改革 小池百合子知事&「チーム小池」の戦い』[1]を読んで、自民党東京都連を牛耳る「東京都の闇」の実態が良く分かった。

 著者の野田数(かずさ)氏は、平成23年、東京都議会議員として当時タブーであった「朝鮮学校への補助金」を廃止させた硬骨漢である。しかし、野田氏がこの問題を都議会文教委員会で取り上げようとした所、生活文化局私学部長から再三、質問取り下げを要求された、という。

 驚いたことに、同志であるはずの都議会自民党の役員からも待ったがかかった。そもそも、この補助金創設の中心人物は自民党議員であり、日朝友好促進都議会議員連盟を設立したのも自民党議員であった。

 舛添要一・前知事は朴槿恵大統領の要請を受けて、新宿の都有地を韓国人学校の増設のために貸し出す方針を打ち出した。新宿区が保育園設置のために、この土地の貸し出しを要請したのだが、桝添氏はこれを無視し、都民から都庁に抗議が殺到した。これを契機に桝添氏の公私混同ぶりが知れ渡って、都知事を辞任せざるを得なくなった。

 こんな桝添氏を推薦し、支援したのも自民党東京都連だった。どうも「東京都の闇」は半島とつながっているようだ。


■2.「崖から飛び降りる覚悟」

 この「東京都の闇」を危惧していたのが小池百合子だった。桝添前知事が悪あがきの末、辞職に同意し、都知事選日程が決まると、小池は電撃的に記者会見を開き、立候補を表明した。「都政の信頼回復、停滞の解消、山積する問題解決のため崖から飛び降りる覚悟で挑戦したい」と語った。

 あと1年、衆議院議員を続ければ、25年の永年在職表彰で肖像画が国会に掛かる、という栄誉を蹴り、なおかつ議員を辞職して、当選するかどうか、自民党都連が推薦してくれるかどうかも分からない中での出馬声明であった。

 案の上、自民党都連の石原伸晃会長はテレビカメラの前で、事前に相談がなかったと激怒し、他候補を擁立してきた。

 小池はわざわざ推薦願いを取り下げた。本来そこまでする必要はないのだが、自民党に頼らず一人で戦う、という姿勢を鮮明にしたのである。政策論もせずに手続きだけの問題で小池を推薦せず、なおかつ「応援した党員は除名等の処分の対象となる」という警告文書までばらまいたやり方に、「東京都の闇」が垣間見えた。

 小池はこうして自民党都連のしがらみを断ちきって、都知事に当選した。「都政の闇を正したい」との訴えを実施できるフリーハンドを得たのである。小池の政治家としての政局の読みと決断力には凄まじいものがあった。


■3.「人と同じことをしてはいけない」

 小池は今まで「崖から飛び降りる覚悟」を何度もしているが、その最初が大学在学中に「エジプトに留学して、アラビア語をマスターしたい」と決心した時だった。父親から「日本は石油をアラブ諸国から輸入して生きている。それにもかかわらず、日本人はアラブ諸国のことを知らない」と聞いて、これだ、と思ったそうだ。

 両親に相談すると、大いに賛成してくれた。欧米への留学ですら珍しかった頃である。それをエジプトに、しかも若い女性一人で、とは普通の親なら絶対許さない所だ。しかし両親とも常々「人と同じことをしてはいけない」と教えてきた。それは口先だけではなかった。

 小池は決心通りエジプトに行き、アラビア語を勉強し、カイロ大学を卒業した。日本人留学生で卒業まで漕ぎつけたのは、二人目だった。休みの期間は日本人観光客の案内をして、生活費や学費を稼いだ。それができるようになったからは、生活費も学費も、そして帰りの飛行機代もすべて自分で稼いだ。

 日本に戻ってアラビア語の通訳としてスタートし、それから竹村健一の『世相講談』のアシスタントをしながら、多くの財界人、文化人と知り合い、沢山の事を学んだ。

 時あたかも、バブル時代。皆が浮かれている時に、小池は「こんな状態が長く続くはずはない。日本にお金がなくなった時に、お金以外に世界を惹き付ける魅力があるのだろうか」と危機感を抱いた。そして、その予感通り、バブル崩壊となった。

 そこに元熊本県知事・細川護煕から、新党を創るので一緒にやらないか、と声がかかった。「既存政党の組み合わせでは、この危機的状況を打開できない。新しい政治の受け皿をつくり、既成の政治に風穴をあけたい」という細川の主張に、小池は共感した。

__________
 テレビで叫んでいても変わらないから、自分でやるしかないな。政策を決め、実行するのは国会だもの。[2,1888]
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 小池は、またしても「崖から飛び降りる覚悟」で、安定したニュースキャスターの職を投げ打ち、政界に飛び込んでいった。


■4.ベンチャー政党の立ち上げ

 政治家を目指すにしても、小池は自民党のような大企業に入る気はなかった。むしろ、ベンチャー企業のように、組織作り、営業、広報など、ゼロから立ち上げ、国を動かす事に最大の興味、関心があった[2,2236]。 ただ、細川の方は、新党結成といっても明確な計画性がなさそうで、「この人、大丈夫かしら」と思った。

 日本新党というベンチャー政党で、細川という頼りないトップをいただいたのが、小池の苦労の始まりだった。その後、小沢一郎の新進党などとの連立で細川内閣が誕生したが、そこから政党の集合離散が続き、小池も日本新党から、新進党、自由党と立ち上げを経験してきた。

 そのため「政界の渡り鳥」などと揶揄もされたが、これらはベンチャー企業の合併や分割にしたがって所属政党が変わったのであって、小池が単独で渡り歩いたのではない。

 平成14年、保守党が民主党の一部と合同で「新保守党」を創る構想が出た際に、小池は「また、新党ですか」と思った。新党参加を見送り、自民党に入党した。小泉純一郎首相が「自民党をぶっ壊す」と宣言しており、自民党が変わるなら、その中に入って日本を変えれば良いのだ、と考えたからだ。

 そして、入党早々の平成15(2003)年、小泉内閣で環境大臣に指名された。「地球環境問題はグローバルで、やりがいがある」と小池は考えた。


■5.「クール・ビズ」への大義と国民の共感

 夏の「クール・ビズ」はもう日本中で当たり前の光景となったが、これを仕掛けたのが環境大臣時代の小池だった。沖縄でカラフルで涼しげな「かりゆし」を見て、これこそ夏の軽装の理想の姿だと思った。小池は事務次官に語った。

__________
 わたし、ビジネスマンが背広から逃れられないという呪縛から解放してあげようと思っているんだけど、どうかしら? でも、単にノーネクタイっていっても効果なんて期待できないから、大義を設定しましょう。地球温暖化対策という、非常に大きな普遍的なテーマをかかげたらどうかしら?
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 大義と国民の共感が得られれば、世の中を変えることができる、というのが、小池の信念だった。小池はネーミングの段階から多くの人を巻き込もうと、「夏の新しいビジネス・スタイル」をテーマに地球温暖化防止キャンペーンの名称を公募した。

 約3200件もの応募があったが、選考のさいに小池は「クール」という言葉だけは入れたい、と注文をつけた。クールは「涼しい」のほかに「クール・ジャパン」と言うように「格好いい」という意味もある。選考の結果、「クール」と、ビジネスの短縮形「ビズ」を併せた「クールビズ」に決まった。

 小泉首相も面白いと賛同して、全国紙の全面広告に登場して「ノーネクタイ、ノー上着」をアピールした。クールビズの初日である6月1日には、小池自身が新聞広告に登場して「夏、男性がネクタイをはずせば、女性の膝掛けがいらないオフィスになります」と自分で考えたメッセージを発して、反響を呼んだ。

 6月5日、「世界環境の日」には、「愛・地球博」会場で「クールビスコレクション」を開催した。3千人の会場に超満員の観客が詰めかけた。目玉はファッション・デザイナーのコシノヒロコなどがデザインしたクールビズ・ファッションを、オリックス、三越、松下電器産業など11社のトップが着こなして、会場を沸かせた。

 最後に日本経団連会長・トヨタ自動車会長の奥田碩がクールビズ・スーツで登場し、小池と握手を交わした。経済界はCO2の排出削減について「産業界ばかりに削減、削減という前に、国民運動を展開すべきだ」と主張していたのが、その国民運動が小池のリードで実現したのである。


■6.大義を掲げ、国民の共感を得ながら、社会を変えていく

 クールビズは実体経済にも影響を与えた。もともと日本には最先端の機能繊維を開発できる世界的な企業が多々ある。クールビズの技術とデザインで、中国に移転してしまった繊維産業の再興が図れるかもしれない、と小池は考えていた。

「景気をホットに、地球と男性をクールに」の巧みなキャッチフレーズでクールビズ対応シャツなどが個人消費を刺激し、百貨店の売上げは9年振ぶりに増加した。また本来の目的である温暖化対策も、オフィスでの冷房温度の高め設定が広がり、平成17年夏の三ヶ月間で約46万トンのCO2排出削減につながった。

 クールビズは国際的にも広がっていった。小池は親しいアラブ諸国の駐日大使団に「みなさんのお国のクールビズで官邸に来て下さいよ」と頼んだ。アラブの民族衣装は中東の暑さを和らげるクールビズそのものだ。駐日アラブ大使団は、それぞれの国の民族衣装を着て主要官邸を訪れ、日本のクールビズに対する最大級の賛辞を送った。

 同様にフィリッピンやインドネシア、タイなどの民族衣装もクールビズとして見直されていった。

 もともと背広とネクタイは夏でも涼しいヨーロッパで発達したものだ。それを暑いアジアや中東でも着て、オフィスを寒いぐらいに冷やすという事自体が、おかしかったのだ。クールビズは、ヨーロッパ中心の意識を改めさせ、それぞれの国の気候に合わせて発達した民族衣装をフォーマルな服装として認めさせる意識革命であった。

 このように、大義を掲げ、国民の共感を得ながら、社会を変えていくのが、小池の流儀である。


■7.悪党退治

 小池の「崖から飛び降りる覚悟」は、政界の闇との戦いにも発揮されている。

 平成19(2007)年、第一次安倍内閣の時、失言問題で辞任した久間章生の後を継いで、女性初の防衛大臣に任命された。事務次官は5年目に入る守屋武昌であった。事務次官の任期は通常は1年から2年だ。しかも、よからぬ噂も聞こえていた。安倍総理に相談すると「5年目でしょ。いくらなんでも長すぎますよね。進めてください」と言われた。

 そこで守屋を退任させる人事案を練っていた所、マスコミに漏れているという情報が入ってきた。小池はすぐに守屋に伝えようと携帯に電話したがつながらない。大臣が電話しているのに、次官が出ない、という所に守屋の姿勢が現れていた。

 翌日、その情報が新聞記事となり、小池は守屋を呼んで退任を伝えた。しかし守屋は「断じて困る」と反発した。その後、小池が訪米して米政府の高官たちと交流を図っている間に、守屋は官房長官を動かして、待ったを掛けてきた。マスコミもこの騒動をニュースのネタにした。

 小池は自身の進退伺いを持って、安倍総理に決断を迫った。総理は悲しそうな顔で「辞めるなんて言わないでください。お願いだから」と言った。その後、しばらくかかったが、安倍総理は守屋の退任を決断した。「たった一人の人事を巡って、役所というコップの中の戦いに大切なエネルギーを浪費するのはどうだろう」と小池は言う。[3, 1543]

 折しも、インド洋での多国籍軍への給油・給水活動の法的根拠となっているテロ対策特別措置法の期限切れが迫っていた。小池はこの守屋騒動につけ込んで野党が審議引き延ばしをしてくると読んで、内閣改造時に留任を希望しないと安倍総理に申し出た。わずか55日の防衛大臣だった。

 この後、守屋は長年の接待疑惑が浮上して逮捕された。「守屋は、そんな悪党だったのか。小池はよくやった」と世評が高まった。


■8.「家族のきずな、地域の連帯感、日本の伝統・文化断固として守り」

 東京都は築地市場移転問題やオリンピックなど、大きな課題を抱えている。また防災や託児所拡充など、都民の生活に直結した問題も山積している。桝添のような人物を都知事にした「東京都の闇」が都政を停滞させているのである。これらは小池都知事にとっては持ち前の企画力でお得意の分野だろう。

__________
「家族のきずな、地域の連帯感、日本の伝統・文化は断固として守り、国際競争にさらされている経済の分野は大胆に変える」 平成4年の初当選以来、ずっと訴え続けている小池の公約は、今後も変わらない。[2, 5854]
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 この考えに沿って大車輪の活躍を期待したい。そのためにも、手始めに「東京都の闇」を成敗する必要がある。
(文責:伊勢雅臣)


■リンク■

a. JOG(963) ヘイトスピーチか公憤か ~ 桜井誠氏の戦い
 朝日新聞は「選挙運動の形したヘイトスピーチ」と決めつけるが、、、
http://blog.jog-net.jp/201608/article_1.html


■参考■(お勧め度、★★★★:必読~★:専門家向け)
  →アドレスをクリックすると、本の紹介画面に飛びます。

1. 野田数『都政大改革-小池百合子知事&「チーム小池」の戦い』★★★、扶桑社新書、H28
http://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4594075959/japanontheg01-22/

2. 大下英治『挑戦 小池百合子伝』★★★、河出書房新社、H28
http://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4309247768/japanontheg01-22/

3.小池百合子『女子の本懐―市ヶ谷の55日』★★、文春新書、H19
http://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4166606026/japanontheg01-22/


■前号「『希望の同盟』対『憎悪の同盟』~ 安倍首相の真珠湾スピーチから」に寄せられたおたより

■kannさんより

あけましておめでとうございます

本年も相変わらず素晴らしい内容でした。
安倍総理の真珠湾慰問及びスピーチを取り上げていただき、
改めてその内容に感服いたしました

安倍総理は第一次政権時及び第二次政権発足時にアメリカから「修正主義」者と言われ、オバマ大統領からも警戒されました。それを安倍総理は少しずつゆっくりと説いてきました。その結果が今回の真珠湾スピーチであり、WSジャーナルでの評価でした。

 西側諸国随一の安定した政権となり、リーダーにもなりうる存在とまでなりました。ここまで持っていくのが相当苦難の道であったのでしょうが、これも安倍総理の考え通りだとすれば、恐ろしいほどの方です。

 今やWSジャーナルの記事にもある通り、「修正主義」者は中国に代わり、危険視された存在にあります。トランプ氏発足後は更に中国包囲網は強まると思います。

 その一つが中国の味方を減らす事であり、トランプの親露姿勢や昨年末の日露対談がある訳で、興味深いです。

 昨今の情勢から「憎悪の同盟」国として新たに3国目(韓国)が入りそうですね。


■編集長・伊勢雅臣より

 ソ連打倒の際には、うまくシナを使いました。今度はシナ打倒で、どうロシアを使うか、という所でしょう。

 韓国のような頼りにならない国は、味方にして、いつ裏切られるか分からないという不安を抱えるよりも、相手方にして、その不安を敵方に与えた方が良いかも知れません。

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